悪役令嬢にかかる強制力も見方を変えれば悪くないわね。
ここは王城の大広間そして今卒業記念の舞踏会の会場で王子が宣言した。
「王家の名において告げる、セガ公爵令嬢サターンよ、今この時をもって
お前との婚約を破棄し、そしてオレンジ子爵家令嬢カリンとの俺との婚約を宣言する!!」
サターン令嬢は顔色一つ変えず何も言わない。
「…」
続けて王子が断罪を行おうとしたとき、空から声が聞こえた。
「そして、今までカリンに対しおこなっていた数々の」
『システムメッセージです。プロローグADVパート 婚約破棄編 終了しました。
続いて、オープンワールドSLRPGパート 跳躍編始まります。』
「な・・?なんだ今の声は?空から聞こえる声?神の声か?」
サターン令嬢は、肩の荷が下りたかのように少し体を動かすと
今までの能面のような、そしてきつい目つきから朗らかな顔になって言った。
「やったーこれでようやくシナリオの強制力から解放されるわね」
困惑した表情で王子は言う。
「お前は何を言っている!!」
サターンは、軽い口調で恐ろしいことを言った。
「あー王子、そのバカ子爵令嬢とどうか仲良くお幸せに、我が公爵家は独立して
新国家を作らせていただきますわね」
「何をバカな、公爵家とはいえ、たった一つの家が独立して、我が国に勝てる?あれ?」
王子は、最初バカにした口調で言いかけたあと、顔が真っ青になった。
「その辺りはご存知のはずですわよね。」
王子は冷や汗を垂らし、足をガタガタさせながら言う。
「ああ、それは知っているが…というか、この婚約破棄は…」
「一度王家の名の下に宣言したことは覆りませんわよ」
「そこをどうにかならんか?」
「宣言した王族の命をもって取り消しができますわよ」
「いや俺が死んだら破棄を取り消しても…」
王子の横にいたカリンが前に出て言った。
「なんで破棄された悪役令嬢が、そんなこと言うんですか、王子もさっさと
この悪役令嬢を絞首台に連れて行って死刑にしてください。」
「い…いや、カリンよそれは無理だ」
王子は、言いづらそうに言った
「なんでですか!今朝話してご納得いただいてたじゃないですか!!」
「いやなぜあの時そんなバカなことを行っていたのがわからない」
「バカなこと?王家の命令なんですから公爵家っていったって絶対服従ですよね」
「それがなあ…」
「あらカリンさん、ご存知ない?我が公爵家は、現在この国の国民総生産の99%を
生み出し、軍事力においても95%を提供しております。そして国土についても新たに
開拓した魔大陸を合わせこの国の国土の領土の10倍、人口についてもご存知ですわよね?」
「え?」
カリンはまるでFXで全財産を溶かした人のようにとろけた顔になった。
「カリンよ、現在、この国は公爵家がないと動かないと言うか、公爵家がこの国そのもので
他は王家も含めおまけなのだ」
「そ…そんな?そんなこと私の知ってるシナリオにない」
「あら?あなたも転生者だったの?」
「まさか!!」
「ええ、私も転生者よ、まあシナリオの強制力には最初振り回されていたけど
あれもうまく使えばいいものよね」
「え?だってこのゲーム悪役令嬢が死ぬところがエンディング…」
「ああ、あなたプロローグのみの無料体験版だけをやったのね。
たしかに本編は高いし難しいからやってない子は多かったけど」
「お前たちは何を言っている?」
「ああ、王子あとで説明してあげますからお待ちくださいね、
体験版だけも面白いと言うことでプレイする人が多かったけど
このゲームは、そこからマルチキャラ選択式の超高難易度SLRPGパート
が始まるの。王子でプレイして魔王と氾濫した公爵家と戦うもよし
悪役令嬢になり、うまく逃亡し、魔王と共闘し王家と戦ったり両方
とも戦うもよしのね」
「え?え?え?」
「まあメインシナリオに手を入れなければ、強制力も働かないから
だいぶん先行して進めさせていただいたわ。」
「ちょっとまってそんな話聞いてない」
「まあもう公爵家の勝ちは決まってるから、二人仲良く没落生活を頑張ってね。」
王子はそんなことはないと否定を行おうとした。
「まて、いくら公爵家が離脱したからと言って、他の家があるのだ没落など…」
「ああ、うちが新しい国を作る際には、他の貴族家もすべてうちに移籍するのは決定済みですわ」
「え?」
「残るのは王家と王都だけです。」
「…お・王都があれば…」
「ああ、うちの息のかかった商家は全て撤退させますので、だいたい 10%ぐらいは残りますわよ」
二人とも顔を青ざめ、何もいえない。
「…」
「…」
「ああ、お情けで戦争するのだけはやめてあげますわね、オホホホホ」
高笑いをしながらサターンは去って行った。
王子・カリン
「ど…どうしてこうなった…」
そして、超国家セガによってこの惑星は統一されることとなったが、
唯一見せしめのため、その王家は存続を許されたと言う。
そして話は10年前に遡る。
「え?私悪役令嬢としてゲームに転生なの?いやだわ!!」
彼女は、最初悪役令嬢らしい行動を避け、イベントを回避しようとした。
『プロローグでは指定イベント中シナリオ外の行動は禁止されています。』
世界の強制力で、やりたくもない行動をさせられる。
次に絶対その場にいることができない場所まで移動し、アリバイを作ろうとした。
『プロローグでは指定イベント中シナリオ外の行動は禁止されています。強制転移します。』
強制転移させられ無理だった。
そして最後に精神的に追い詰められ自殺しようとした。
『プロローグ終了まで悪役令嬢の死亡は許可されていません。絶対防御を発動します。』
「え?絶対防御?」
それが始まりだった。
「つまりプロローグが終わるまでは絶対死なないってことよね」
そして快進撃が始まる。
「無敵なんだからどんなとこに行っても死なないし、レベル上げ放題だわよね」
魔の森に単身で入っても、死ななかった。レベルが死ぬほど上がった。
「シナリオに書いてない範囲なら内政無双で、やっちゃっても平気なのね」
領地内であらゆる改革を行いGDPを向上したが、シナリオには止められなかった。
「SLRPGパートの魔大陸は、プロローグでは、話がないから何をやっても平気かしら」
魔大陸を攻め、魔王を倒したが、シナリオには止められなかった。
「王都にうちの息のかかったお店を出すのはどうかな?」
シナリオに出てくるお店には直接干渉できなかったが、それ以外は問題がなかった。
そして今に至る。
「悪役令嬢も悪くわないわね」
めでたしめでたし。
まあ強制力の力が強いなら強いで利用できますよね。