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 あの後お茶を頂いてから王城を離れたが、王城って魔窟すぎないか…?


 メイドの皆さんに生暖かい目で見られるのはまだいいんだ…


 なんで部屋の外で皇帝陛下が歯噛みしてるんだよ。


 近衛騎士団長に困った笑顔を向けられた時の気まずさったらなかったぞ…


 部屋の外でバッタリ会った訳じゃないけど流石に分かる…


 正直魔境より魔境過ぎて行く時には覚悟が…過ぎた事だ、忘れよう。


 王城を後にした俺とルイスは工房に来ていた。


 案内の為の姫様の執事のセバス氏に案内してもらう、物腰が柔らかくて穏やかな人でよかった。


「こちらになります、こちらにあるものはご自由にお使いください、また管理人はあちらの棟にいますので何かございましたらお声掛け下さい。」


 そういって工房を後にするセバスに礼を言って見送る。


 工房にきて最初にすることは何か、ルイスに聞かれた俺はこう答えた 整頓 だと。


 そんな訳で今俺達は棚の中に素材を収めている。


「それにしても凄い量ね。」


 ルイスが若干あきれ気味に呟く・


「これでも使いそうな物に限ってるんだけどな、袋の中にはこれの5倍はあるぞ。」


 そういうとルイスが袋を見て呆れる。


「5倍って…その魔法袋どれだけ入るのよ…」


 そういいながら溜息混じりに手を動かす。


「本当にこれ便利だよな、最初に考え付いた人に感謝だよ。」


 そういいながら俺も手を動かす。


「普通そんなに入らないわよ、この棚1つ分の容量入る袋だっていったいいくらすると思ってるのよ。」


「そういえば見た事無いな、いくらするんだ?」 


「貴族のお屋敷が立つわよ…いったいこんな化け物容量の袋どこで拾ってきたのよ…」


 溜息混じりに呆れられる、そうはいってもなぁ。


「袋の材料はワイバーンの胃袋で魔方陣のインクは暴食竜の血だな、欲しけりゃ用意するぞ。」


「・・・」


 あれ?どうしたんだ?ルイスの奴固まってるけども。


「ええええええ!?なに!なに!?なんなの!?お兄ちゃんこれくれるの!?」


 滅茶苦茶な勢いで食いついてきた。


「おう、入れ替え面倒くさいから同じようなのだけどな、行く前に用意するよ。」


「うそ、そんな簡単にポンポン渡せるようなものじゃないよこれ!」


 そう言われても素材に魔方陣を書いて縫って起動するだけなんだけどな。


「そんな事言われてもなぁ、大した手間じゃないぞ。」


「手間って!お兄ちゃんこれ作れるの!?こんなの作れるの!?」


 2度聞きって、そんなに驚く事か?


「おう、趣味でやってたら出来るようになってたぞ。」


「信じらんない…錬金術師の知り合い何人もいるけどこんなの作れる人知らないよ…」


「そうは言われてもなぁ、素材がいいからだろ。」


「素材って…」


 実際素材を売ってることなんて滅多に見ない。


 血に至っては自分で採集した奴以外みたことないな。


「お兄ちゃん、規格外って自覚ないでしょ。流石元SSSPTね…」


 何か諦めたように溜息をつかれる。


 そうした問答をしながらも整頓の手は止めない。本当にこれ素材さえあれば誰でも作れると思うんだけどなぁ。


 後々聞いた話では、そういう風に素材のランクアップと研究が出来る人が少ない上に採算が合わない為殆どの錬金術師はこういうものを作る事がないし、作る経験もないので作れないらしい。


