第五章≦闘技大会≧その4∞決勝戦
いよいよ決勝戦!
大会最終日。先日の準決勝より観客は少なくなっていた。
「先が見えている決勝戦はそんなにもつまらないものかの?」
レイが独り言のように呟く。それを返す人は皆宿屋にいるのだった。
「まったく、最後の最後で遅刻じゃとは…情けんの。」
大きな溜め息をついて肩を落とす。
目線を上げる。目の前には黒のマントを深く被った奴がレイを見ていることに気がついた。
「相変わらず、ぬしはどこまで強くなるのじゃ。」
聞こえていないであろう。いつものように沈黙を保ちレイの横を通りすぎようとした。
「今日の夜、ここで待っています。」
すれ違う時に一言呟いて過ぎていく。
「わかった。」
嬉しそうに呟いた。
「ついた!」
キララとその他2人がやっとついた。
「なにをしとるのじゃ!さっさと柵の中に入れ!」
レイはキララに怒鳴る。荒れている心に喝をいれるために。
「はい!」
ピシッと直立し敬礼してから、走って柵の中に入ろうとする。
「転ぶぞ!」
と、レイの号令と同時にキララは転ける。
「誰に似たのかの?」
レイはやる気のない目でイヴを見る。
「あたし!」
ジェネシスとレイが一緒に頭を頷かせる。
「違いますよ!どちらかと言うとあんたでしょ!」
勢いでジェネシスを指差し吐き散らす。
「オレのどこがドジだよ。おもいっきしお前だろ。」
「んなわけないでしょ!あんたが引き受けた子でしょ!」
「関係ねぇ。」
「あるわよ!」
2人は睨みあう。火花が散る。
「騒がしい!」
レイは指をパチンと鳴らし2人に青白い雷を落とす。
「ぬしら、ケンカするなら他所でやれ!試合の邪魔じゃ!」
丸焦げになった2人はすみませんとレイの方を向いて言う。
「ほれ、始まるぞ。」
楽しそうに柵の中を見る。
「さて、とうとうここまできました決勝戦!
勝ち残ってきた2人、キララ選手とスター選手のどちらに女神が微笑むのでしょう!」
にじむ汗、汗ばむ両手を服で拭くキララ。それでも昨日の面影など微塵も感じさせなかった。
いつものように黒いマントを深く被るスター。その奥に隠れている素顔は笑っていた。
「用意はいいかい!?」
「はい!」
「………」
キララは緊張を吹き飛ばすように叫び、スターは静かに頭を頷かせる。
「よーし!いくぜ!」
キララは剣を強く握り体勢を低くとる。
「レディ…!」
スターは二本の剣を抜きどちらも剣先を地面につける。
ゴン!
鳴り響くゴング。鳴り響く剣の交じり。
辺りに緊張が走る。
2人の目が初めて合う。
スターはキララを弾く。キララはそのまま後ろに飛ぶ。上手く着地し地面を滑る。
【悪魔の囁き】
黒い斬撃が地面を削りながらキララ目掛けて飛んでくる。
【水壁】
キララは左手を前に突き出して目の前に水を出し渦を巻かせる。
しかし黒い斬撃はお構い無しに壁を真っ二つに斬る。
【風の女神よ】
キララは咄嗟に強風を右から左に吹かし、自分を吹き飛ばす。
転がり、地面に左手をついて勢いで立ち上がる。
キララはもうすでに息があがっていた。いつかの恐怖心がよみがえる。
「負けないよ。」
静かに目をつむる。
【紅蓮】
剣に炎を宿す。
【焔】
その炎が紫色に変わる。
「絶対に負けないよ!」
目を見開く。決意や自信が見れる目の輝き。あの時みたいな弱さはこれっぽっちも感じさせなかった。
キララは地面を蹴り真正面からスターに向かっていく。
【悪魔の怒り】
【一閃】
一瞬の出来事。2人は互いに吹き飛び柵にぶち当たる。
「例えこれが2人が出会う最後の瞬間でもお互い後悔しないじゃろうか、」
それでも2人は立ち上がる。
【創成・焔星】
【創成・星月の剣】
キララの剣が真っ白に変わる。
「なにを言ってんだ?」
「ジェネシス、ぬしなら気づいてるのではないか?」
「言ってる意味がわからねぇな。」
【創成・篠火】
【悪魔の囁き】
赤い斬砲と黒い斬撃が柵の中央で交わる。
物凄い爆発。観客は目を腕で隠す。
「オレはキララを幸せに暮らさせてやりたいだけだよ。」
爆発の爆風と光が止む。
「やはりダグラスの子じゃな。」
「師弟関係だ。そこ間違えるなよ。」
「親子みたいなもんじゃろ。ダグラスの金魚のふんが。」
「るっせ。」
キララとスターは中央で剣を交わらせていた。
同時に弾く。スターはクイックを聞かせてすぐにキララに近より斬りかかる。キララはそれを受けながら少しずつ下がっていく。
キララがスターを弾きスターは後ろに飛び体勢を整えた。
そんなことをさせないかのようにキララが斬りかかる。
それを弾きキララは宙を一回転する。
【円舞】
【一閃】
スターがキララに向かって<ディア・レム>を突き向け飛び上がる。
キララは空を蹴りスターに向かって剣をおもいっきり真横に振る。
スターが地面に両足を着く。
キララがしゃがんだ状態から立ち上がる。
スターは剣をしまった。
キララが地面に倒れる。
「勝負あり!
勝者はスター選手!」
歓声が沸き起こる。
スターはあらわになりかけた顔をマントで隠す。
そして柵の外に出ていく。
終わった。スターは消えていった。
「平気か?」
いまだにうつぶせの状態で倒れているキララにジェネシスは語りかける。
「まぁ、相手が強かった。しゃぁねぇだろ。よく頑張った。」
キララの左手が地面を掴む。
「頑張ったけど、」
言葉がつまってこれ以上は口から出なかった。
濡れる土を見ながらキララは立ち上がる。
「頑張ったけど、」
空を見上げて袖で顔を拭く。
「泣くなら正直に泣けよ。」
「ジェ…ジェ…ヒク…ジェネ…ジェネシス!」
キララは剣を地面に投げ、ジェネシスに抱きつく。
「負けちゃったよ!」
キララは固いジェネシスの胸に顔を押し付ける。
「良いんだよ。」
ジェネシスのゴツゴツした手がキララの頭を撫でる。
「それで十分、オレの背中を任せられるよ。」
寂しい心が熱く燃え始めてきた。キララも、ジェネシスも。
「だから、絶対に離れるなよ。お嬢に守って貰う分、守ってやるから。」
キララはおもいっきし泣いた。叫んだ。
たった2人の世界に誰も入れない気がした。
それが、イヴやレイだとしても。
2人の結束は昔からあった。しかし気がつこうとしなかった。
キララが。
それを今更後悔した。
負けたのが悔しかった。
キララは今なんで泣いているのかわからなくなった。
ただ、今はずっとこうしていて欲しかった。
偽りでもいい。
叶わなくてもいい。
“私はずっとジェネシスと一緒にいたい”
そのおもいだけだった。
こんな感じに闘技大会終わり!五章はまだやるけど…