第二章≦きらきら星≧五部∞喪失
なにかしら見え隠れしてきましたね。
部屋のベットで寝たり転がったり手足をバタつかせたりしていた。眠れもしないし何もすることがない。こんなときにジェネシスがいないと寂しいものだ。限界が近いお腹の虫が激しく鳴く。
「ア゛ァ〜、ジェネシス!」
誰もいない部屋で叫ぶ。勿論ジェネシスが帰ってくるわけなく。
「なんかよんだか?」
帰ってきた!
「どこ行ってたのよ、木偶の坊!か弱い女の子を一人置いて、餓死しそうだったのに!」
「はいはい。」
流された!
「なによ!はいはい。って!もう少しまともに返しなさいよ。」
ジェネシスは右手を私の目の前に出した。
「つべこべ言ってると、やらんぞ。」
紙で包まれ紐でくくりつけられているそれは私の嗅覚を伝い耐えられない衝動にかられる。
「くれ!」
「お手。」
「私は犬か!」
「いらないならいいよ。」
それを私の目の前からどかす。
「わかったわよ!!」
しょうがなく、出ている左手に私の右手を乗せた。
「三回回って鳴け。」
「なんでそこまで!」
ジェネシスはベットに向かって歩いて行く。しょうがない。一回。二回。三回。
「ワン!」
「誰が犬っつった。」
「流れ的に犬だろ!」
「違う。」
なんなんだ!犬じゃなきゃ…一回。二回。三回。
「ニャ〜!」
「違うっつうの!普通麒麟だろ。麒麟。」
「知るか!」 キリンか。キリン!
「キリンってなんて鳴くんだよ!」
「そのくらい考えろ。」
前に聞いた事がある。確か…牛に似てるような…一回。二回。三回。
「モ〜ウ!」
「それはキリンだろ!オレが言ってるのは麒麟。」
「漢字めんどいわ!なんでそんなややこしいこと言うんだ!」
一回。二回。三回。
「ヒヒ〜ン!」
そうしてやっと朝とも昼ともつかないご飯にありつけたのでした。おにぎり三個だったけどね。
トントンとドアを叩く音がする。
「マク・ベだ。」
私は二個目をむさぼっている所でしょうがなくジェネシスが開けにいった。
「やぁ、目が覚めたかい?」
「今何時だと思ってる。」
ジェネシスの声が少し怒っているような気がした。2人は一緒にいなかったのか?
とにかくマク・ベを部屋に入れた。
「早速だが、話しだ。」
三個目、にはなんとウルフの唐揚げが入っていた。ラッキー。
「これからだが、2人はどうする気かな?」
「勿論、砂漠を歩き回るつもりだが。」
ジェネシスがそういう。胸につっかかる感覚。ジェネシスは本当にそれで良いの?
「そうか、僕とデルタムはもう少し北上して商売でも始めようと考えてる。」
「ここでお別れかな。」
そうか、2人とはここでさようならなのか。寂しいな。
「明日出発予定だが?」
マク・ベがそう言う。
「オレたちはもう少しこの町にいるつもりさ。」
そうか、私たちも仕事をしなければならない。すぐには町を出ない。完全に2人とはお別れになりそうだ。
「ここでお別れだな。今日の夜にでも一緒に食事をしようじゃないか。」
「あぁ、」
三個目が食べ終わった。それと同時にマク・ベは部屋から出ていった。
「本当にお別れなのか?」
私がジェネシスを見つめて聞く。
「オレたちにだって、あいつらにだってやらなきゃいけない事がある。しょうがないんだよ。」
「私たちがこのまま北に行けばいいんじゃないか?一度も森と言うものも、雪と言うものも見たことがない。」
「うるさい!」
獲物を狩る目。私はそのまま喋れなくなる。
「必ずここに残るんだ。」
ジェネシスが部屋から出ていってしまった。ドアを強く打ち付けて。
私は俯き自分の汚れた服を見た。なんで砂漠より北に行ってはならないのだろう。いろいろな人に聞いた。森という自然の生成物を。星が降っているかのように見えるダイヤを。なんでそれを見てはいけないのか!?
ぶつけようのない怒りが溢れてくる。なんで?右目から一筋の雫が垂れる。
夜、無音が制するころ。私たち4人はレストランでいろいろなものを食べた。美味しい物だった。デルタムも笑ながら食べていた。それにつられて私も笑って見せる。それがどれだけ自分を追いこんでいるかまだ気付かなかった。この会、楽しくない。皆は笑ながら飲み物を飲んでいる。楽しそうだな。
終わった。これで2人に会えなくなる。あぁ、あぁ、あぁ。
翌日隣の部屋は最初に来たときのようにすっからかんになっていた。
きらきら星と流れ星をこれからもよろしくお願いいたします♪