 そうは言われてもなぁ、市販品は高いし効果が今一だし、自分の必要な物を作っていたらそれが休日の日課になって作れる物増えていたからなぁ。


 基礎を教えてくれたあの爺さんに感謝だな。


 依頼途中で死に掛けてるのを助けた爺さん、命の礼にと錬金術と調合の基本のレクチャーとテキストをくれたのを思い出す。


 そういえばあの本まだあったよな。


 今度ルイスにもおしえてやるか。


 その時は軽い気持ちだったんだけど、そのテキストを見たルイスが生きる伝説とか言い出したのは別の話。


 爺さん偉い爺さんだったんだな。





 話は戻り、騒がしい整頓を済ませ、管理人に鍵を預けてルイスを送る。


 今は王都の教会で世話になっているらしい。


 聖女の号をもつくらいだから偉いのだとか。


 そこから普段何をしているかとか、最近の王都の流行とか、そういう話をしながら歩みを進めると荷馬車を運ぶ教会の集団を見つける。


 教会のシンボルの描かれた幌馬車5台に物を満載し、シスターと孤児とご婦人方が行進する。


「そういえば今日は炊き出しの日だった。お兄ちゃん、行って来てもいい?」


 首肯するとルイスはその集団に追いついてシスターに何か話している。


 俺はそこに追いつくように歩き合流する。


 ルイスに紹介されると子供達が駆け寄ってきてシスターに叱られるが子供達はどこ吹く風と笑いながら群がる。


 子供は嫌いじゃない、むしろ好きなので構いながら歩みを進める。


 大人しい子達はルイスの近くで話しに花を咲かせている。


 ご婦人方の暖かい視線を受けながら歩みは進み、炊き出しの会場に到着するのだった。





 王都冒険者ギルド前には大きな広場が設けられている。


 それは大規模なレイドクエストが組まれた時に冒険者が集合する、時には軍や騎士団とも共に臨む事があるために相当広い広場になっている。


 またそこは冒険者ギルドの目の前という事で冒険者同士の喧嘩はあるが、基本的に治安が良く保たれている場所である。


 そこが炊き出しの会場である。


 調理器具を運び、井戸の水をくみ上げ運び、鍋に入れる。


 食材を順にカットして鍋に投入する。


 炊き出しに集まる人の誘導、列整理を行う。


 料理が出来なくても手伝える事はこれだけあるので出来る事をこなしていく。


 子供達も楽しそうに設営や列の整理、配膳、食器の回収等の出来る事を手伝っている。


 ルイスも笑顔で調理や受け渡しといった事を行う、教会の顔といってもいい立場だからかやけに列が長いが。


 時々親のいない子供達に話を聞いてシスターと話をしたりしている。


 スラム街が近いので当然そこから人が多くきている。


 というよりもそこに住んでいる人達が対象なのでそれが当たり前なのだが。


 スラムは当然治安がよくはない、しかしここでは治安を乱す者はいない。


 怒号が響くが


「どこだ!ここで無法を働いた馬鹿野郎は!」


「炊き出しで暴れる奴は許さん!」


 大柄の男達が大声で叫びながら走る。


「何だお前らは!」


「うるせえ!ここで暴れる奴等は俺達冒険者の敵だ!」


「俺達の恩人の場を乱すのは許さねえぞ!」


 即取り押さえられて暴漢と化した男は連行されていく。


 後で聞いた話だが、この二人は元々孤児であり、教会の炊き出しで命を繋いでいたらしい。


 他にも何人もそういう子供達が冒険者になり、その仲間も時々手伝ってくれる。


 それが炊き出しの治安を保ってくれていて、そのお陰で安心して女ばかりの集団で炊き出しが出来るらしい。


 良く出来ているものだ、そう思う。


 もちろんそれは善意から始まっているのだろうけど、そういう風に子供達が育つ土壌がどこかにあったのだろう。


 それを作ったのが誰かはわからないが、いい街なのだという事が実感できる、初めて参加した炊き出しにそう感じたのだった。



*お読み頂きありがとうございます。

アンジェは5女で末娘です。

皇帝陛下は娘を溺愛しているのでキャラが崩壊します。

というかなんだかんだでみんなキャラ崩壊しまくってますね、はい。

力不足な部分は申し訳ないのですが笑って流して下さい。

次回で準備回は終わりの予定で、次々回から探索に入ろうかと思います。

出来るだけ毎日更新するのでよろしくお願いします。

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