第一章 第二話 特殊部隊
「目標機械種発見。場所は明手根公園、ランクはD、だけど、敵数は3体、気ぃ抜いてっと殺されるから、早くこい!」
「りょーかいりょーかい、おいお前ら、装備の支度しておけ、明手根公園でランクDの鉄クズ三体が発見された、今から向かうぞ」
そう言いながら、俺は機械種破壊ナイフを取り出し、残量を見る。まだまだ残っているらしい。俺はそれを胸辺りの鞘に入れる。
「ねぇー隊長、これからどこ行くの?」
「明手根公園だ車で30分程、ランクDの鉄クズが3体らしい」
「…ラグモも行くの?」
「いや、おまえは車の中で待機だ、機械種が出てきたときにこい」
「…うん、わかった!」
「高遠さん、ラグモにも戦わせてあげてくださいっすよ、仲間っすよ?」
「吉沢、ラグモは俺たちの切り札だ、こんなところで怪我させたら俺らが困る。青木、車出しとけ」
「了解」 「いやいや、それでも戦わせて〜」 「吉沢、そろそろ黙れ」
「…分かったっすよ…」
俺達は機械種破壊部隊。通称『PRESS』俺達は機械種を破壊するだけの仕事に志願した。本当はもっと多くの仲間がいた、だが気がつけば俺を含めて6人となっていた。俺達はいつ死ぬかも分からない仕事を金の為だけにしている。
「ラグモ、ほら人参スティック、食っとけ」
「あ、福原君、ありがとう、ラグモ、これ好き」
「さっさと支度しろ、福原、ラグモ」
「へいへーい」 「わかったー、隊長」
「青木さ〜ん、俺の拡酸銃、どこにあるか分かるっすか?」
「あれか?俺たちに掛けられると危ねぇから捨てた」
「え!いや、ちょ!じゃあ俺どうやって戦えばいいんすか!」
「俺の麻酔銃やるからよ」 「いや、これ効かないんすけど!」
支度に10分も使って、全員が車に乗ったところで車を発進させた。俺たちは残り6人になってからは、自分の命と仲間の命も大事だと気づいた。こんな世の中になって、人が死ぬのが当たり前になった、この世の中でやっと気づけた事だった。
明手根公園に到着する、まず俺が先陣を切り、その次に青木、福原と続き、最後に吉沢とラグモが2人で行動する、この陣形を俺たちは毎度行う、そして先に到着している戸崎が罠を張り、罠にかかってる間に、破壊する。その手法でこれまで生き残ってきた。
発見場所に着く、しかしそこに機械種の姿は見当たらなかった。辺りを探しても、罠にすらかかっていない。
「どういう事だ?」 「…わかんねぇよ…」 「っ!戸崎、機械種は?」
「それがよぉ…」 「見当たらないだと?」
「さっきはいたんだって〜…羽が生えた奴〜!」
「戸崎ちゃんの見間違いなんじゃないんすか?だって、節穴でしょ?」
吉沢がいつものように冗談を言う、それを聞いた戸崎は吉沢の腹にアッパーを仕掛ける。吉沢の腹から鈍い音が聞こえ、抱え込み蹲る。
「ちょ、マジで…冗談じゃないっすかぁ!」
「私に冗談は聞かねーんだよばーか!」
「おまえら今は戦場に居るんだぞ!家にいるのとは違うんだぞ!」
その時、虫の羽音の様な物が聞こえた、しかし、その羽音は金属と金属を打ち付ける音にも聞こえた。音がする方向を向くと、木の枝から顔を覗かせてこちらを見ている虫の顔をした機械が見えた。
「…かくれんぼでもしてるんすかね…」 「あいつらに知性なんかねーだろって…」
「ラグモも、みんなと、」 「ラグモは下がって」
「おまえら、まだ動くなよ…」
機械種の動きを伺う、その時見ている方向とは真逆から羽音が聞こえた。後ろからは機械種達が二方向から吉沢と青木を襲った。吉沢は避けたが、青木がそのまま突進を受けてしまった。
「青木!」 「青木さん!」 「うぐっ…!」
俺は機械種破壊ナイフを構え、青木に攻撃した機械種を斬りつけた、機械種は悲鳴のような声を上げ、反対の方向へ逃げようとする。しかし、青木の持っている機械種狙撃用スナイパーで逃げようとした機械種の心臓部分と思われる部分を狙撃した。撃たれた機械種はそれ以上動く事はなかった。しかし残った2体が狂ったような声を上げ、此方に飛んでくる。
「うおっと!危なかったっす…、あいつら、仲間が殺されてキレてるんすかね…」
「ラグモ、俺の背中に隠れてろ」 「福原君、わかった」
機械種達は明らかに怒っている様に見える。しかし奴等には感情や自我など無かったはず…
ここでラグモのあれを使うか?だが、俺達がなんとかしないと俺たちが困る…どうする?
