第六章≧五部∞光はすでに消えていて
冷たい雨が降ってる丸焦げの街。さっき見たにぎやかな街はどこへ行ってしまったのだろうか。
人一人の気配さえ感じ取れない。
そのなか沈黙を保ち港へと歩いていく私たち。寒い風が港への道を遮る。
それでも確実に、一歩づつ前に進む。
開けた場所に着いた。港だ。海の水は全て白銀の氷と化していた。
そのなかに一粒黒い点がある。
私はそこに向かう。港から降りて凸凹の氷を歩く。
段々と近づいていく中で点がハッキリと形を作っていく。
それにつれて歩みも段々と早くなっていく。
「イヴ!」
遂に走り出した。もう我慢は出来ない。
転ぶ。それでもすぐに立ち、走り出す。転んでも、転んでも、そこに向けて。
【天使の羽衣】
黒いワンピースを着ている子が真っ白な剣をイヴ向けて振りかざす。
【天使の羽衣】
何回も、何回も。
「イヴ!」
やっと着いた。そのままイヴに覆い被さるように抱く。
「止めてよ!逝かないでよ!」
【天使の羽衣】
目頭が熱くなる。
「生きてよ!まだ言い負かしてないじゃん!ドジ治すの勝負出来ないじゃん!」
【天使の羽衣】
「止めとけ。」
ジェネシスはスター止める。
そしてそこには私の叫び声しか聞こえなくなった。
イヴの遺体を埋めた。誰も知らない悠久の丘のてっぺんに。
「ジェネシスは悲しくないの?」
お墓に黄色い花を供える。
「あぁ。」
「私はおかしいの?」
「いや、お嬢が普通だ。オレがおかしいだけだ。」
私はジェネシスに抱きつく。
「私もジェネシスみたいになりたい。」
温かみを得たかった。あの冷たかった雨の中にいるようで、凍った海の中にいるようで、寒かった。
「ダメだ。お嬢は人間でいろ。オレみたいに獣だけにはなるな。」
やっと登り始めた太陽が眩しい。
「人間ってなんだろう。」
その問いには答えてくれなかった。
城に戻った。街も復旧作業が進んでおり段々と元の姿に戻っていく。
そんな街を窓際から眺めている。
「戻ったようじゃな。」
今は会議室にいる。そこにいるのは私とジェネシス、レイ様にスター、マモリにジンともう一人、ラドウェルだった。
「キララ、座れ。始めるぞ。」
私は窓の外を眺めたままなんの反応をするつもりもなかった。
「ほっておくかの。ラドウェル頼む。」
「あぁ、」
立ち上がり喋りだす。
「前の件で神の使いの残党を追い掛けていた。
北の地に向かっていった奴等はそのまま基地に向かっていった。」
「聖域じゃな。」
「そうだ。」
「時間はない。敵の本拠地に向かおう。」
「無理だよ。」
私は呟いた。
「昨日戦ってわかったじゃん。あんなに強いやつらがいるんだよ。」
コツコツと歩く音がする。
「人を殺さなきゃいけないんでしょ。やだよ。絶対。」
その時私を反対に振り向かせて私の頬を叩く。
「痛い。」
目の前にいるのはスターだった。
「当たり前だ。」
「じゃぁなんで叩くのよ!」
「甘ったれるな。」
「甘ったれてなんかない!」
「だったらやだなんて言うな。」
「嫌なものは嫌なの!」
もう一度叩かれる。
「イヴは何て言って死んだと思ってんだ!バカが!」
私は言葉を失う。
「教えてやるよ!」
そこでジェネシスが止めに入った。
「止めるなジェネシス!」
「落ち着け!ここで争ってどうする!」
スターの上がったり下がったりする肩を眺める。
「教えてやるよ。」
スターは私に背を向けた。
「絶対に生きて迎えに来て。」
スターは会議室から出ていった。
「キララ、少し時間をやる。街でも眺めてこい。マモリ、ジンも息抜きに行ってこい。」
「はい!」
「わかったのです。」
私はまた窓から街を眺める。
「キララも行こうよ!」
「美味しいケーキ屋さんがあったのです!行きましょう!」
「え!?うん…」
と引っ張られていった。
「ジェネシス、過保護にし過ぎたの。」
「今更反省してるよ。」
会議室は静かになった。
犠牲者が…