70
「ルイス!」
「うん!わかってる!」
アンジェの呼びかけに返事を返しながら補助魔法を展開する。
相手はSSSランクなんだから、いくら人数で勝ってても油断は出来ない!
戦闘能力を強化する祝福を付与して相手の遠距離攻撃を遠隔で防壁を張って防いでいく。
アンジェも的を絞らせないように相手の弓使いと魔導師に矢を放っているけど相手の方が経験値が高くて有効打は打てていない。
それでも相手が落ち着いて攻撃できないようにする為に矢を放つ手は止めない。
元より実力面で大きな開きのある相手だから有利に運べるとは思っていない。
それでも前衛の皆が少しでも戦いやすいように私達は全力を尽くす。
相手の矢や火球を防壁で逸らしたり落としたりして防ぎ、アンジェが矢を放つ。
そうして暫く防いでいると矢の軌道に規則性が見えてきた。
試しに余裕のある防壁を先に置いてみる。
成功した!それなら!!
そうして防壁の動かし方が分かってきた私達の手に余裕が生まれてくる。
「アンジェ!防御は私に任せて!」
「わかったわ!」
そうしてからはアンジェは攻撃一辺倒に搾る事が出切るようになった。
相手の攻撃の手数が減ってきてこれならいける!
そう思いながら相手の矢を防ぎながらアンジェの補助魔法を強化する。
ここから畳み掛けてみんなの援護をしなくちゃ!
そう気が急いていた。
乗せられていたのだ。
でも私がそれに気付く事はなかった。
経験値の差が如実に出た結果といえる。
相手は上手く劣勢を演出して私達を前のめりにして反撃を意識から消したのだ。
それに気がついた時にはもう遅かった。
相手のいる場所に見える赤い大きな魔法陣、ここからでもその熱気を感じるそれは私には防げない。
それは絶望するに十分な状況、経験不足というには余りに拙い戦術の結果。
相手のその思惑に気がつけなかった時点で、私とアンジェは負けていたのだ。
それでも、何とかする為にできる限りの手を尽くす。
前線の人の前に全力の防壁を作り、アンジェは威力を少しでも相殺しようと全力の魔力矢を番える。
命懸けでなんとかするしかない!!
対する二人の行動はどうだったのか。
「ちっ!埒があかないわね、ローラ!大きいのを打つから防御は任せるわ!出来るだけ気付かせないように時間を稼いで!」
「……わかった」
バーバラの言葉にボっとした様子で答えるローラ。
そして矢を番え目にも留まらぬ速度で連射を放つ。
それは狙ったとおりにアンジェの放った矢を打ち抜き、吹き飛ばし、跳ね返す。
「前線のゲラートやガイルの援護はいらないわ、私のこれさえ打てれば勝負は決まる」
そういいながら大魔法の構築を進めていく。
ローラは反応なく、ただ機械的に矢を射るばかり。
「ったく、面白くないわね」
そういいながらも魔法順を展開する手は止めない。
そして暫く、アンジェの放つ矢の攻撃が激しくなってきたところでそれは完成する。
「起動!」
その言葉と共に魔法陣は立ち上がり、魔力を吸って赤く光り輝く。
街一つ、いや、普段のそれよりも強く魔力を練り上げたそれは都市を一つ飲み込む炎の世界を作る破滅の魔法。
並の魔導師では魔力が足りず、命を削りきって発動するそれをバーバラは作り上げたのだ。
瞬間、指に嵌めたリングや右足のアンクレットが音を立てて割れて灰になるがそんな事はお構いなしだ。
「さあ、私の邪魔をしてくれた礼をさせてもらうわ!」
「全てを飲み込む地獄の炎!ヒュージエリアインフェルノ!!全てを燃やしつくっ!!??!?」
詠唱を終えて今にもそれを叩き込もうとしているバーバラの言葉が止まる。
いや、言葉が止まっただけではない。
杖を構えていた右腕が宙を舞う。
「う?う、ああああああああああああああああ!!?!!?!?!?!」
理解できずに居た一瞬、それが宙を舞って地に落ちて、自分の腕のあるべき場所を見たバーバラは理解が及ばずに絶叫を上げる。
「な!なにが!?腕が!私の腕が!!!」
急に吹き飛ばされた腕に平静を保てないバーバラは魔法の制御から意識が離れてしまう。
「あ、あ、ああああああ!?!?1」
叫ぶバーバラの姿を浮かび上がらせるようにその魔法は霧散していき、赤い粒子となり辺りを照らす。
「!?」
ドゴン!その音に気がついた時はローラが吹き飛ばされて瓦礫の山に突っ込んでいた。
轟音に気がついたバーバラはそれを見て更なる恐慌に陥る。
しかし、それだけではすまない。
「ぐっ!?ぐえええ!」
這いずり腕に向かっていたバーバラの背中が踏みつけられる。
「いだいいいいだいいよおおおお」
動けずもがくバーバラは何が起こったのかわからぬまま喚きもがく。
「いだっ……」
その言葉を最後に沈黙したバーバラは意識を手放す。
その瞬間に何を思っていたのか、それは誰も分かることではなかった。
「命拾いしましたね」
今まで矢を放っていた方の変化に気がついてアンジェが言う。
「うん、アルさんの指示でクウちゃんが行ってくれてたおかげだね」
そう言ってルイスも頷く。
種は簡単なことである。
最初から姿を見せずにクウは別行動をしていた。
危ないところがあれば奇襲して有利に運ぶように言い含められてだ。
幸いにもリンもハイン、アル組も優勢に進める事ができていたので状況を注視する事ができていたのだ。
幼児なのだが、その辺りの戦闘センスは種族を通して受け継がれているものか。
これを放たせてはならないと判断してクウは魔法で存在を誤魔化してバーバラを奇襲したのだ。
その初撃がバーバラの腕を切り飛ばし、制御を失わせた。
そして感知できていない間にローラに痛打を与えて沈黙させる。
最後にバーバラの意識を刈り取ることで制圧を完了させたのだ。
必死に頑張った二人のお陰で意識が逸れた事で完遂出来た作戦。
最初に勝利したのはアンジェ、ルイス組とクウの三人であった。
リリ&アラ「「ホッ!」」
アイ「よかったな」
リリ「本当に、あの子ったら危なっかしいんだから」
アラ「そりゃ、昔っからそうだったからなぁ」
リリ「あの子も大きくなっちゃって……」
アイ「娘の成長はこの上なく嬉しいものだな」
アラ「おう、お前もわかってくれるか」
アイ「そりゃ私にとっても娘のようなものだからな」
リリ「そうよねぇ、孫が楽しみだわ」
???「気が早いと思うが」
全員「早くないよ!」
???「あべし!!」