「高遠さん、どうするんすか!」 「今考えてるから警戒だけしていろ!」
その時だった、俺たちの目の前に人が出てきた。機械種と戦闘中は一般人は立ち入り禁止となる筈だったがサングラスをかけた浮浪者の様な人間が近づいてきた。
「お、おい!一般人はこっちに来んな!」
「お、おいなんか、様子おかしくないか?」
「… Μην αγγίζετε το παιδί μου… Μην αγγίζετε το παιδί μου!… Μην αγγίζετε το παιδί μου!‼︎」
「な、なんか変な事言ってるっすよ…?」
「…私の子供に手を出すなって…ギリシャ語でそう言ってる…」
「ギリシャ語!?機械種に、知性はないって話じゃないのかよ!」
「まず、人間の見た目してる時点でおかしいっすよね!?」
「ahhhhhhhhhhhhhh!!!!!!!!!」
その人間だったものは雄叫びの様な声を上げると、背中から銅の色をした羽を出し、蛹から出てくる蝶の様に姿を表した。そいつはまさしく蝶だった。俺はこの光景を忘れる事はないだろう…
「ま、まずいっすよ!」 「高遠!一旦退避するぞ!」 「あ、あぁ…」
俺達は全員車に全速力で戻ろうとしたが、蝶の機械種が足止めする。そして蝶の機械種が襲いに来る。いつもの機械種とは訳が違う、圧倒的に速い動きで俺達を圧倒する。
「な、なんなんだよこいつ!」
「ランクAってとこっすかね…」
「そ、そんな事言ってる場合じゃないだろって…」
「これは…かなりまずい…!」
絶対絶命、その瞬間だった。
「…ga,gaaaaaaaaaaaaaaaaallllllllAaaaaaaaaaaaaaa」
何処かが壊れたかのように、バグでも起こしたかの様に蝶の機械種は地面に這いつくばった。その真後ろには、爪が猫かの様に伸びている人間の男が立っていた。俺達は驚愕するしかなかった。車に急ごうとした時に既に車に先回りしていた機械種が、気づかれずに殺されていた。
「だ、誰だ…?」 「高遠さん、知らない人っすか…?」 「し、知らん」
その男は何も言わずに何かを食べていた。魚を食べていた、アジを食っていた、何故だ?なぜアジをこの場で食っているんだ…?考えていると、男はニヤリと笑い口を開けた。
「…PRESSの人たちだよねぇ?そこのちっちゃい女の子、持ってっていい?」
「…ラグモか?…無理だ、俺達の仲間だ、まず、理由を説明しろ…」
「理由?…あぁ〜理由かぁ〜、もう闘いは始まってるからさ、早々に一人消しときたいんだよね〜」
「…消すって言ったすよ、この不審者、うちらのラグモを消すっつったっすよ!?」
「分かってるから、いちいち言わなくていいから、口塞げ」
「ラグモ、下がれ」 「うん、分かった、ラグモ、福原君の後ろ、隠れる」
「ランクAの機械種を素手でやってる分、俺らに勝ち目なんて…」
俺たちは銃を構える、まだ周りには2体の機械種がいるが、今一番危険なのはこの男だった。しかし、そんな心配なんかする暇もなく、俺達から少し離れた場所で、音が聞こえた。俺たちは其方を向く。男もそっちが気になったらしい。
そこから聞こえてきた音は、着地した音、黒金色の稲妻を纏った。青年の姿がそこにはあった。全員、呆気に取られていたが、一番最初に動いたのは、やっぱりあの男だった。
「…おもしれぇ、やってやろうじゃねぇか」