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野獣のような叫びの元を見るとそこには赤い光が4つ。
その場でじたばたと手足を動かすので石造りの床を両の手と足が激しく叩き、破片と埃が舞い上がる。
舞い上がるがその背中を押さえ、地面に押さえつけるのは彼らの数倍はある二組の手。
一人はリンの部分解除による巨大な聖龍の右手によって。
もう一人は完全に聖獣に戻ったクウの前足によって押さえつけられる事によって自由を奪われている。
それでも自由を求めて動き出す二人は暴れ、地面に手足を打ちつけ破壊を行う。
「お兄ちゃん!」
その言葉とともにルイスが駆け寄ってくる。
「外で大きな音が聞こえたと思ったら、奥が赤く光って、突然飛び出してきたの、そしたらこの子達が動いてくれて、こうなったの」
「ああ、そうだろうな、しかしどこから入った、外から入られたとは思えないぞ」
「それが……」
「この子達をお助けください!」
言い澱むルイスの代わりに奥から声が響く。
「シスター……」
「あの子達は炊き出しの時に保護した身寄りのない子達なのです!北から何日も歩いてやってきたって、そんなあの子達がこんな事……」
崩れ落ちるシスターを支えるルイス。
「お兄ちゃん……」
どうしたらいいか分からず縋る様な目に首を縦に振る。
「シスター、聞かせてくれ、この子達の様子はどうだった?ちゃんと泣いて笑って過ごしていたのか、それとも何かに怯えるようにしていたか、憔悴していたのか。答えてくれ」
「この子達は、炊き出しを受け取る時にはちょっとだけ笑顔を見せていました、でもその後は、ずっと周りをビクビクと見ながら二人寄り添っていて、ここに連れてくる時も皆と距離を取って、二人で怯えているように過ごしていました。でも、ちゃんと言葉も通じるし、お礼も言えるいい子達なんです。この子達がこんな姿になるなんて……」
暴れる姿に顔を涙に濡らすシスターの訴えを聞いて、過去に聞いた知識を思い出す。
「ルイス、聖水を持ってきてくれ」
「え?聖水?」
「まだ間に合うかもしれない!出来るだけ質のいいのを、早く!」
「わかった!」
そう言って駆け出すルイスを見送りながらリン達を見る。
「もう少しそのまま押さえていてくれ」
「「うん、わかった!」」
その言葉を聞きながら準備を始める。
魔法袋の中から魔道具を作る時に使うインクを取り出して円を描き、魔法円を描いていく。
その効果は増幅。
この後に使う術式の効果を最大まで高める為のものである。
そして魔法袋の中から聖龍であるレイラから貰った鱗と爪、聖獣天の爪を取り出し、砕いて粉末にしていく。
「お兄ちゃん持ってきた!」
その声と共にルイスが戻ってきた。
「そのまま持っていてくれ」
そう言って俺は魔法袋から眠り茸の粉末を取り出し子供達に嗅がせる。
そして暴れる力が弱まり、眠りに落ちた所にリンに声を掛ける。
「リン、先にこの子達をこの魔法陣の上に仰向けに寝かせてくれ!」
「わかった」
その返事と共に抑えていた子供を掴んで魔法陣の上に仰向けに寝かせる。
「そのまま暴れないように押さえていてくれ。」
「ん」
眠っている子供達の様子を確認し、ルイスを呼び寄せる。
「ルイス、その聖水とこの粉末を使って解呪を行ってくれ」
「え!?解呪?」
「ああ、そうだ、生者への吸血鬼化は一種の呪術なんだ、それは身体を少しずつ侵食して徐々に不死者にしていく。聞いた分ではまだこの子達は操るのに最低限必要な所までしか進んでいない。侵食は戻らないが、これならまだ戻ってこれる。できるか?」
「わかった、やってみる!」
そう言ってルイスは子供達の前に立つ。
ルイスが聖句を唱え始める。
その瞬間、空気が変わる。
暗く澱んだ邪気が祓われ、聖気が辺りに広がっていく。
聖水の瓶を開け、片手に聖水、片手に聖気に満ちた粉末を手にしたルイスはそれをリンの聖龍の手の甲の上であわせて伝わせて、子供達に振り掛ける。
聖句とルイスの魔力に反応し、強化された聖水は子供達の口に向かう。
そしてそれらは口を伝って体内へと届き、体内を奔る。
苦悶の表情を浮かべる子供達の身体は聖水とルイスの魔力で明減し、苦しげな声が漏れる。
ルイスも額に球のような汗を浮かべ、力を振り絞る。
そして皆が見守る中、その変化は唐突に起こる。
子供達が動きを止める。
集中しているルイスは気がつかないが、その姿を悲痛な表情でじっと見守り続けていたシスターが声を漏らす、その時
「「うばあああぁぁぁあああおおおおぉぉああああああああああああああああああああああああ!!!!」」
子供達の口から黒い何かが勢い良く吐き出される。
聖気に囲まれ行き場の無いその黒い物は教会の天井付近で固まり形を作る。
やがて子供達の口からそれが出なくなった時、地の底を揺るがすような呪詛の念が空気を揺らす。
「くそ、くそ、くそ!この私が、この私があああ!聖女、聖女おおおおおお!!!」
そのおどろおどろしい音と共にそれはルイスに向けて猛然と迫る。
解呪の反動で動けないルイスを守ろうと俺はその間に出て盾を向ける。
そしてそれと激突する、その瞬間
「があああああああああああああああああ!!!」
聖獣の姿になったクウの爪がそれを切り裂く。
「あと少し、あと少しのところで、おのれ聖獣め、この恨み、おぼ!?!?」
切り裂かれたそれは恨みの言葉を残して薄れていくがその言葉を最後まで発する事は出来ずに光に飲まれる。
「クウは私の、絶対にやらせない」
子供から手を離したリンが聖気を纏った爪で吹き飛ばしたのだった。




