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「それじゃ、ロイド君、リンの事おねがいね」


 突然の事に呆気に取られてしまう。


「ちょっと待て、何がそれじゃあなんだよ!」


 我に返って問いただすが、


「いや、ほら、リンにも世界を見せてあげたいじゃない?私はここを動けないし、聖女のお兄ちゃんのロイド君なら安心かなーって、仮にも私に土をつけた実力もあるし」


「いやいやいや、そういう問題じゃないでしょ!聖龍のリトルドラゴンなんてどれだけ危ない奴等が沸いてくる事か!」


「えー、でもリンもいきたいよね?」


「うん、美味しいものいっぱい食べたい、クウも、ね?」


「えっと、うん」


「いや、でもなぁ」


「それに聖女の妹ちゃんに祝福してもらえばこの子達も幸せに暮らせるし」


「う……」


「それともロイド君はこの子達が不幸になってもいいの?」


「そんなことは……」


「なら、おねがいね!」


「おねがい」


「……はい」


 とこんな感じで押し切られてしまって旅の帰りの同行者が増えました。


 子供使うのは卑怯すぎるって!子供好きの俺がこんな可愛い子達を盾にされたら断れないって!


 ましてや素材もらったりする相手からのお願いだとね……


 しょうがないか。


 溜息をつきながら喜ぶ3人を見て思う。


 主に喜んでるのは行かないレイラなんだけどリンもふんす!って感じに喜んで可愛いというかなんというか、クウは笑顔で抱き上げられてるし。


 ちゃんと無事に連れ帰ってきてやらなきゃな。


 和気藹々と食事は進み、夜は更けていく。


 そして子供達が眠たそうにしてきて、あくびをしたところでお開きになる。


 子供達を連れたレイラを見送り、一人テントで横になる。


 その日見た夢は忘れたけど、何か懐かしい夢をみた、そんな気がした夜だった。






 翌朝、朝食を食べてここに来た目的の素材を分けてもらう。


 レイラに礼を言うと


「旦那におしおきした時に抜けたり折れたりしたものだから気にしなくていいんだけどね」


 といってコロコロ笑っていた。


 その姿に心の中に未だ見ぬ旦那さんに合掌するのだった。




 帰り道は往路とは打って変って一息の間に終わる事になった。


(そら)のところまで送るわよ、久しぶりに顔もみたいし」


 といったレイラが背中に乗せて聖霊の村まで飛んでくれたからである。


「森を通ると木に当たるし、変なのに絡まれるから面倒なのよね、今度来る時は迎えにきてあげるから妹ちゃんもつれてきてね。」


 と気軽にそう言ってくれるが、この村の様子を見るとそうもいかないんだよな。


 村は騒然としていた。


 そりゃそうだろう、20メートルはあろうかという龍が空を飛んで村に来たのだから。


 右へ左への大騒ぎになりかけたところで聖獣が歩み寄って仲良いアピールをしなかったら大混乱になっていただろう。


「久しぶりね、天」


「久しぶりだな、レイラ」


「クウちゃん、可愛く育ったじゃない」 


「そうだろうそうだろう!私の産んだ子だからな!可愛くないはずがない!」


「貴方の子だって信じられない位可愛いわよ?」


「む、それは聞き捨てならん、私の息子だから可愛いのだぞ?」


「まぁそういう事にしておいてあげるわ」


「そういう事じゃなく真実だ!とそれはそうとそこの子はおぬしの?」


「ええそうよ!リン、挨拶しなさい!」


 とそういう風に親ばか同士のじゃれあいが繰り広げられる。


 呆気に取られる村人達と苦笑いする俺という構図だったのだが、それはそんなに長く続かず。


「聖龍様って」


「ああ、聖獣様と同じで優しそうだよな」


「んだんだ、親ばかに悪い奴はいねえべ」


 と村人達は繰り広げられる親ばか論争を暖かく見守るのだった。


「おかあさんたち仲いいね」


「うん、たのしそう」


「クウはたのしい?」


「うん!リンおねえちゃんと一緒はたのしいよ!」


「なら私達も仲良しだね♪」


「うん!」


 じゃれ合う親を見ながら微笑ましい二人だった。





「ん?いいぞ。ロイドと一緒なら滅多な事はあるまい、いってくるといい」


「ありがと、お母さん」


 そう言うクウを優しく撫でる天。


 気持ちよさそうになでられている。


「やったねクウ!」


「うん」


 そういってリンはクウの両手を握って喜びの声を上げる。


 クウも嬉しいけどちょっと恥ずかしいようなそんな表情で大人達を和ませる。


「それじゃロイドよ、手間をかけるが、クウのことも頼むぞ」


「ああ、任せてくれ、無事に連れて帰ってくる」


「礼の代わりに、これをもって行ってくれ」


「これは?」


「尻尾の毛で作った厄避けじゃ、一応魔力タンクの代わりにもなる、役に立ててくれ」


 そう言ってミサンガのようなものが一人でに手首に撒きつく。


「ありがとう、大事に使わせてもらう」


「未熟な息子だが、よろしく頼む」


 その言葉に頷きを返しながら共に拳を合わせる。


 さあ、王都へ帰還だ。








 王都


「さて、今回の依頼は王宮からだったか?」


「そうよ、大規模な魔物の氾濫の恐れがあるってね」


「魔物だあ?雑魚ばかり相手にしてもつまんねーぞ」


「まぁそういうな、楽して稼げる、そう思えば悪くあるまい?」


「まぁそうだけどよぉ」


「うだうだ言ってないでさっさと済ませて帰りましょう。」


 そして波乱の幕が上がることになる。


 国を揺るがす大事件、その発端は今か今かと待ち続けている。


 この先どうなるかは、起きてみてからのお楽しみ。

お読み頂きありがとうございます。

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