第七章≧八部∞レイの涙
「行こう。」
キララは呟いた。
「先に行こう。止まってちゃいけないんだ。」
自分に言い聞かせるように。振る雪がジェネシスの体を隠していく。
「また、戻って来るから。」
キララはもう目の前の天まで伸びる塔へと向かう。
「待て!1人で行くな!」
レイが追いかけ、それを見て他の者もキララを追う。
「キララ!」
「もう、時間がない。今なら傷をおってるから勝てるかもしれない。今しかない。」
「よく言ったぁ!」
フィークがゲラゲラと汚く笑う。
「屍を乗り越えたな。」
そして塔の前に着く。
そこには1人、女性が立っていた。
「良く来たな。誉めて使わす。」
「ナシャ!退くのじゃ!目を覚ませ!」
レイはその女性に向かって怒鳴る。
「久しぶり、レイ。相変わらずだね。」
ニタっと微笑むナシャ。
「でもねぇ、私も3賢人の1人、銘帝なの。この門を守るのが私の仕事。」
剣を構えた瞬間、レイの目の前には剣先が迫ってきていた。
「まだまだじゃな。」
剣はレイの眉間から後頭部まで貫通した。
【変わり身】
貫通したものが弾け、中から無数の針が飛び散る。
ナシャは腕で顔を隠した。針がナシャに直撃した。
「せっかちな所は治っとらんの。」
【雷麟】
雷がナシャを囲むように落ち、そして牢獄となった。
「あら、もう負け?」
溜め息混じりに呟く。
「門を開けるのじゃ。」
「私じゃ無理よ。」
ナシャはまた溜め息を着く。
「じゃぁ、どうすれば良い?」
レイの鋭い目線がナシャに向けられた。
「私を殺せば開くわ。」
その言葉にキララが反応した。
「他に方法はないの?」
「天使の子のお助けか。ありがたや…、でも他には方法はない。言っただろ。私は門を守るのが仕事。」
キララに対して笑顔を見せた。
「わかった。悪く思うなよ。」
レイが指を鳴らす。回りの牢獄は一気に小さくなりナシャに触れ始めた。
バリバリバリ。
そんな音が鳴り響いた。
キララはナシャから目を反らした。
門が開いた。
中から神の使いの軍団が出てきた。
「囮。」
レイが呟く。
「まったく、時間稼ぎってぇ所かぁ、」
フィークは先陣切って突撃する。それに他が着いていく。
薙ぎ払い、魔法で崩し、しかし人数が減らない。
「キツい。」
「レイぃ!穴開けるぅ!そいつら連れてさっさと行け。」
レイは驚いたようにフィークを見た。
「なぁに、オレなら安心だろぉ。」
歯を食い縛るレイ。
【地土割】
党に向けて斧を地面に振り落とす。すると一直線に地面が割れそこから岩が容赦なく突き上がる。
「行けぇ!」
レイはフィーク以外の者を無理矢理塔内に押し込んだ。
「なんでだ!」
スターが怒鳴る。
「時間を親父を置いていく必要は…」
「奴の気持ちも考えろ、今は先に進む事だけを考えろ。」
レイは俯いたままスターに言う。レイの頬を一筋の涙が通った。
「今は急ごう。時間がないんだろ。」
ラドウェルが言う。
「わかったよ。」
悔しそうなスター。しかし、流れる時間は待ってはくれなかった。
長い長い階段を昇る。