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 冒険者ギルドローランド皇国皇都支部


「おい!ギルドマスターを出せ!」


 入って開口一番の言葉がこれである。


 対応する事になった新人受付嬢は面食らって目を白黒させている。


「なんだ?ここのギルドは取り継ぎもまともに出来ねえのか?所詮あの無能の国のギルドか、揃いも揃って無能揃いとはお笑いだな」


 両手を広げ哄笑する男にする男に萎縮して涙目になる受付の若い女の子。


 冒険者ギルドの依頼は荒事になる事が多い。


 そうなると依頼を受けるのは屈強な男の割合が多くなる。


 そういう冒険者のストレス軽減の為に受付嬢は容姿の整った女性が多い。


 この受付嬢もその例に漏れず加えて小柄で頑張って動くので冒険者ギルドのアイドル且つマスコット的な存在として男女問わず人気が高い、本人は知らない事だが。


 そんな愛されている子が虐められているというのだからギルド内は殺気立つ。


「所属する奴等も腰抜けばかりか、つまらん」


 吐き捨てる男に


「野郎……」


「好き勝手やりやがって」


「もう許さねぇ」


殺気だっていた男達は立ち上がり拳を握る。


「はっ!ゴミがほざ「やめねえかおめえら!!」」


 一触即発の状態に響く野太い声。


「止めるなマスター!」


「そうだ!俺らはこいつらを「無駄だって言ってんだ!」」


「なんでだよ!!」


 今度はその男に殺気が向かう。


「よくきけ!こいつらはSSSランクの疾風の英雄だ、おめえらが束になっても無駄に怪我するだけだ」


「でもよマスター」


「そうだぜマスターこいつらは」


「受付のナディちゃんを」


「あーわかったわかった、ナディの事は後でどうにかするから心配すんな、だからおめえらはそこで飲んどけ、今日は奢りだ」


「あーもう!わかったよ!自棄酒だお前ら飲むぞ!のまねえとやってられねえ!」


「「おう」」


 そういって男達は戻って酒を飲み始める。


「またせたな、ギルドマスター室まできてくれ」


 仏頂面のマスターを見たゲラートの顔は愉悦に歪んでいた。










「これが依頼の内容だ、確認してくれ」


「なるほど、つまりは皇軍がゾンビ共の討伐に出るからそれに合わせて親玉を叩けと、それ以外は自由にさせてもらえるんだよな?」


「ああ、そういう事で話がきている。」


 極めて無表情に感情を殺して淡々と作業を進めるギルドマスター。


「だとしてもこれじゃだめだ」


 鼻で笑い吐き捨てるゲラート。


「このランクの指名依頼ならこれが適正報酬、むしろ少し高い方だが?」


「わかっちゃねーな、俺らは最強のSSSランクで隣のハイランド帝国を拠点にしてる、上に依頼したいっていう奴等が多くて忙しいんだよ、わかるか?」


「それはそうだろうな」


「そう!そうなんだよ!皇宮からの指名依頼っていうんできてやったのにそれに対してこの報酬?適正?そうじゃねえんだよ、気持ちが足りねえっていってんだ!」


「そういわれてもな、上申はしておくが、どうなってもしらんぞ?」


「はっは!それでいい!どうせ1国の皇室ごときじゃ俺達をどうにかなんてできないからな!せいぜい俺達のご機嫌を損ねないことだ」


「善処する」


「それじゃ話は終わりだ、せいぜい頑張ることだな」


 そう言ってゲラート達はギルドマスターの執務室を後にする。


「以前はあんなパーティじゃなかったんだがなぁ、はぁ、ナディのケアといい頭が痛い、とりあえず皇宮に報告するか。」


 そう言って席を立ち部屋を後にする。


「それにしても、話に聞いていたイメージとは全く違ったな、その事も含めて対応しないといけないか、はぁ、仕事ばかり増えて頭が痛い。」


 ギルドマスターは知らない、報酬の多寡しかみてない彼らは面倒と言って交渉ごとは全て他人任せにしていた事を。


 その人物は追い出されていて、既に大きな成果を挙げて皇宮に認められている事を。


 それを知るのはもう少し先の事。






「おーいマスター!こっち着て一緒に飲もうぜー!」


「そーそー!一番高い酒飲んでるから一緒にのもうぜー!」


「ナディちゃんも、飲もうえーーー」


「仕事中なのでだめです!」


「おまえらあああああ」


「調子にのりすぎだ!」


「がっ!?」


「だっ!?」


「いでっ!?」


 何があったかはご想像にお任せするが、倒れこんださっきの男達を見て頭を抱えるギルドマスター


「ったく。ナディ、こいつら宿の部屋に放り込んどいてくれ、それ終わったら帰っていいぞ、今日の給金倍にしとくからそれで気晴らししてこい」


「は、はい!」


「多少荒っぽくてもいいからな、変な事しようとしてきたら叩きのめしても構わん」


「あ、あははは」


 ごまかし笑いを顔に貼りつけて片手で男達を引き摺り宿のスペースに向かうナディ、一人の襟首を片手で掴んで他二人を乗せてる形なので一番下の奴の明日は悲鳴から始まるだろう。


「ったく、これ経費で落ちるかな……」


「半分は持ってくださいね?」


 頭を抱えるギルドマスターの後ろから声がかけられる。


「うわ!?ライド、お前いたのか!?」


 副ギルドマスターのライドである。


「いたのかじゃないですよ、それで?」


「ああ、ありゃだめだ、詳しくはこれに書いてある、頼んだぞ」


 そういっていつの間にかしたためた書状を渡す。


「分かりました、今から行ってきます」


「ああ、たのむ、それはそうとして、やっぱりだめか?」


「はい、マスターも半分もってくださいね?」


「ああもう、わかったよ、しかたねーな!それじゃ、頼んだぞ!」


「はい!」


 それを見送るマスターの背中には哀愁が漂っていた。


「あの、マスター、帰る前にさっき来た方と会って貰えますか?ちょっと他の人じゃ手に負えなさそうなので待って貰ってるので……」


 戻って来たナディの声にギルドマスターは天を仰ぐのだった。

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