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第3話 偽りだらけの学校へ

 次第に辺りは居住区からビル街に変わっていく。学校はそのビル街から出ている電車に乗ればすぐだ。あたりは、空や地面や建物の側面にカラフルでダイナミックな広告が急激に増えてくる。3Dのものや、2Dのもの。旬の俳優がおしゃれな服を羽織る立体的な映像や、車が空を走ったり、壁にはスーツを着た女性が話している映像が流れている。



 そういえばもうそろそろ選挙が行われるらしい。その女性は、誠実そうな見た目で、柔らかい口調で演説を行っている。しかしその政治家も表情や声はCAREが映し出したものなので本当に心の底から言っているのか信じられるわけがない



 更に少し進むと、空にドラゴンが現れた。ドラゴンは炎をまき散らしながら悠々と空を飛び回る。それに防具と剣を携えた人が飛び掛かり戦う。ゲームのCMのようだ。他にも飲食店の宣伝キャラがおいしそうにハンバーガ― に齧り付いていたりなど、まだまだ先は長い。



 さらにその広告に負けず劣らない建築物。太陽の光を浴びキラキラと輝いた赤や黄色や青や銀色の色鮮やかなビル達。丸みを帯びたビルや、全面ガラス張りのビル、大中小の円形が順不同に積み上げられたようなビル、メリーゴーランドのように回るビル、キノコのような形をしたビルまで様々であり、どれもが造形にこだわっていて自己主張が激しい。さらにそのビル同士がチューブ型の空歩道で繋がれていたりと街は複雑極まりない。



 僕はできるだけそれを見ないよう俯いて歩いた。



 こういった光景はCAREがこの世界を包み込んでいるという実感が不覚にも湧いてくるので嫌いなのだ。それに俯いていると、CAREのシステムによって修正された人たちも目に入ってこない。



 考えてもみてほしい。誰が好き好んでこんな朝早くから学校や会社に行きたいのだろうか?仕方なく行くという人が大半なはずだ。



 でも周りを見て見ると、皆、単色的な笑みを浮かべている。



 皆不機嫌な顔をしてると、悪い雰囲気が伝播するらしく、それを阻止するためCAREが笑みを浮かべているように修正しているそうだ。



 しかし、そのお陰で皆が同じ方向を向き、単色的な笑顔を浮かべながら進んでいき、全体で見ると機械的で奇妙な統合性を持っている。それは見ていると虫に這われているようなざわめきを背筋辺りから感じる。ただでさえ重くなっている胸が余計に重みを増す。だから、僕はできるだけ余計なものを見ないよう、足元ばかり見て進む。



 でも、その僕も単色的な笑顔で姿勢正しく歩いているように見られているのだ。もう自分自身までが気持ち悪くなってくる。



 僕はまた無意識にCAREから逃げたいという無謀な願いを抱きだしていた。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



「おー、修一、おいっすー」

 


 学校につき、自分の席に着くと同時に声がかかる。振り返ると髪は黒色で短髪でオールバック、見た目は威圧的で鼻と口もその目を際立たせるような形であり、ガタイのいい男。僕が今まで出会ってきた人にこんな昔少しヤンチャしてたけど、今は大人になりましたよ感漂う見た目をした人はいない。



 すぐに、僕は右下に表示されているこの男の名前を確認する。



「あっ、三浦か、おはよー。また、顔を変えたんだ」



 彼は三浦俊といっていつも僕が一緒にいるグループの一人だ。一言で表すとするとクラスの人気者。きっかけは忘れたし、どうしてか分からないが僕によく話しに来てくれる。そして、向こうばかりが話してそれに僕は相槌を打つだけでいつも会話が終わる。それなのに、何故分からなかったかというと、三浦が顔を作り替えてきて来たからだ。



 拡張現実上では、顔なんて簡単にいつでも好きなように作り変えることができる。更に作った顔をクラウド保存できるという親切な仕様まである。もうファッションの一部として顔の作成は位置づけられている。毎月雑誌で特集が組まれるほどで、流行りと時代遅れという言葉があるほど。



 人によっては一日の中で何度も顔を変える人や、その日に合わせて服に合わせて変える人などいるほどだ。



 しかしそんな簡単に顔を変えられては、誰が誰か分からない。だからCAREには人の右下に名前、今までにどこで話したかなど事細かに書かれてあるログが浮かび上がる仕様になっている。



「おー、そうなんだよ。この春の流行はこの顔だって雑誌に書いててさー。早速参考にしてみたんだけどどう?」



 そうして、くるりと回転する三浦。もちろん、拡張現実を嫌っている僕は好意的なイメージを持っているわけがない。どうしてそんなものを作ることに必死なんだと疑問に感じている。でも、今は褒めておいた方が無難だろうと思い口を開く。だが、それは突然、会話に入り込んできた女子に止められた。



「三浦、顔変えたんだー! めちゃくちゃお洒落じゃん」



 明るめの茶色のロング、ツリ目で美人顔のクールな彼女、名前は桃谷奈々と言って彼女も僕が一緒にいるグループの一人だ。三浦は嬉しかったのか跳ねるように振り返ると、



「えー! 本当に! 頑張ったかいがあるわー!」



 三浦はもう僕がいることなんて忘れたかのように一瞥もくれず桃谷と話しだした。 



……よくある流れだ。三浦と話してると、自分から話しかけてくるのに、違う人に話しかけられたらすぐにそっちの方と話し始める。何ならそっちの方が楽しそうに話す。僕に気遣ってすぐに会話を終わらそうとする素振りもなく。そのまま話しながらどこかへ行ってしまう時すらある。



 僕にそこまで興味を持っていないんだろうなと思った。




♦お願い♦

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少しでも小説で笑顔になる人を増やしていけるといいな〜

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