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 馬車を走らせること数時間、日が沈む前に国境の町に到着して達磨にした山賊の頭目を引き渡す。


 通じていたのが誰かという疑問はあるが、恐らく分からないだろう、用心深いようで使い魔の目はぶちかました時についでに落としておいたが、気休めにしかならないだろう。

 

 国境を動く者に対する妨害か、アンジェ姫と聖女であるユリスを狙ったのか、どちらにしろ落ち着いたら本腰を入れて調査したほうがいいのかもしれない。


 町門で警備隊に事情を説明している間に姫様達にはギルドに行ってもらう。


 残してこざるを得なかった護衛の亡骸の収容を依頼しなければならないからだ。


 その際ルイスに言伝と共に皮袋を渡す。


 本当は俺が行ったほうがいいのだが、こちらの対応も必要であるからだ。


 いくら夜営用のテントを補強してそこに安置しているとはいえ、長い時間をかけるのは危険があるうえに忍びないのだ。


 それに気がかりもあるからな。


 そうして一行を先行させて事情聴取に臨んだ。




 事情聴取が終わったのは日が暮れて少しした頃だった。


 ギルドカードが担保してくれる信用のおかげでかなり楽に進んだのだが、事態が事態な為少し手間取ってしまった。


 幸いな事に先行させた一行はすぐに見つかったが頭を抱えた。


 冒険者ギルドで依頼を出した後に併設されている宿を取り、食事を注文したところだったようだが、ギルドで見馴れない女だけの集団でいたのだ、なるかもしれないと思っていたのだが本当にならなくてもいいだろう。


 平たく言うと馬鹿共にナンパされていたのだ。


 ガラの悪い男の5人PTにテーブル前に立たれて困る姫様とルイス。


 その間に立ち塞がる護衛の3人娘、顔色悪いし立ち姿がちょっと怪しいな。


 男達もちょっとイラついているようで拙いな。

 

 足早に近付くがその間に先頭にいるスキンヘッドの男がいらつきが限界を超えたのか手を伸ばす。


 当然護衛の先頭にいるアイラはその手を弾こうとするが逆にふら付いて押されてしまいルイスに受け止められる。


 その様子に調子に乗った男が手を伸ばし、残ったリーンとローラの顔が強張る。


 その顔を見て喜悦に染まるスキンヘッド、しかし次の瞬間その顔は苦痛に歪む。


「俺の連れに何か?」


 ガッチリとアイアンクローしているので何かもクソもないのだが、見せしめの為にキッチリ〆てやるか。


「あが!?でめえ、なにもあばばばば」


「人の妹に嫌がらせする愚か者に教育してやっているだけだが?」


 喚く男を更に締め上げる。


「綺麗な女性を口説きたくなるのは分かるが、力尽くでやろうという奴等がどうなるかしってるか?」


 そう言って締め上げている手を持ち上げる、男の足は地面を離れる。


 もがき暴れるが力を緩めるようなものでもない。


「みしみしいってるのが聞こえるな?もう少しだ。」


 そう言って更に締め上げる、男は顔を青くして暴れるが外すわけもない。


「ほうら、いくぞ?3.2.1」


 そういって0にあわせて逆の手で小手を叩いて衝撃を与えると抵抗が収まる。


「気絶したか、情けないテンプレだ、ほら、このゴミをもってさっさと消えろ。」


 唖然として身動きを取れない仲間達に放り投げる。


 吞まれている奴等は反応しきれず一緒に吹っ飛び、周りからは笑い声が起こる。


「お、おぼえてやがれええええ」


 捨て台詞と共に逃げていくチンピラを無視して席に座る。


「遅くなってすまない、面倒をかけた。」


 そういって謝るが反応がない、顔をあげてみると5人は呆気にとられて表情がなくなっていた。


「お兄ちゃん、王子様じゃん・・・」


 その言葉に首を縦に振る4人に頭が痛い…ってあんた皇女様じゃないか!!!






 料理を注文して料理を食べて話し合いを進めた結果は護衛騎士3人はこの町に残り、俺がアンジェとルイスの護衛をする事になった。


 この決定に3人は反対したがそれは却下させてもらった。


 というのもこの3人、平然としているように見えるが心身共にボロボロでいつ倒れてもおかしくない状況なのである。


 部屋に入るとそれを裏付けるように3人はベッドの上で動けなくなる。


 翌朝運ばれた診療所では、あれだけ血を失ってよく今までもったものだと感心されたものだ。

 

それだけ頑張ったという事だろう。


 ただその代償は小さい物ではなく、力を使い果たし、日常生活はともかく騎士は続ける事は不可能、そう診断された三人は泣き崩れる。


 命があっただけ運が良かった、今後彼女達は別の道を見つけなければならない。


 しばらく療養して遺体収容の確認と搬送の監督をしながら帰国する。


 アンジェ姫はそれを最後の任務として彼女達に命じる、迎えを遣すのでその者たちと共に帰ってきて欲しい、彼女達は悔しさを堪えながら拝命するのだった。


 余談ではあるが、俺達がこの町に着いた翌日に受付嬢の監督の下、遺体の収容が行われた。


 というのも受付嬢になるには様々な相手への対応が必要な為彼女達は総じてCランク程度の実力を身につけさせられる事になる。


 その際現場の冒険者と交流する事が多いのだが、その性質上女性の冒険者と交流する事が多い。


 従って彼女達は割りの良い依頼はそういう相手か、目をかけている相手に流す事が多い。


 この場合死者の性別の都合上前者である。


 これが良い依頼にならないと、誰がいつ受けるか分からなくなる。


 そうなると遺品も満足に帰ってくることはない。


 小さいながらも妹達の為に力を尽くしてくれた感謝の気持ちである。


 収容に向かった二日後に帰還した仲間達への扱いは丁重なもので、3人はギルドへの感謝を胸に帰還する事になる。


 迎えに来た隊の者達もその扱いに感謝し、それは後に両国を繋ぐ橋渡しになることになる。


 それはまた別のお話。

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