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「聖龍の鱗…」
搾り出すような言葉と共に目を見開いて驚きを表す皇帝陛下達。
聖龍の鱗、それは文字通り明暗の森に棲むという聖龍の鱗なのだが、問題はその棲んでいる場所である。
「聖龍の棲家とされているのは森の最深部、そこに至るまでには高ランクの魔物の縄張りが数多にあり、SSSランクPTでも気を抜けば無事に済まぬといわれるあの聖龍の…」
というわけで場が驚きに包まれていたのである。
聖龍は文字通り聖属性の龍であり、不死の者にとっては天敵と言える。
その力は鱗一つであっても中級までの不死者に対しては大きな効果を持つ。
その使い方は多種多様、そのままでも、加工して武器や道具の強化にも絶大な効果を発揮するものであるが、その分加工は難しい。
「幸いにして私は以前依頼で立ち入った事があります、慎重に進んでいけば問題なく、素材を卸せば国の利益にも繋がります、どうかご許可を。」
「それはよいが…条件がある。」
「条件ですか、それは如何なるものでしょうか?」
「それはな…」
皇帝がニヤリと笑みを浮かべながら条件を話し始めた。
「お父様ったら、全くもう!」
謁見を終えた俺たちはアンジェに連れられて城内を歩く。
「いいじゃないか、あれくらい、父親なら誰でも思うことだよ。」
苦笑いしながら嗜める。
「私の安全に繋がる物を収めろって、護ってもらってるのに申し訳なくて…」
そういって眉をハの字にして申し訳ないという感情が表れている。
「気にしなくていいさ、ルイスにも作る予定だから、一つ作るなら二つ作るのも大した手間にならないからな。」
「うんうん、お兄ちゃんもこんな美人な私とアンジェに贈り物できるって張り切ってるよね!」
そういって明るくアンジェを励ますように言うルイス、いや、間違っちゃいないけどな、いないけどなぁ。
「確かに必要であるから作るのに異を覚えたりはしないが、流石にそれは否定してもいいか?」
否定しようとするとルイスは頬を膨らませる。
「えー!お兄ちゃんいつも私の事可愛いっていってくれるじゃん!それに街で皆私達の事美人だっていってくれてるんだよ!もっと張り切ってよ!」
そう言って詰め寄ってくるルイス。
「そりゃ隣国にいても噂は聞こえてるけどさ…」
事実なので否定できずに困る。
「それなら張り切ってもいいじゃない!」
しめたとばかりに強気に言われる。
「いや、それで張り切ってしまうとタダのシスコンで女タラシにしかならなくないか?」
軟派な変態と思われるのは困る。
「違うの?」
首を傾げながら聞かれるが全力で否定させてもらおう。
「断じて違う!大体娼館とかも行かずに暇さえあれば調合と錬金ばっかりやってる俺のどこをどう見たらそうなるんだ?」
その言葉にドン引きしながら
「うわ、お兄ちゃんそれって…枯れてるし、シスコン否定できてないよ?」
「俺は何を言っているんだ…」
ルイスの突っ込みにうな垂れる。
「二人とも仲がよろしいのですね。」
このお姫様も天然だった…
「調合に錬金もできるって凄いじゃないですか!しかも女性関係まっさらで硬派なんてすごいですよ!」
私室についた後、俺を持ち上げようとするアンジェ、気遣いがいたい…
「お兄ちゃんはシスコンなだけで私以外に興味ないんだから当然だよ!」
殴りたいこのドヤ顔…おっと違った、守りたいこのドヤ顔かな?そう思いつつルイスの頭に手を伸ばす。
「ちょ!おにいちゃん!それはだめぇえええ」
軽いアイアンクローに涙目になるルイスはおいといて。
「シスコンかどうかはさておいて、女に興味はあるが、興味を持つほどの女がいなかっただけだ、勘違いするな。」
そう断るがアンジェは微笑みながら口を開く。
「ええ、分かってます、こんなに可愛い妹がいたらなかなか他の女性は目に入ってきませんよね、分かります。」
そうじゃない、そうじゃないんだが、言い返せる気がしないので口を閉じる。
沈黙が支配する、何を言ってもこれは薮蛇でしかないよな…とそうして出来た沈黙も長くは続かない。
「ひっくひっく…」
拙い、アンジェに気を取られて放置していたら泣き出した、こうなると非常にまずい…
「だぁ、悪かった、やりすぎた俺が悪かった!」
「うぇーーーん」
やりすぎた…いつも調子に乗りすぎたルイスを止める時に加減を間違えるとこうなってしまう。
適度に止めとけばじゃれ合いで済むんだが今回のこれは完全に俺が悪い…
「なんでもするから頼むから泣き止んでくれ。」
といった瞬間に軽い衝撃、ルイスが飛び込んできた衝撃だ。
そのまま暫く泣かれた、ほんと、失敗した、苦笑いしているアンジェにすまないとジェスチャーで謝っておく。
凄くニコニコしてるアンジェの目線が凄く生暖かかった…
「ぐす。ぐす…」
ようやく落ち着いたルイスが鼻をすすりながら涙目でにらんでくる。
「ごめん、悪かった、本当に、なんでもするから機嫌直してくれよ。」
うちの妹様は一度泣くとなかなか離れようとしない。
「ん」
今もこうやって頭を差し出してくる、昔からこういう時は撫でろという意思表示なのだ。
言った手前頭二手を置きなで始める。
暫くそうしているとアンジェが動く。
「ルイス~おちついた?」
ものっすごい笑顔にルイスもちょっと赤くなる、俺は最初から恥ずかしくて赤面してるよ。
「まだ、それよりアンジェ、なによそのいいもの見つけたって笑顔は、気味悪い。」
こいつ、皇女様相手に散々な言い草だな、不敬で捕まらないといいんだけど。
「あー!ひどい!兄弟で仲がいいなって微笑ましく思ってるだけなのに!」
およよよよと泣き真似をするアンジェにしらーっとした目線を送るルイス。
「てい!」
「いた!」
「天罰じゃ~!」
「うぅ~~ひどい!馬鹿になったらどうするのよ!。」
「アンジェは最初からおばかでしょ!」
「ああ~!ひどい!ロイド様!ルイスが酷いです!」
「ひどくないもん!からかうアンジェが悪い!」
「傷つきました!この痛みは生きるのが辛いです!ロイド様に癒してもらいます!」
そうして頭を出してくるアンジェ、どうしろと…
結局妹達の仲の良い掛け合いの末右手でルイス、左手でアンジェの頭を撫でることになった。
どうしてこうなった…
*勝手に動いて脱線していく。
話をすすめてくれえええええOrz
お読み頂きありがとうございます。
最後の掛け合いは悪ふざけが過ぎますが、シスコンで妹絡み限定で流されてしまうへたれな主人公はお決まりかと思いまして、反省はしているが後悔はしていない!
ルイスに義妹属性を後付けしたくなってきました…