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 帰路に着いた俺達は山道を抜けて街道まで戻ってきていた。


 ここから歩いて王都まで向かう。


 途中乗り合い馬車が通りかかったら乗せてもらいたいところだが、そう上手くいくかはわからない。


 歩きながら戯れるリンとクウを見ながら通ってきた山道を思い出す。






 聖霊の村を出てから半日程歩いたところでクウが何事かリンに話しかける。


「ロイドお兄さん、ここでクウが苛められてたの?」


 話しを聞いて光の消えた瞳でリンに話しかけられる。


「お、おう、怪我しながらも勇敢にクウは戦ってたぞ?」


「それでも、こんな可愛いクウを相手に3人でかかって薬までもって……許さない」


 静かな声だが後ろに般若でも立っているかのような迫力で背景が歪み気のせいか空気が鳴っているような気がする。


「次そんな奴等がいたら……こうよ」


 リンが右腕を振り下ろす。


 途端轟音が鳴り響き地響きが起こり森の木々を揺らす。


 振り下ろされた先には小さいながらも30センチは下らない龍の拳が振り下ろされクレーターを作っている。


 クウがびっくりしてしがみ付いてきたが、そのままリンの頭に掌を置く。


「ほら、おちつけ、クウも驚いてるぞ」


「あ……ごめんなさい」


 我に返ったリンは怒気を霧散させて今度はしょんぼりと謝る。


「俺は気にしてないし、クウも気にしてないよな?腹立たしいのは分かるけど、今度からはコントロールしような」


「うん、僕も気にしてないよ、ちょっとびっくりしたけど」


「えっと、ごめんなさい、今度から気をつけるね」


「うん、怒ってくれてありがとう」


 クウのはにかむような笑顔を見てリンが抱きついて幸せそうな顔をしていたのが印象的だったが、リンの作ったクレーターを見て俺は思った。


 子供でも聖龍は聖龍だな、AAAランク程度は軽く見積もってもいいな、あの親にしてこの子ありだな。


 後に知ることになるのだが、リンは優秀な聖龍の中でも飛び切りの神童であったのだが、比較対象がないのでそれを知るのはもっと先の事になる。


 そんな事があったのが半日前。


 目の前の和やかな光景を見ながら歩を進める。


 暫く歩くと日が暮れたので野営をし、日が明けたら皇都に向かう。


 昼前には到着して街に入る手続きを始める、なんか視線が刺々しい気がするが何かあったか?


 とりあえず手続きが終わり、街門を通る、そうしたところで騒がしい人物が現れる。


「お兄ちゃんお帰りなさい!」


 街門を入って早々ルイスが現れた。


「おまえ、今帰ってきたばかりなのになんでさも当たり前のように現れるんだ」


「そんなの、警備の人にお兄ちゃんが帰ってきたら教会に報せるようにって頼んでおいたのよ!聖女の大事な家族だって言ったら簡単に教えてくれたわよ」


 そういって腰に手をやって胸を張ってドヤ顔で言うルイス、いやそれ、職権濫用じゃね?って聖女は役職じゃないのか?まぁいいか。


 いきなりの登場に小さな二人は後ろに隠れてしまったのだが。


「それはそうと、そこの可愛い子達はどうしたの?まさか隠し子!?」


「違う、この子達はちょっと訳あって預かってきただけだ。」


「本当?ねぇ、お兄ちゃんに変な事されてない?」


 そういってリンに視線を合わせて笑いかけるルイス


「私はルイス、お兄ちゃんの妹で、一応聖女のお役目をもらってるのよ、お名前教えてもらえるかな?」


「えっと、ロイドお兄さんの妹さん?私はリンでこっちはクウ、よろしくお願いします、ルイスお姉さん」


 そう消え入りそうな声で返すリンを見たルイスが次に取った行動は。


「かわいいいいいいいいいいい!何この可愛さ!それにお姉さん?いいわ!よろしくね!リンちゃんクウちゃん!」


 そういって二人に抱きついて頬ずりを始めたのだった。


 二人が俺にくっついてるから、はたから見たら非常に問題のある絵面で周囲の視線がとても痛いのだが……


「ルイス、往来の迷惑になるからやめろ、それとこの子達の事を話したいから落ち着ける場所に行きたい。」


「うん!案内するわ!ついてきて!」


 そう言って正気に戻ったルイスの案内で街を進む、その際ちゃっかりと二人の手を引いているのは、うん、子供好きだから仕方がないな。






「ここなら大丈夫よ、さ!話して頂戴!」


 そう言うルイスに連れてこられたのは教会の礼拝堂の一つで、祝福や式典等でしか使わない場所らしい。


 なんでそんなところ使うかって言えば、聖女は割りと自由に使っていいらしい。ってどういう規定だよ。


 そんな訳で勝手に立ち入る事は許されないのがこの礼拝堂である。


 それはいいのであるが、それとは別にもう一つ問題があって。


「それはいいんだが、なんでアンジェがいるんだ?」


 ルイスの横にワクワクと言葉に出しそうなくらいワクワクした第5皇女のアンジェがいるのでそれを聞く。


「えっと、お邪魔でした?」


「いいのいいの!私が呼んだんだから!文句ある?アンジェだからいいでしょ!」


 おずおずとしたアンジェと堂々と言い放つルイス、まぁ文句はないんだけど。


「ルイスが呼んだんならいいか、それじゃ始めるぞ」


 そういって俺は皇都を発ってからのことを話し始める。


 その間ルイスの視線はこっちにあるんだが、チラチラとクウを抱っこしているリンのほうに向かっていたり。


 アンジェは憤ったり驚いたり怖がったり、表情豊かだなぁ。


 そんなこんなで話し終える。


「と言うわけなんだが、ルイス、ちゃんと聞いていたか?」


「き、きいていたわよ!」


「その割にはちびっ子達に目線が釘付けだったよな?」


 ジト目で見ると拙いとばかりに


「そ、それは……」


 と口が止まるルイス、もう少し隠せよ……


「まぁちゃんと聞いていたならいいけど、頼めるか?」


 溜息が出るとはこのことだな、仕方ないか、そう思って言ったのだが。


「それはもちろん!全身全霊を以って祝福するわよ!あ、お兄ちゃんとアンジェも一緒にするわね!」


「「え!?」」


 流れのついでとばかりに放り込まれた爆弾に驚いた声を上げる俺とアンジェ。


「ルイスそれは流石に……」


「そんないきなりじゃ気持ちの準備が!」


 つい口から言葉が漏れる。


「「え?」」


 それにお見合いして赤面してしまう、そりゃそうだろ。


 本来男女を共に祝福というのは成人の時に集団で行われるか、婚姻に関係する時、家族同士しかないのである。


 それを分からない者は皇国でも本当に田舎の田舎であり、ここにいる者は全員分かっているので確実にルイスは確信犯なのだが、問題はそこじゃなく。


「あれ~アンジェ~?」


「いや、あの、これは……」


 ニヤニヤと笑いながらアンジェに問いかけるルイスにたじたじになるアンジェ。


 するとそこに更に爆弾を落とす声が放たれる。


「えっと、私も皆に加護の付与する」


「僕も、する」


 とちびっ子二人が申し出る。


 基本的に加護もそういう関係じゃないと一緒に受けないのだが、この二人の表情を見るとそれは知らないんだろうな。


 きょとんとした不思議そうな顔で俺達をみている。


 対照的にその言葉を聞いたアンジェは当然、ルイスも顔を赤くしている。


 こいつ人にするのは好きだけどされるの慣れてないから弱いんだよなぁ。


 そう思いながら熱い顔を自覚しながらどう収めるかを考えるのだった。

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