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 魔力で身体を強化し、聖龍の攻撃を受ける。


 質量の差が恐ろしいレベルであるので最初から全力で盾を当てていく。


 右の爪の一撃を弾き左を避け、足を殴りつけ後ろに回る。


 そこに尻尾が飛んでくるのでバックステップしながら受けて飛ばされる。


 凄い速度で流れる景色に盾を変形させてスパイクを突きたて減速するが中々止まらず、リングがなくなったところで漸く止まる。


「呆れるほどの馬鹿力だな」


「あら、レディに失礼な方ですね」


「そりゃ失礼」


 そう返しながら走り寄る。


 今度は尻尾の一撃を初手に放たれるが、それを飛び上がってかわしたところに左の裏拳が飛んでくる。


 それを魔力で作った足場を頼りに降下する事で回避して接近するが、右手が迫る。


 掴みあげようとしたその手の平の外に回避し、跳躍して肘を打つ。


 狙ったのは肘の内側の神経の通り道。


 打った瞬間に怯む聖龍、だが怯んだのは一瞬でそのまま攻撃を再開してくる。


 それは分かり切っていた為その一瞬を使って次の仕込みを行う。


 片手に持てる程度のボールをその辺の地面にばら撒いていく。


 ばら撒けるだけばら撒いたら右手にハンマーをもち攻撃を再開する。


 そしてその後の攻撃を全て超近距離で捌いていく。


 右、左、右、左と尻尾を使えない距離での戦闘から更に一歩踏み込む。


 そして真下辺りにたどり着き、足を打つ。右手のハンマーをひたすら叩き込む。


 1発辺りは大した威力ではないのだが、何発も食らうのはさすがに嫌だったのだろう。


 ハンマーを振り下ろした瞬間に足を上げられ空振りしてしまう。


 そして其処を目掛けて踵を踏み下ろされる。


「地味にいたいのよ!」


 怒りの叫びと共に踏み下ろされた踵を見つめる俺。


 避けれるタイミングではない。


 勝ったと確信して聖龍が油断した時、景色が回った。


 そしてバランスを崩して仰向けに転倒する。


 何が起きたか分からないが、起きないと拙い、そう思って右手を動かす。


「動かない?」


 そう呟いて驚愕したときに両目を塞がれた。


「これで決着ってことでいいよな?」


 聖龍の耳に間近から放たれた言葉が届いたのだった。






 

 模擬戦の後始末を終えて一息つく。


 ばら撒いた球のうち使わずに済んだものの回収と使った後の掃除である。


 自分しか出来ないようにしているので仕方ない。

 

 出来るだけ簡単になるようにしてあるが、それでもやはり面倒な事は間違いない。


 あの瞬間何が起きたかといえば、盾の能力を使って踵の荷重方向をずらして転倒させて、驚いている隙に身体を駆け上って暗幕をかけてやった。


 やったことはそれだけなのだが、その前の仕込みがなければ出来なかった事でもある。


 仕込みが何か、それはトリモチ玉である。


 一つでA級の魔獣の足を止められるものをばら撒いて、仰向けに転倒した衝撃をつかって背中側に無数に貼り付けたのだ。


 反動を使えば恐らく簡単に抜けられるのだが、それが出来ないように全身に貼り付ける。


 こうする事でSS級以上といわれる聖龍の自由を一時的に奪ったのである。


 それでも、落ち着いてしまえば抜ける方法等いくつもあったと思われるが、模擬戦なので大規模な破壊もする気がなかったのだろう。


 あのシチュエーションだから勝ちの一手になったといって過言ではない。


 そう考えればやはり、恐るべき力と言うのが正当な評価だろう。


 あの後かなり怒られたのは勝ち方が勝ち方だから仕方ないか。


 そう思って3人の向かった方を見る。


「べとべとで気持ち悪いからお風呂にいってきます。」


 龍の姿から人に変化しての第一声がそれであった。


 取れるだけ取ったが、取りきれないものもある、なのでそういう気分になるのは自然なことで、入浴しにむかったということである。


 因みに風呂は彼女の趣味で、魔力で沸かすとのことだ。


 聖龍なのに聖属性以外も使える器用さはさすがと言える。


 そんな事を思いながら湯を沸かす。


 袋から調理道具一式を取り出し調理を進める。


 この神殿、魔境の中の聖龍の住処なのだが、調理設備もある。


 曰くこれで旦那に胃袋を掴まれたのがリンが産まれた大きな要因だとかなんとか。


 おかげでちゃんとした飯が食えるのでその辺は何も言わない、言わないったら言わない!


 とはいえ、料理はそんなに得意ではないのでいつも通りの男飯。


 血抜きを済ませて間道具で凍らせておいた猪の魔物の肉を塩水で数回洗って薄切りに。


 乾燥野菜を水で戻しておいて、戻る間に鍋に火をかけて乾燥スープを入れて肉を煮て、色が変わってきたら野菜と一緒に煮込む。


 そうこうしているうちに3人が戻ってきた。


「良い匂いね、ご飯つくってくれてたんだ」


「おう、動いて腹減ったからな、聞かずに作ったけど食べるだろ?」


「もちろん!」


「おいしそー!」


「ロイドさんありがとう!」


 と言う会話の中に初めて聞く声。


「クウ、喋れたんだな」


「えっと、うん」


「そうか、よろしくな!」


「うん!」


 そう言って元気良く駆け寄ってくるクウの頭をなでる。


 リンやレイラも寄ってきてクウをなでたりぷにったり。


 そうして和気藹々とした雰囲気で食事が始まるのだった。


 そしてその日は食事をしてそのまま終わるはずだった。


「それじゃ、ロイド君、しばらくリンの事おねがいね」


 その言葉を聞くまでは。

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