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 力を溜め始めたゲラートを冷たく見下ろすリン。


 全力を込めて必殺技を繰り出そうとしているゲラートに対してリンは魔力を軽く右手に纏わせるだけである。


 まるでお前程度これで十分だと言わんばかりの態度で。


 ただ冷たく、ゴミを見る目線でゲラートを見る。


 そしてゲラートは力を溜め終える。


「行くぞクソガキ!消し飛びやがれ!」


 そう言って突撃体制をとるゲラートに対して軽く構えるリン。


 勝負を決める一撃が繰り出されようとしていた。


 そして硬直。


 これを当てた方が勝者になる、そう思い込むゲラートがなかなか一歩を踏み出せないからだ。


 呆れ混じりに自然体で見据えるリン、しかしそれは長くは続かない。


「ああああああああ!!??」


 ゲラートの後ろから女の悲鳴があがる。


 ビクッ!!


 身体が反応して振り向いてしまうゲラート。


 それが終わりの切っ掛けだった。


 ここまで愚かならもういっか。


 そう思ったリンはゲラートが振り向いた瞬間に距離を殺す。


「あ……」


 向き直ったゲラートは絶望する。


 込めた力を発揮する為の助走も何も出来ない。


 ただ力が篭っているだけの状態で攻撃を受けるしかない状況に陥った時、ゲラートの経験にその状況の対処がなかったのだ。


 よって棒立ち。


 振り抜かれる右腕を何も出来ず見ているのみ。


 動かない身体とは反対にその軌道が、腕の形が、良く見えてそして目の前に来た時に視界が暗転する。


 それは叩きつけられた一撃により顔面が地面にめり込んだ証拠。


 しかしゲラートはそれを理解することはない。


 その時にはゲラートは意識を飛ばし、込めた魔力は全てが霧散して粒子となって落ちる。


 百メートル程の距離を地面をバウンドしながら吹き飛ばされたゲラートは意識を失い瓦礫の中に叩き込まれたのだった。


 こうしてリンは完全なる勝利を手に入れたのだった。




 リンとゲラートの戦いに決着がつく頃、少しだけ離れた場所で行われている戦いも終わりを迎えようとしていた。


 両手に闘気を集め3メートル程の大玉をつくっていくガイル。


 これがガイルの必殺の奥義、闘魂球である。


 その威力はSランクの竜を一撃で沈黙させるほどの圧力を持っている。


 それは人間相手に使えば当たった者は潰されて赤い染みになって消える、そういう技。


 それをガイルは発動し、今にも放とうとしていた。


「がああああっはっはっは!潰れて消えろ!闘魂球!!」


 準備が出来て直ぐにそれを放つ。


 頭の上に上げられた両手を振り下ろすと同時に前に放たれる球をハインは見据えて初動を決める。


 魔力と闘気を身体の強化に回す。


 全身を必要最低限に強化し、残りは全て……


 それを行う間にガイルの奥義が迫るが、慌てずに初動を行う。


 それが発動した時、球は目的を見失う。


 それが発動した時、ハインの姿は掻き消える。


 残像も残らずに完全にこの線上の二人の視界から消え失せて存在をくらます。


 ハインの居る場所を通過したそれはアルフレッドに迫る。


「ぬるいわ!」


 その一言と共に左手に持った大振りのラウンドシールドを使いそれに突進をかける。


 踏みしめた足が大地に杭を打ちつける。


 一本、二本と打ち付けられたそれは入れ替わり進んでいく。


 それと共に押し返されるガイルの奥義。


「これくらいで!いきがってんじゃねえええええ!!!」


 アルフレッドの咆哮が響く。


 それと同時に振り切られるラウンドシールド。


 それは終わりの合図となる。


 跳ね返された球は近くに残っていた高い建物を粉砕する。


 それが確認された時既に勝敗は決していた。


 力でアルフレッド殿に負け、速さと技でも私に負ける、SSSランクにしてはお粗末過ぎる結末ですね。


 それを聴いた瞬間、ガイルはその両目を見開く。


 そこに込められていた感情はなんだったのか、それは本人にも分からない。


 ただそこには、侮辱に対する怒り、そして衝撃に対する困惑があり。


「ぐ、ぐぼ、ごふ……」


 気管を逆流する液体と腹を貫く熱に驚愕を浮かべてガイルは地面に伏す。


「ったく、あんなもんの処理させるんじゃねえよ」


「はっはっは、アルフレッド殿にも見せ場が必要だと思いましてな、あれだけじゃ退屈していたでございましょう?」


「ちげえねえ」


「とりあえずこれで片がつきましたか?」


「ああ、あとはロイドがしっかり終わらせてくれば、全部終了だな」


「ですね」


 血に沈むガイルを縛り上げながら和やかに話す二人。


 こうして疾風の英雄達の反乱は、見せ場もなく終幕を迎えることになったのだった。


「ほんと、名前だけだったな」


 ぼやく声に返されたのは苦笑いのみであった。



リリ「なんというか」

アラ「簡単におわったな」

リリ「ルイス達とは実力の開きが大きいわね」

アイ「仕方あるまい、二人は普段訓練なんてしてなかったからな」

アラ「それであそこまで出来るって、逆に凄いってほめてやろうぜ」

リリ「そうね!」

アイ「それもこれも我が不肖の息子のおかげだな」

アラ「ちげえねえな」

リリ「アイリスにも感謝しなきゃね」

アイ「はっはっは!感謝しても珈琲しかでぬぞ」

アラ「そりゃありがたい、後で絶対必要になるとおもってたからな」

リリ「気が利くのはむかしからね、アイリス」

アイ「それほどでもないさ」


それほどのものでしょう。

ということで城外戦は終了です。

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