第五章≦闘技大会≧その3∞準決勝
「準決勝!
決勝に上がれるのは2人だけ!
バトルの女神は誰に微笑むのか!」
日が明け、観客はよりいっそ盛り上る。
そして柵の中に入るキララ。
「準決勝、まず初めはキララ選手とグリアード選手!」
キララは剣を抜き巨体のグリアードを睨み付ける。
「お前、潰す。」
「潰れるのはあなたよ。」
お互い武器を構える。
「いくぞ!レディ…」
ゴングが鳴る。それと同時にグリアードはキララのいた場所の地面を割っていた。
キララは地面を蹴り間一髪避ける。
それを確認したグリアードはキララが地面に落ちる前に斧を横に大きく振る。
【風の女神よ】
強い風が空高くまで吹き上がりキララを空に送る。
「にげるな。」
グリアードは顔だけを真後ろにいるキララに向けて片言のように呟く。
「逃げてないわよ。避けてんの。」
強がってはいたが内心怖がっていた。キララはゆっくりと地面に降りる。
「もう一回。」
再びキララのいた場所の地面を割る。キララはもう一度飛び上がる。
【炎の矢】
キララは空中で指を弾きそこから炎が矢のようになりグリアードに向かっていく。
しかしグリアードはそれを斧でかき消す。
【紅蓮】
その隙をつき剣に炎を宿す。
キララは着地し体勢を低くする。
【紅蓮―篠火】
炎の斬波を放つ。
それも斧でかき消すが炎が広がり視界がなくなる。
【紅蓮―紅葉】
そこにキララは物凄い早さで突きを繰り返す。
「吹っ飛べ!」
最後の一撃を横にクルリとまわりその勢いでぶっ飛ばす。
巨体が玉のように転がり止まる。
歓声が沸き起こる。
「勝負あった!
勝者は…」
「まだ。」
巨体がのっさりと立ち上がる。
「終わってない。」
キララはしまいかけた剣をまた構え直す。
「もう、怒った。」
【地土割】
グリアードが斧を地面に下ろすと地面が勢いよくライン上を進んで盛り上がっていく。
キララは咄嗟に避ける。
しかしその先にはグリアードが待ち構えていた。
キララは吹き飛ぶ。盛り上った岩を突き抜けて柵にぶち当たる。
「おわり。」
キララはグッタリと地面に落ちようとしていた。
まだ、まだ、まだ、まだ、
【創成・焔星】
体全体が赤く光る。倒れかけていた体、足を一歩出すことでバランスを保つ。
「本気を見せてあげる。」
「リナ様!?」
それをまじまじと見ていたジェネシスが叫ぶ。
「どうしたの?何か見えたの?」
イヴが聞き、辺りを見回す。
「いや、キララお嬢がリナ様に見えただけだよ。」
「あっそ。」
【創成・星月の剣】
黄色い剣は青白く光りその姿を変えていった。
黄色い剣は真っ白く眩しい剣となった。
【紅蓮・一閃・紅葉】
キララが消える。その直後グリアードが何かに斬りつけられる音が響く。
グリアードの背後一歩の位置にキララは現れた。
「そのまま倒れて。それで立たないで。」
グリアードは前に倒れていった。少しの間静寂が支配する。
「こ、今度こそ!しょ、勝負あり!
勝者!キララ選手!」
歓声が沸き起こる。倒れたグリアードが担架で運ばれるのを見送ってキララは柵から出る。
そしてゆっくりとジェネシスたちの所に向かって歩いていく。
キララはいきなり体の中を走る何かを感じた。
キララは右胸を押さえて膝を地面につける。息を細かく吸ってまるで過呼吸のようだった。
「キララ!」
そこにイヴが近寄る。
「どうした!?」
キララは完全に倒れる。胸を両手で押さえて丸まっていた。瞳孔は開ききり身体中が痙攣を起こしている。
「レイ様!」
「しゃぁないの。」
【春風第九・風鳥の施し】
キララの様態が良くなってきた。痙攣は無くなり過呼吸も治まってきた。
「まだ慣れとらんの。魂器にも、紅蓮にも、己の力にも…」
キララはゆっくりと目を閉じ、寝てしまった。
「ったく、宿屋に連れていく。」
「頼むわよ、ジェネシス。」
「変なことするでないぞ。」
「するわけねぇだろ!」
剥きになるジェネシス。レイは意地悪く笑う。
「とにかく、いくぞ。」
ジェネシスはキララを背負いゆっくりと宿屋へ歩いていった。
「顔が赤かったの。」
「実は女として見てるんですね。」
こしょこしょと2人は呟き、危ない笑みを浮かべる。
「さて、次の勝負に行ってみましょう!
次は、ガッシャ選手とスター選手です!」
巨体のガッシャが拳にメリケンをはめながらラインの上に立つ。
スターは相変わらず黒いマントで顔を隠している。
「よろしく。」
「………」
「いくぜ!レディ、」
ゴングが鳴る。
【アームクラッシュ】
ガッシャは地面を蹴りスターに向かい、大きな拳をおもいっきし振りかぶる。
【悪魔の囁き】
スターは<ジア・レム>を地面から空に上げる。それを追いかけるように黒い斬撃が地面から空に上がる。
たったそれだけだった。ガッシャは空高く飛び上がり地面にゆっくりと落ちていった。
スターは<ジア・レム>をしまい柵からさっさと出ようとする。
「しょ、勝負あり!
勝負は、スター選手!」
歓声は聞こえない。
ここにいたすべての人間が目の前の悲劇に絶句した。
「悪魔の子か…」
レイは呟く。そして何も語らず宿屋へと足を向けた。
スターはいつのまにかこの場から消えていた。
「じゅ、準決勝はここまで!
明日はキララ選手とスター選手による決勝戦!
果たしてどちらが勝利をつかみトップを拝む事が出来るのでしょうか!」
いつも通り観客は散り散りに消えていく。
「明日もスターが圧勝するだろうな。」
「可哀想にな。キララちゃん。頑張ってんだけどな。」
そんな声が柵の中をどことなく眺めているイヴの耳に入ってきた。
イヴは少しうつむき、拳を強く握りしめる。
次回とうとう決勝戦!
どっちが勝つかな?