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バタフライプリンセス  作者: 深水千世
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プロローグ

 十二月の西日が射し込み、研究室に男と女の影を落としていた。

 大学構内は窓ガラスが曇るほど冷え込んでいたが、女は寒さも忘れて立ちすくんでいる。向かいにいる男は俯いていた。

 人は言葉で心を殺せる。

「別れよう」

 男が繰り出した凶器は、たった一言だった。

 茫然自失の女に、男は追い打ちをかける。

「お前といると、惨めなんだ。女といるって気がしないんだよ」

 何が惨めなのか。つき合ったばかりの頃、「お前と一緒にいるのが嬉しいんだ」と言っていたのは嘘だったのだろうか。そう考え、咄嗟にショルダーバッグを掴む。その中には今日渡すはずだった誕生日プレゼントが入っていた。

 男は「ごめん」と言って、踵を返した。無情に閉まるドアの音が響く。女が無言でいたことを肯定の意味にとったのか、それとも最初から女の意志なんて関係なかったのか、その足取りは逃げるように速かった。

 男の姿がドアの向こうに消えても、女の足は動かず、涙すら出ない。

 不意にバッグの中で携帯電話が鳴る。僅かな期待にすがったが、画面に表示された名前は、親友のものだった。

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