脱出
(' . '_ 先に謝っておきます。今回は前と比べるとおかしいくらいに長いです。
(' . '_先に謝っておきます。今回はかなり長くなります。
それでは本編、スタートです。
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瞬間、目の前にいた国王の首が吹き飛んだ。
血飛沫が舞う。まるで、床に貼られたレッドカーペットが、壁や天井にも貼られたようだった。
・・・これで、条件は整った。あとは、俺が裁判にでもかけられたときに判決が国外追放にでもなってくれることを祈るだけだ。
『・・・KING、これで良かったんでしょうか・・・』
後ろにいた例の兵士が、俺にそう聞いてくる。
その問いに対し、俺はこう答えた。
「あぁ、これで良かった。結局俺は、最後まで反逆者なんだよ・・・」
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それは、8年前のこと。俺が、まだ16歳だった頃の話だ。まだ若造で、経験もクソも無かった俺だが、戦闘面に関してだけは最強の一角に君臨していた。
そんな俺は、この世界に不条理を感じていた。権力者だけが人の上に立ち、人々はそいつらにありったけの金を搾り取られる。どれだけ頑張っても、ずっと下の人間のまま。どれだけ頭が良くても、どれだけ腕っぷしが強くても。
俺もそうだった。小さい頃は、下の人間だった。だが、一度だけ俺は、国王の事を助けた。それがきっかけで気に入られ、爵位を与えられたんだ。その時は嬉しかった。たったの14歳で、爵位を貰ったのだ。それは嬉しいに決まっている。
その一年後だ。俺はこの世界に不条理を感じて、革命を起こそうとした。しかし、その時に各都市を繋いでいたハブのような存在、時の防衛大臣シリウスに止められ、一旦俺は計画を中止した。だが、あの言葉が俺の背中を押したのかもしれない。
【央都を敵に回すということは、死を意味します。貴方はまだ若い。もっと人生を謳歌するべきです。革命など、起こすべきでは無い。ですが、もしやるなら、徹底的にやりなさい。死んでもこの国を変えてやると、そういう覚悟がおありならまた一年後、もう一度計画を始めれば宜しい。せめて一年は、自分のために時間を使って欲しい。
それと、覚悟が決まったら、このシリウスにもお伝えください。その時は、私も一緒に参加します。貴方1人で逝くことはない。私も一緒に死なせてください。】
その瞬間、俺の心は決まった。必ず、一年後。革命を起こす。そう決意した。
そして、一年後。約束通り、俺はシリウスに声をかけた。俺は、この国に対して革命を起こす、と。シリウスは勿論、参加する気だ。しかし、俺はそれを断った。あくまで、これは俺の戦争だ、と。そう言ったら、シリウスは不服そうにしながらも、不参加の判断をしてくれた。
本音を言ってしまえば、シリウスは是が非でもこちらに引き込みたかった。頭脳明晰、百戦錬磨、千軍万馬、老成円熟…彼は、勝利に必要な全てを持っている。
シリウスが参加してくれれば、必ず勝てる。彼がいれば、央都の軍隊は力を失い、他の都市は連携がとりずらくなる。だが…革命軍への参加を、俺は認めなかった。きっと、若い頃の俺なりの意地というものがあったのだろう。しかし、それ以上に、シリウスに死んでほしくなかった、というのがあったんだと思う。
そして、その戦争は幕を開けた。シリウスが央都にいることによって、革命軍の存在が全世界に知れ渡る。そして、シリウスは、こちらにとって非常にありがたい事をしてくれた。総大将は、青葉海叶だと…そう、公表してくれたのだ。
しかし、最強格の人間が大将として動いていることで、各都市から手加減の三文字が出てくることはなくなった。
全都市の連合軍、通称「大都市連合軍」。奴らは、俺が想定していたよりも速く、俺の想定を遥かに超える人数で攻めてきた。
俺は、多くても5、6億いるかいないか…その程度だろうと思っていた。しかし、それでも辛いことには変わりない。俺の手勢は50万人しかいないからだ。だが、地獄というのは現実にもあるんだと、その時理解した。
連合の軍隊の数は、大小120の都市から派遣された軍隊で構成されおり、都市の数からわかる通り、兵士の数も異常と言えた。
【その数ーおよそ1320億。】
きっと、市民も動員したのだろう。甲冑も着ていない兵士が半分以上を占めていた。
兵士は、絶望していた。喧嘩だって起きた。その度に、そいつらを粛清した。兵力が少なくなるのは絶対に避けなければいけなかったが、仕方なかった。
戦いの火蓋は、こちらから切ることにした。まずは、各都市の主力を主に爆撃機を使って叩く。大打撃、とまではいかなくても、少しの間動けなくする程度に痛めつけた。
