表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

6/6

6色目~君にしか作れない色を守るために








「やあやあ、おはよう、リトルレディ!」


 そう言ってピリカが眠るベッドへ突然飛び乗ってきたププ。

 ぴょんぴょんと飛び跳ねながら、ププは窓のカーテンをいきおいよく開けました。


「ほら、今日もいい天気だよ」

「う…ん…おはよう、ププ」

「まずは顔を洗って、それから朝食だよ。今日はボクが焼いたトーストさ!」

「ふふ…なんだかママみたい」


 そう言われるとププは怒って「ママじゃなくてナイトだよ!」と飛び跳ねます。

 いつもいつもの、そう言い返すのです。

 ピリカはそんな賑やかなププを見て、いつも楽しくて思わず笑ってしまうのです。




 ピリカとププの小さな冒険が終わり、あれから何日か経ちました。

 決して大きくもないし、決してすごくもない。まるで自分だけしか知らない夢のような冒険でした。 

 ですが、ピリカはあの冒険を経て、いくつかの経験と成長をしました。

 マグマがとても熱いこと。

 大海がとても塩辛いこと。

 竜巻はとても危ないこと。

 夜空の下で泣くととてもすっきりすること。

 そして、パパの代わりはできなかったけれど、代わりにププという一番の宝物(ともだち)を思い出せたこと。

 ―――ププにとっては友だちではなく、ナイトらしいのですが。




「ところで毎晩、何を読んでいるんだい?」

「魔法のお勉強の本よ。あたしね、パパみたいな魔法使いになりたいの」

()()()()()()か……うん、ステキな目標だね! それじゃあボクはそんなリトルレディのためにできる限りのサポートをするよ! なんたってボクは君を守るナイトなんだからね」


 ピリカの話を聞いたププは嬉しそうにその場で飛んだりクルクルと踊ってみせます。

 すると朝食のトーストを食べていたピリカは、その手を止めて、ププに言いました。


「あのね…ププ。お願いがあるんだけど?」

「なんだい? リトルレディ、ボクにできることならなんでも言っておくれ」

「その、()()()()()()って呼び方じゃない方が…嬉しいんだけど。あたしにはピリカって名前があるんだし」


 ププの動きがピタリと止まります。

 ププは「う~ん」とうなり声をあげながら首を左へ右へと揺らします。

 そして、出た結論は。


「それはゆずれないかな」


 でした。


「ど、どうして…?」


 首をかしげるピリカへ、ププは腕を突き出して答えます。


「それは君がまだリトルレディだからさ」

「意味がわかんないよ…」

「―――ボクがボクだけの色を見つけられたように、リトルレディ…君も君にしかできない色を見つけられるときがいつか来る。そのときが来たらボクは改めて、ナイトとして君の名前に(ちか)いたいのさ」

 

 結局、ププの言っている意味はピリカにはよく理解できませんでした。

 ですが、それはきっといつか、彼女が大人になったときにわかることなのでしょう。




 朝食を終えたピリカは、早速魔法の勉強をし始めました。

 それから、飽きてきたときにはププと思いっきり遊んで。

 たまには一緒に小さな冒険へと出かけて。

 ププは困ったときには一緒に悩んでくれて、助けてほしいときは一緒に叫んでくれました。

 そんな二人はいつまでも、ずっとずっと一緒でした。




   +++




 この何年か後。ピリカは有名な魔女となり、パパにも負けないすばらしい魔法使いになります。

 そんな彼女のとなりにはちょっと薄汚れた、けれどとても賑やかで紳士な動くぬいぐるみがいます。

 そのぬいぐるみは何なのかと尋ねると、二人は声を揃えて言うのです。


「あたしのステキなナイト(ともだち)よ!」

「ピリカのステキな友だち(ナイト)さ!」






   ~おしまい~



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] どこまでもポジティブなププがいいです。 この相棒がいるおかげもあって、ピリカが立派な魔法使いになったんですね。
[一言] ピリカとププが信頼で結ばれる過程を楽しく読ませていただきました。ずっと仲良しですね。
2023/01/01 19:50 退会済み
管理
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