第六章≧三部∞風は悲しく
港に着いた。敵はまだ着きそうに無いが着いたらかなり厄介だろう。
「イヴ、あっち向きに強い風を起こせるか?」
海側に指を向けて言う。
「当たり前よ。あたしを誰だと思ってるの?」
「良く転けるお姉さん。」
マモリがなんとなく、しかし確実に当たっているであろう事を言う。
それを聞いてイヴは派手に転ける。
「うるさいわよ!」
ホントに良く転ける。
「どうでもいいから早くしてくれ。」
「わかったわよ!」
なぜオレにまで怒鳴る。
【風の女神よ】
キララとは比にならない程強い風。立っているのもやっとなくらいだ。
海は荒れ始め次第に波が高くなっていく。
【氷結】
上手く行くと思った瞬間だった。海の水は全て凍ってしまった。
オレは舌打ちをする。
「なかなかだな。悪魔様。」
船から誰かが出てきた。見えないが。
「さっさとかかって来いよ。ぶったおしてやるから。」
「大口を叩く奴だ。」
船の方から轟声が聞こえてきた。
「総員で来るみたいね。」
「しょうがない。マモリは火矢で氷を出来るだけ溶かしてくれ。」
「らじゃ!」
「あたしとあんたは陽動って事ね。」
「ものわかりがいいな。やり易いよ。」
「ありがと。」
「行くぞ!」
オレとイヴは敵の集団に突っ込む。
何人いるかわからない。それを2人だけで抑える。
「ちょっとヤバくない?」
「なんとかしろ。」
穴が出来るまで。一体一体潰していく。しかし減っている様子がない。むしろ増えてる。
【火炎】
一本の矢が炎を蓄えて船に向かって行く。
「イヴ!」
「わかってるわよ!」
一気に下がる。それに着いてくるように敵の大群が襲ってくる。
「飛べ!」
イヴが扇を地面に向けてひと振りする。オレたちはそのまま空に飛び上がる。
「罠だ!」
もう遅い。
【火炎・アメノヤ】
オレたちの目の前を走る炎の矢の雨。すでに出来ている穴に落ちる者と雨によって出来た小さな穴に落ちる者。
気付けばあんだけの数がもう見当たらなかった。
「やるな。」
「っ!」
目の前に仮面の男。オレは剣を構える。
「バーモンドを倒した力を見せて貰おう。」
【月光鳥】
蒼白い翼を付ける。仮面の男に突っ込んでいく。
【闇】
何かに捕まる。動けない。
「落ちろ。」
地面に落とされる。体が動かない。
地面に落ちる寸前だった。体が動かないオレをイヴが受けとる。
「一人じゃないんだよね。あんたは。」
【鎌鼬】
イヴは仮面の男がいる空に向けて扇を大きく振る。
【氷柱】
しかしとても大きな氷を出し鎌鼬がそれる。
「避けられないね。」
「ちっ、動け!」
まだ動かない体。なにが起きてんだ。
氷が落ちてきた。
「氷は苦手、」
「わかったからなんとかしろ!」
「もう無理かな。」
他に方法は…
【火炎ハチノヤ】
そんなとき四方八方から真っ赤な蜂が飛んできた。そして氷にぶち当たり、氷が燃える。
「いまだ!」
【銀杏風第一・千本針】
イヴはまた空に向けて扇を大きく振る。風の中に黄色い梁が無数に飛び、氷に当たる。氷は動かなくなった。
体が動くようになった。なんだったんだ。考えてる暇はないか。
【悪魔の囁き】
氷は粉々になり水と化したところに仮面の男の姿が見えた。オレはイヴから降り、そこに黒い斬撃をかます。
【氷斬】
その斬撃をかき消された。槍によって。真っ白な槍。
「あんたは!」
【闇】
「う、」
イヴ、どうした?
「消えて貰おう。」
槍を引く男。
【天使の翼】
オレがイヴの前に立ち<ディア・レム>を前に出し結界をはる。そこに奴がすでにいる。
「邪魔をするな。」
「無茶な話だな。」
【氷斬】
【悪魔の怒り】
オレの剣と奴の槍が交わる。しかしすぐに競り負けた。オレはマモリのいた所まで飛ばされた。上手くマモリが受け止めてくれたようだがそれどころじゃなかった。
「マモリ!」
「いまやる!」
【真空】
マモリが矢を放った。とても早い矢。
「イヴ、すまないな。」
「なんで、なんであんたはそっちに着いたんだ!」
「私にも、信じる道はある。すまない。許せ。」
その矢はことごとく捕まれる。
「あの世で会おう。」
その槍はイヴの体を貫いた。
「バカ…野郎…。じごく…にきまって…るだろ。」
槍を抜く。穴が開いた所から血が吹き出す。そして、そのまま氷に倒れた。
「イヴー〜〜〜〜〜〜〜!!!」
「イヴさん…」
「てめぇ!」
憎しみ、憎悪、怒り。止められなかった。
【悪魔】
蒼白の翼は真っ黒に変わり、あらゆる肌には赤い線が引かれる。
「シネ」
仮面の男に近づき斬る。しかし避けられる。
「シネ、シネ、シネ」
何度も繰り返す。相手に攻撃を許さない。
「キエロ」
【闇】
まただ。体が動かない。
「悪魔。私は君を殺してはならない。今日の所は退こう。こちらの負けのようだしな。」
町の門の方から狼煙が上がっているのを見せられた。
「君はまだ私に勝てない。」
あああああああああ!
「さらばだ。」
仮面の男は真っ白いマントを巻き上げて消えていった。