6色目~君にしか作れない色を守るために
「やあやあ、おはよう、リトルレディ!」
そう言ってピリカが眠るベッドへ突然飛び乗ってきたププ。
ぴょんぴょんと飛び跳ねながら、ププは窓のカーテンをいきおいよく開けました。
「ほら、今日もいい天気だよ」
「う…ん…おはよう、ププ」
「まずは顔を洗って、それから朝食だよ。今日はボクが焼いたトーストさ!」
「ふふ…なんだかママみたい」
そう言われるとププは怒って「ママじゃなくてナイトだよ!」と飛び跳ねます。
いつもいつもの、そう言い返すのです。
ピリカはそんな賑やかなププを見て、いつも楽しくて思わず笑ってしまうのです。
ピリカとププの小さな冒険が終わり、あれから何日か経ちました。
決して大きくもないし、決してすごくもない。まるで自分だけしか知らない夢のような冒険でした。
ですが、ピリカはあの冒険を経て、いくつかの経験と成長をしました。
マグマがとても熱いこと。
大海がとても塩辛いこと。
竜巻はとても危ないこと。
夜空の下で泣くととてもすっきりすること。
そして、パパの代わりはできなかったけれど、代わりにププという一番の宝物を思い出せたこと。
―――ププにとっては友だちではなく、ナイトらしいのですが。
「ところで毎晩、何を読んでいるんだい?」
「魔法のお勉強の本よ。あたしね、パパみたいな魔法使いになりたいの」
「パパみたいなか……うん、ステキな目標だね! それじゃあボクはそんなリトルレディのためにできる限りのサポートをするよ! なんたってボクは君を守るナイトなんだからね」
ピリカの話を聞いたププは嬉しそうにその場で飛んだりクルクルと踊ってみせます。
すると朝食のトーストを食べていたピリカは、その手を止めて、ププに言いました。
「あのね…ププ。お願いがあるんだけど?」
「なんだい? リトルレディ、ボクにできることならなんでも言っておくれ」
「その、リトルレディって呼び方じゃない方が…嬉しいんだけど。あたしにはピリカって名前があるんだし」
ププの動きがピタリと止まります。
ププは「う~ん」とうなり声をあげながら首を左へ右へと揺らします。
そして、出た結論は。
「それはゆずれないかな」
でした。
「ど、どうして…?」
首をかしげるピリカへ、ププは腕を突き出して答えます。
「それは君がまだリトルレディだからさ」
「意味がわかんないよ…」
「―――ボクがボクだけの色を見つけられたように、リトルレディ…君も君にしかできない色を見つけられるときがいつか来る。そのときが来たらボクは改めて、ナイトとして君の名前に誓いたいのさ」
結局、ププの言っている意味はピリカにはよく理解できませんでした。
ですが、それはきっといつか、彼女が大人になったときにわかることなのでしょう。
朝食を終えたピリカは、早速魔法の勉強をし始めました。
それから、飽きてきたときにはププと思いっきり遊んで。
たまには一緒に小さな冒険へと出かけて。
ププは困ったときには一緒に悩んでくれて、助けてほしいときは一緒に叫んでくれました。
そんな二人はいつまでも、ずっとずっと一緒でした。
+++
この何年か後。ピリカは有名な魔女となり、パパにも負けないすばらしい魔法使いになります。
そんな彼女のとなりにはちょっと薄汚れた、けれどとても賑やかで紳士な動くぬいぐるみがいます。
そのぬいぐるみは何なのかと尋ねると、二人は声を揃えて言うのです。
「あたしのステキなナイトよ!」
「ピリカのステキな友だちさ!」
~おしまい~