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 帰ると決めたが、故郷の村は国境を隔て、母国の王都を挟んで反対側である。

 普通の人が徒歩で進めば半年近くかかる道のりではある。

 もちろん冒険者は色々人外染みているので半分以下の日程で進むのであるが。

 そんな道中、行商の馬車に乗せてもらったり、折悪く馬車がいないところは徒歩で進む。

 半月程進んでもうすぐ国境というところを歩いている時に異変が起こる。


 「血の臭い…?」

 

 微かに風に乗ってくる鉄錆の臭いと甲高い音や人の叫ぶ声、木の倒れる音。


 状況は分からないが、放っておくわけにも行かずに歩を進めるとそこは地獄だった。


 箱馬車の周りには血にまみれた騎士と思しき骸が無残な姿を晒し馬車の後部に粗野な格好の男達が群がりそれを防ぐ為に円陣を組む騎士が3人、その後ろに魔法を詠唱しているだろう魔術師と中から弓を放つフードの人物。


 多勢に無勢で既に騎士達の鎧は朱に染められ、致命傷を負っていると思しき者もいる。


 今も1人の騎士が左腕に腹に矢が刺さり膝を突き群がられる押し倒される。


 そして悲痛な叫びがフードの女性から上がり群がった男達の中心から吹き出る豪炎。


 火達磨になった賊が転げ回る中親指を立てて力尽きる騎士。


 その姿に怯む山賊達に突撃を敢行しようとする騎士達を手斧が襲う。


 その斧は騎士の手前の山賊の頭をかち割り騎士の出鼻を挫く。


「騎士二人になにびびってやがんだ!次びびった奴もああなると思えや!ああ!」


 手下の命などどうでもいいとばかりに叫ぶ頭目の恐ろしさに山賊達はいっそう苛烈な攻撃を行い程なく騎士達の限

界も訪れる。


 武器を飛ばされ馬車に叩きつけられる騎士達、そこに巻き込まれた魔術師の少女、その衝撃から立ち上がれず膝をつく騎士達に頭目は下卑た笑みを浮かべて近寄る。


「ざまあねえなぁ!お高く留まった騎士様もこうなっちゃ役に「ぐわぁ!!」ああ!?」


 頭目の男が叫びながら振り向くと、そこにいた筈の手下達は全て血に塗れた骸になり今も1人が血しぶきを上げながら倒れ伏す。

 そうして近づく俺に目を血走らせ唾を飛ばしながら怒号をあげる山賊の頭目にしくじったなと頭を掻きたい衝動に駆られるがそれを我慢する。


「てめえなにもんだ!俺達漆黒の悪夢にこんな事してただで済むとおもってんのか!!」


 漆黒の悪夢、国境付近に現れると言われている大規模な山賊であり、神出鬼没な上旺盛な士気と多彩な人員や魔獣を使役していると言われ、時には領軍を翻弄し敗走させ、時には王族を誘拐する、国軍が来た時には隣国に逃げるという手段で討伐されずに討伐対象として手配されている極悪集団。


 一人一人が最低でもC級、頭目の男に関しては過去にAランクの冒険者だったものが犯罪を犯して山賊に堕ちたという経歴をもち、S級以上推奨の討伐任務も出ている程。


 俺も一度受けた事があるが、見つけられなかった過去があるが、こいつらの罪状を聞く限り見かけたら討伐しようと思っていた。


 一応誘き出す方法は考案されていたのだが、ギルドが出した囮は全てからぶり。


 噂では内通者がいると言われていた奴等だが、この目で見て合点がいったところである。


「なに、目障りなゴミがその辺に散らばっているのが見えたからな、害虫駆除だ、気にするなすぐ終わる。」


 そう言って後ろから切りかかってきた奴を盾のスパイクで即死させると木の上の弓を持った男にダガーを投げてしとめる。


「奇襲するならせめて声くらい消してこい」


 そういいながら歩みを進めながら呆気に取られる中を


「てめえら!」


 盾を前に突き出し


「もっとも」


 剣を後ろに


「この男を」


 身構えた敵に向けて


「お前達では」


 最高の突進力を持つ


「やっちまええええええ!」


 聖盾術を


「何をやっても意味は無い!」


 ぶちかます!





 聖盾術「ぶちかまし」

 闘気を纏い体当たりをぶちかます技、とだけ書けば大したことなく見えるが、その闘気によって速度は劇的に上がり、纏った闘気は術者によって色々な操作を行われる。

 この場合は周りから襲い掛かろうとしていた奴らを切り裂き、貫くように飛ばされて手下の一掃に使われた。

 尚ただの盾術にも同じ名称があるが、この場合ただの体あたりである。


 手下達を進むついでとばかりに始末し頭目に迫る。

 

「なめるなあああああああああああ!!」


 闘気を纏った斧が突進する盾を受け止める。

 

「はっはっは!威勢の割りに大したことないな!」


 流石にAランクとなればこの位は止められるか、だが!


「そうだな、大したことないさ。」


 盾に開けた隙間から頭目の腕に剣を差込み盾を払う。


 血の帯を伸ばしながらたたらを踏む頭目に剣を振り下ろす。


 逆の手の斧を使って防ぐが、それが狙いだ、剣を軸に裏拳の要領で盾のスパイクで肘を貫く。


 衝撃に身体が流れた所に足の腱を突き刺し地面に縫い付ける。


「さて、お前には聞きたい事があるんだが、素直に答えるきはあるか?」


「誰が!さっさと殺せ!」


 やはり素直には吐かないか、それは後でもいいな。


「寝てろ。」


 そう言って後頭部を盾で殴りつけ意識を飛ばす。


 そして馬車を振り返る。


 フードの少女が潰された魔術師の少女を抱き起こしている、その横で生き残った二人が必死に立ち上がり少女二人と俺の間を塞ごうとするが。


「無理はするな、寝ていろ。」


 薬瓶を口に突っ込み流し込む。


 たまらず崩れ落ちる二人の鎧を掴み寝かせる。


「アイラ!リーン!」


 目を見開き驚きの声を上げる少女、慌てたようでフードが落ちる。


 その言葉に目の端にピクリと動く者が写る。


「生きていたのか、気休めだが、運がよければ助かるかもな。」


 そう言って薬瓶の中身を口の中に流し込む。


 暴れる力も無い様で呻く様に声を上げるとその騎士の身体から力が抜ける。


「なに、不味くて気絶しただけだ、運がよければそのうち起きる、死ぬよりましだろう?」


 何をしたのかと言われれば治療ではあるのだが、あのポーション、効き目はいいんだけど不味すぎてなぁ…


 自分で使うのは躊躇してたんだよな、眠くもなるしこんな時じゃないと使えないけど、妹のお手製だし捨てるわけにもいかないし…


 後ずさるように馬車に身を寄せる少女、胸元には綺麗なペンダントが光っている。

 

 この顔であのペンダント、間違いないよな。


「怯えさせてしまったようですまない、俺の名はロイド、冒険者だ。事情を聞かせてくれないか?姫様。」


 そう言って膝を突いて少女が落ち着くまで待った。

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