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 国境の町を出発し王都に馬車を走らせる。


 アンジェ姫とルイスは体調が悪そうにしていたが、急いで欲しいと要望されたので馬の許す限りの速度で。


 とはいえ、流石にそれでは身体がもたないだろう事は予想に難くないので補助スキルを発動する。


 体力の向上と回復力の向上、ダメージの肩代わりといった効果がある。


 このうち前二つは自分にかけるものであるが、ダメージの肩代わり、これで移動の衝撃で蓄積されるダメージを肩代わりする。


 その程度を3人分なら俺には意味が無いからな。


 馬には強壮効果のある飼料と体力向上の馬具を、馬車自体も魔道具で軽量化の効果がある。


 そして車中の二人にも。


 「すぅ…」

 

 「むにゃむにゃ…」


 眠りに誘う香を馬車の中に炊いておいた。


 恐らく襲撃が起きる前からかなり消耗していたのだろう。


 そこに同行してくれた仲間との別れ。


 それでも使命のために前に進む、相当心身に堪えているだろう。


 気丈なものだが、見ている方が辛くなってくるのでこうさせてもらった。


 元より今彼女達が出来る事は他には無いからな、感情は尊いが、この後の為に心を鬼にして合理的にさせてもらった。


 しかしあのルイスがなぁ、成長したんだな。


 そう思いながら馬車を走らせる。


 途中ローランド側の関所に残してきた彼女達の迎えを頼みその後はひたすら進む。


 そして3日後、俺たちは王都に辿りつくことになる。


 途中起きた二人に問い詰められたらつい本当の事を言ってしまったが、まぁ問題ないだろう。


 思い切り不満を表明されて覚えときなさいと言われたが気にしない、気にしない…気にしなくてもいいよな?


 そんな事がありながら馬車の旅は順調に進み終わりを告げる。




「ほら、王都についたぞ。」


 御者席から車内の二人に呼びかける。


 向こうの国境を出てから強制的に休ませた効果か、顔色はなんとか普通と言える程度まで回復している。


 本当は宿で暫く療養させたいのだが、そうもいかないので仕方が無い。


 通常の街門とは別に作られた特別な門で手続きを行い王都に入った後はまっすぐに王城を目指す。


 門の騎士には怪訝な顔で見られたが。


 出て行った時に居なかった男がいて供が殆どいなくなっていれば当然か。


 そう思いながら馬車を進ませる、途中あちこちに人が張り付きだしたが、この動きは近衛隊か。


 まぁ害はないからいいか、アンジェの護衛だろ。


 そうして街抜け城門にたどり着く。


 「止まれ!通行証を確認する!」


 守衛の兵士の言葉を聞いて車室をノックして声をかける。


 「通行証もってるか?」


 「もっていません、私が顔を出しますね。」


 というアンジェの言葉に馬車の後ろにまわる。


 「あ、私もおりる!」


 と言う声が聞こえて来るが、ルイスなら1人で下りるだろ。


 そう思ってアンジェの降車に手を貸す


「ありがとうございます。」


 降りきったアンジェに笑顔で礼を言われる、流石お姫さま、こういうところは本当に絵になるな。


 と思っていたところで


「とーう!」


 ルイスが飛び降りる。


 おい、こっちに飛んでくるな、重いだろ!


 といったら面倒くさいので心の中でだけ抗議しておく。


「おい、危ないだろ、飛び降りるなよ。」


 訂正、違う方向で叱っておく。


「お兄ちゃんだから大丈夫!」


 悪びれないで楽しそうで、うん、可愛いので何も言えん。


「本当に仲がいいですね。…次は私もそうしましょう」


 笑顔で言うアンジェ、最後はボソっと言われたので聞き取れなかったんだが、非常に不穏な言葉が聞こえた気がするぞ。


「早く済ませてしまいましょう。」


 さらっと切り替えて衛兵に声をかけるアンジェ。


 その後は話が早いもので、アンジェが衛兵に話しかける前に執事の老年の紳士が内側から門を開けて衛兵に通すようににこやかに告げてアンジェに跪く。


 その時点で衛兵さん驚愕なのだがその中にアンジェ付きの使用人さんたちが列を作って頭を下げて列を作っていたのだから泡食ってたから気の毒であった。


 まぁ皇族のお忍び任務なんて滅多に無いから仕方ないと同情しておこう。


 その後はトントン拍子で謁見まで進む。


 相当任務の重要性が高かったのだろう、街に入った時点で護衛があれだけついてくるくらいだからな。


 そう納得して謁見に臨んだ。


「面をあげよ。」


 顔をあげると、壮年の偉丈夫が玉座に鎮座していた。


「アンジェリーナ、まずは任務ご苦労であった、仲間を失いながらもよくぞ果たしてくれた、報告を頼めるか。」


「はい、陛下、それでは報告致します。」


 そうして道中の報告を行う、隣国に行き、ユニコーンの鬣を採取し、帰還の途につく。


 その途中で山賊に襲われ仲間を失い自らも危機に陥る。


 そこを辛くも潜り抜け国境の街にたどり着くが、その時の負傷で仲間も脱落。


 冒険者ギルドに犠牲者の収容を依頼し、残してきた仲間にその後を任せローランド側の国境で迎えに行くように国境軍に依頼して帰還した。


 纏めるとこういう事になるが、途中皇帝陛下の質問が入りそれに答えて報告が終わる。


「よく分かった、皇族の責務をよく果たしてくれた。報酬として予算を組んでおる、よく考えて使うがよい。」


 皇帝の言葉にアンジェは跪き礼を言う。


「次に聖女ルイスよ、国難を救う為に危険に飛び込んでくれた事、礼を言う、報酬と勲章を用意しておるので受け取って欲しい。」


 ルイスも跪き礼を言う。


「最後にS級冒険者ロイドよ、よくぞ娘と聖女を救ってくれた、そなたのその活躍が国を救う事に繋がろう、褒美をとらす、何か望むものはあるか?…言っておくが娘はやらんからな。」


 最後に何か聞こえたような気がするし宰相もちょっと苦笑いしているが聞かなかったことにして…


「それでは明暗の森への入場許可と採集許可、工房の使用許可を頂きたく存じます。」


 王家直轄地、明暗の森、年中暗闇に包まれた闇の森と年中光の絶えない光の森と呼ばれる森が並び立ち所によっては混ざり合う異質な森である。


 そこの植生は特徴的であり、貴重な植物が多数存在する、しかしその分異質な魔物が生息し、A級未満では入ってから半日しないうちに骸に変る、そういう場所であり


「ほう、龍の住むというあの森か、よかろう、して何が目的だ?」


 皇帝の言葉の通りSSS級に至る者もいる龍の生息地とも言われている。


「聖龍の鱗」


 俺の言葉に謁見の間には静寂が訪れた。

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