第三章≦きらきら星≧六部∞それでも
体が上手く動かない。瞼を開く。ぼやぼやにかすれて目の前になにがあるかわからない。何やら誰かが話しているみたいだ。
「まったくあなたはキララをなんだと思ってんだ?」
ジェネシスの声だ。ため息混じりに話している。呼び捨て?
「すまない、すまない。このこが教えて欲しいって聞かないから。」
当たり前だけど相手はイヴだ。
段々と視界がはっきりしてきた。体も言うことを聞くようになったので立ち上がろうとする。激痛が走る、体全体に電気を通したように。いきなり言うことを聞かなくなる。
「お嬢、じっとしてな。無理なことをするからそうなる。」
ジェネシスの口調は冷静なんだが、これじゃぁまるで怒られているようだ。
「うるさい。私は…!」
再び立ち上がろうとする。しかし結果は一緒だった。
「そんなことしてると縛り付けるぞ。」
嫌でももう体は動かない。
「剣はもう使うなよ。またこうなるぞ。」
ジェネシスは天井を見上げている私の顔の前に顔を出し、そう言った。
「わかったな。」
念押しされてジェネシスは目の前から消えた。
ジェネシスは私が弱いままでいいのか?いつまで子供扱いなんだ。悔しいけれど涙が出るほど体に自由はないようだ。ただただ心が黒い霧に包み困れていくようだった。
「気にするな。」
イヴが私の頭近くにある椅子に座る。
「同情ならいらない!」
叫んだ。体に激痛が走る。出なかった涙が溢れてくる。それは痛みからくるものなのか、悔しさからくるものなのかわからない。
「しゃべるな。骨折れるぞ。」
驚いた。そんなにダメージが?
「なれない姿勢、重いものを長時間振り回していたこと、栄養失調、大量の体力の増減。そんなんで逆に今生きてること事態が奇跡よ。」
あまり無理はしていない。だってまだまだ強くならないとジェネシスが死んじゃう。
「焦っているのはわかるけどあなたが死んだら誰があいつの面倒をみるの?今は安静にしてなさい。いいね。」
わかった。声も出せず、頭を動かせるほど体力もない。目で訴える。
「わかったならよろし。」
笑顔が見えた。優しいお母さんの笑顔。イヴは私にとってお母さん?下らない思考に心では笑っていた。
「今からまっずい薬持ってくるから待っててね。」
不味い予告はいらないんだが。覚悟を決めるか。
今の自分の状態が信じられない。別に戦いで深い傷を負ったわけでもなく、呪いがかかっている訳でなく、ただ自分の体が弱いために床に伏せている。情けない、下らない、みっともない、惨め。今は自分を責める事しか出来ない。誉めれるほどの事はやってない。決して強い訳でもない。
‡私は必要なのか‡
嫌な言葉が頭をよぎる。
「薬持ってきたぞ。」
元気な声。少しくらい分けて欲しい。
「はい、口開けられる。」
無理。と思うとほっぺを強く両端がら押し無理やり口を開ける。
「不味いからな。不味いぞ。」
そう暗示をしてきた。以外と甘いかもしれない。無駄な期待をする。
スプーンが口の中に液体を注ぎ入れる。
私はあまりの苦さに口に入った液体を吐き出し、そのまま咳き込んだ。
「ホントに不味いよ!」
叫べた?体も起こせる。
「さすが、マッシュ特製薬。効き目はあるな。」
なにか一人言をぶつぶつ言っている。
「まぁ激痛もなくなってると思うけどもう少し安静にね。また同じことになっちゃうから。次は死ぬよ。歩いてもいいけど。」
笑顔は相変わらず素敵だ。女の私でさえ惚れ惚れする。
そして、安静に日々を過ごした。どんなに暇でもやることがなかった。日にち間隔など全くなく、ただ時計を眺めて外の風景を想い浮かべる。あぁ、外が恋しい。
そんな事を思っていた夜の事だ。私はふと目を覚ます。時計を見ると短針が2の位置で止まっていた。朝か?夜か?そんなことはもう気にはしなかった。ただ近くでイヴが寝てる事から朝と判断した。
あの広間で音が聞こえる。風を切る鈍い音。それだけが部屋内を低く鳴り、大変耳障りだ。ジェネシスめ。真朝にまったくうるさいやつだ。お昼か?まぁいいや。
私は文句を言いにたどたどしい足取りで広間に行く。
広間では汗だくで大剣を振り回すジェネシス。私が広間に来たことに気づいていないみたいだ。私は端に腰をおろして見ていた。研究研究。
振り下ろしをしていた。始めの振り上げ状態と最後の振り下げ状態以外は早すぎて見えなかった。何度か繰り返していた。しかしどれも同じような感じだった。
【紅蓮】
炎を剣にまとわらせた。そしてまた振り下げをしている。今度は炎のおかげで残像のように見える。とても早い中間。線が引かれたように一直線。綺麗な線だった。
疲れたのか少し剣を床に置いたまま止まっていた。すでに何回振っているのか。物凄い回数を振っているかように見える。
また剣を構えた。炎の量が段々増えている。
【紅蓮―連激斬覇】
炎が踊っている。向こうに行ったり空を駆けたり跳ねたり。この空間が火の海に変わっていった。普段使わない技。人殺しの技。
それ以降物凄い火力で見たことのない技。それがジェネシスの本気。
「いつまで見てんだ?」
私に顔を向けないで聞いてきた。私は呆気をとられて頭の中が真っ白になる。
「おい、聞いてんのか。」
「うん。」
私は緊張のあまりに立つ。
「いつまで見てんだ?」
その質問の意味がわからなかった。
「さっさと剣を抜けよ。見てやる。」
「ジェネシスを見に来ただけ。剣なんて持ってないし。」
そう言うとジェネシスは指を私の横に向ける。そこに目をやる。
「じゃぁ、そこにあるのはなんなんだ?」
そこには使っていた剣があった。
「見てやるよ。」
「でも、まだ安静だし。」
ジェネシスは近付いてきた。
「人の命令しか聞けないのか?」
怖い顔。怒っている。
「私だって、ジェネシスの足は引っ張りたくない。」
「じゃぁどおすんだ?」
ジェネシスの背中を守る。私が出来るのか?やらなきゃわからない。私なら出来る。やらないで泣くなんてやだ。今から出来る事がある。
「私を強くして。ジェネシス。」
一真にジェネシスの目を見上げる。自問自答。
「まぁやらなきゃわからないからな。」
ジェネシスならそう言ってくれるとわかっていた。
「そうだよね。じゃぁやりますか。」
久し振りに笑った気がした。
「よし、剣を抜け。」
剣を抜いた。構え方はまともになっただろうか。
もう、迷いはない。剣を振り下げる。
きらきら星編終了!キララはどうなるのか?マッチョになるのかな?