そして、戦いの火蓋は切って落とされた。主力を叩かれた連合は、序盤、苦戦を強いられた。度々力を取り戻すが、主力が復活する寸前で爆撃をする。それを繰り返すことで、俺たちは少ない人数で有利に戦いを進めていた。
しかし、その作戦は途中で中断される。爆撃機による総攻撃で連合の主力を潰し、制空権も得て、降伏してきた都市の軍隊も手に入れた。一日、また一日と、時間が進むにつれて優勢になっていった。あのまま行けば、勝てる。…はず、だった。
しかし、その優勢は、防衛大臣シリウスの登場によって、一気にひっくり返る。
シリウスは、無数の戦車や迫撃砲、自走榴弾砲など、使えるものを全て使って、制空権の奪還ではなく城壁の破壊へと攻撃の矛先を変えたのだ。
戦争終結後、シリウスは、総勢82億の走行車両を率いていたと本人から聞いた時の驚きは忘れられない。
シリウスの登場によって、少しずつ俺たちは劣勢を強いられるようになった。
シリウスの参戦から三日後、全ての城壁が崩壊し、連合による殲滅攻撃が始まった。ほんの数時間で城は崩壊。その後、地上戦を展開した3000万の軍勢は、一時間も持たずに塵と化した。
…元々、俺は死ぬつもりだった。城壁崩壊の連絡が来た時点で、俺が出るつもりだったんだ。しかし、兵士たちに止められてしまった。結局、内容はシリウスと同じだった。
『貴方はまだ若い。ここで死ぬべきではない』
《貴様の味方は全滅した》
連合から、恐らくメガホンを使ったのだろう。そんなメッセージが送られてきた。恐らく、次に来る内容は《降伏しろ》と。そんな感じのことを言うんだろう。だから俺は、近くにあったボルトアクション式のスナイパーライフルを掴み、スコープを覗かずに撃った。
少し遠くからの、悲鳴。恐らく、体のどこかが吹き飛んだのだろう。こうすることで、俺は降伏の意思が無いことを示した。
こちらが降伏しないのであれば、勿論連合の取る行動は一つ。連合は、夜が明けてから、総攻撃を開始した。流石に、俺でも全都市からの総攻撃を耐え切ることは出来ない。だから、俺は地下に逃げることにした。
どれだけ、経っただろうか。何かが崩れる音と共に、砲撃音が止んだ。どうやら、最後の要塞が破壊されたらしい。完全に音が止むのを待って、俺は地下から地上に出る扉を開ける。
「随分と派手な歓迎だな、シリウス。」
そう、俺は大きめの声で話しかける。すると、それに返答が来た。
『これしか、道が無かった。次に私が出来ることは、貴方を捕え、ほとぼりが冷めたら解放すること。それだけです。』
央都の軍人でありながら、どこまでも、俺達革命軍の味方であり続けようとするその姿勢。俺は賞賛するぜ、シリウス。
だがなぁ…こっちはもう俺一人しかいないんだよ。もう、戦う道しか無いんだよ。だから、さようなら。我が恩人、シリウス・ローズクォーツ。
「革命に抗う愚かな兵士よ。永劫回帰の世界で会おう。」
その次の瞬間、俺は空高くに飛び上がる。
そして、小さな魔法陣を展開する。
「【青葉八重結界】」
直後、連合からの砲撃の音と共に俺を中心に八重の重結界が展開される。そして、全ての結界が張られたところで、全ての攻撃を防ぎきり、俺は反撃に移った。
それから、どれだけの月日がたっただろうか。多分、3年は経っていたと思う。連合も、そして俺も、もう既にボロボロだった。連合は、終始総力戦で絶えず攻撃し、俺はその攻撃を耐え忍びながら反撃をする。
どう考えても俺は不利だったし、無限に攻撃を続けなければいけない連合の疲労も大変なものがあったのだろう。連合は既にほとんど攻撃を諦めていたし、俺も連合の動きには若干の警戒心は持ちつつも、既に半分戦意喪失していた。
攻撃が止んだところで、俺は央都に僅かにいる味方を通じて、残っている敵の数や部隊編成について調べた。すると、央都にまだ一部隊だけ出撃していない部隊があることに気づいた。その部隊の名は・・・
【黒華花騎馬隊】
元々、公爵家が率いていた昔の部隊を、次期後継者である【黒華花 蓮】が継いだ・・・と。この文を見るに、かなり大きな部隊だと思うのだが・・・出てきた文章には、『世界最強の部隊』と書いてあった。その強さは、シリウス率いる【ローズクォーツ近代騎士団】も超えると。
その情報が届いてから三日後、黒華花騎馬隊が到着した。…全く、最強の名は伊達じゃ無い。一部隊の兵士を"少し"動員したらしい。が、その数は2500万にも上る。
奴らは、数で攻めてくることはなかった。その代わり、騎馬隊隊長、黒華花蓮が出た。連合の意見は、大将同士の一騎打ちをして、勝った方がこの戦争の勝者だと。それが総意らしい。俺は、勿論その誘いを受けた。罠、かもしれない。俺に対して、とんでもない対策をしているのかもしれない。だが、そんなことは関係ない。俺は、勝って革命を成功させるだけだ。
そして、この革命の最終決戦が始まった。