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 子狐を頭に森を進む。


 何故いるかと言われれば聖龍に会いたいからだとの事。


 それだけではなく、この子狐には聖龍の居場所が分かるそうだ。


 なんでも繋がりがあるそうだが、どういう繋がりかは教えてもらえなかった。


 「行ったら分かる」 だそうだ。


 暖かな光が満ち溢れ、道も広く歩きやすい気持ちがいい森。


 それがこの森の明の部分である。


 常に明るいのは草木や苔といった物の中に発光するものがあるからである。


 暫く歩くと光少なくなり、鬱蒼としていく、ここまでくると命を懸けなければ探索はできない箇所になる。


 もう少し進むと光が届かなくなり昼でも真っ暗な森になる。


 そしてその後濃い霧が出てきて方位も狂い、方向を見失う。


 そこを抜けると疎らに光る草木が現れ、幻想的な森が姿を現す。


 暗闇の中を照らすような草木や昆虫が漂う、澄んだ湖があり、底まで見える幻想的な世界。


 そこまで行くと幻獣や聖獣、龍が縄張りを持つ世界であり、明暗の森の奥は違う名を併せ持つ。


 幻獣の森。その最奥に縄張りを持つのが聖龍であり、今回の目指す相手である。


 因みにそこまで行くまでには数多くの魔獣や魔蟲、魔植物の棲家を通り抜けなければならず、住み着いている魔物も最低でもCランクという食物連鎖を形成している。


 この魔物たちは大抵は強い光を嫌う為鬱蒼途したところから出てくるので、村に被害が出る事は滅多にない。


 またその植生からポーションの素材等で重宝されるものも多く、それは村の収入源の一つとなっている。


 村を出発してから6時間、時刻は昼を少し過ぎたところである。


 森の光の強い手前側を過ぎて、景色も少し鬱蒼とし始めた。


 そしてこの森の洗礼と言われる魔物が現れる。


 先述したようにこの森の魔物の最低ランクはCであり、外側は比較的弱い魔物の住処となっている。


 その中に、は群れを成すものも少なくは無い。


 狼型の魔物、蟲型の魔物、Cランク認定されるだけあって、単体でも殺傷力のあるものばかりである。


 その中でもこの森の外側で遭遇したくないとされるモノというのはいて、今それらが接近してきている。


 甲高い羽音が無数に聞こえて来る。


 それは魔物の中でも蟲と言われる物の音である。


 全長10センチ程度の身体に鋼鉄を貫く猛毒の尾針。


 2対4枚の羽と全身を覆う甲殻に360度を見渡せる複眼。


 単体でCランク、群れになるとAランク以上の依頼になる軍隊蜂の群れ、その数凡そ200程。


 これでも巣の全部とはいかないが、その凶悪さは時折相性の悪いSランクが大怪我を負ったり死亡するという事故が起きるものである。


 曰く死ぬまで突撃してくるバーサーカー、曰く範囲攻撃の出来ない近接殺し。


 そんな曰くつきな盾職にとっては非常に面倒としか言えないモノがこの森初遭遇の魔物であった。


 それが俺の存在を察知して向かってきているのである。


 距離は凡そ50メートル程で、縦横2メートル程に広がって一塊になって時速70キロ程で襲い掛かってくるのである。


 盾を使ったスキルは基本的に大きい衝撃に耐えるものである。


 また、以前使ったぶちかましであっても、この数を一掃するとすると手数が足らない。


 他にも攻撃スキルで範囲の広いものはいくつかあるが、大抵のものは発動前後の隙が大きく、一度発動すると数秒の硬直が発生してしまう。


 運がよければ一度に全てをなぎ払えるのだが、運が悪いと生き残りに袋叩きにあって、毒も食らい、えらいこっちゃになってしまう。


 Sランクが事故を起こすのもその辺りが原因である。


 頭の上で尻尾を逆立てる子狐の様子を確認するが、この位ならと俺は袋の中に手を入れる。


 この蜂の群れ、偶に変なところで見かけると非常に厄介なのだが、対策は色々と考え出されているのだ。


 突進と獲物の防御相手の貫通力は非常に優れているのだが、いかんせんそれ以外は大した力はないのである。


 それが故のCランクであり、俺もそれは良く知っている。


 そして取り出したのは一つの球と剣の柄である。


 それを手に軍隊蜂が接近するのを待つ、40メートル、30メートル、25メートル。


 そして先頭が20メートルを過ぎたところで魔力を流しその球を投げ放つ。


「開け!」


 その言葉と共に12メートルの位置にクリーム色をした網が大きく広がる。


 粘着トリモチ網、身も蓋も無い名前だが、縦横10メートル位に広がり、目の細かさも1辺2センチ程度の粘着性の高い上に強度が1センチのワイヤー程度はあるものである。


 当然魔道具であり、広がって獲物を引っ掛けた後は硬化するような機能もある。


 それが蜂の先頭の目前で大きく開いたのである。


 勢い良く集団で移動しているので当然止まる事などできはしない。


 蜂の先頭が網に突っ込み1メートル進んだところで後続に押される。


 そして網の先端が9メートル、8メートル、7メートルと此方に迫ってくるのだが、その網は下側しか固定されていない、上は宙に浮いたままなのである。


 それの1箇所だけが押されるということはそれ以外のところは引っ張られてくるのである。


 結果どうなったかというと。


「いつみてもこれの仕組みは見事だな」


 俺の目の前にはラグビーボール型の網に包み込まれた蜂の網詰めがあった。


 蜂の魔物はもがくが、羽が網にとられて動かせず、そうでないものも他の蜂に素沈めに丸め込まれて動けない。


 時間があれば抜け出せるかもしれないが。


「当然そうさせるほど甘くも無いっと」


 そう呟いて柄だけの魔道具に魔力を流す。


「こいつも便利だよな」


 その柄だけの魔道具は魔力をイメージして流すと一定時間その形に固めてくれるという便利グッズである。


 通称木刀、家庭での掃除、に使うには高価であるが、天井の高いところのハタキ代わりにとか模擬戦用の木刀代わりにとか、色々使われている、比較的メジャーなものである。


 そして今回はそれをどう使うかと言うと。


「さて、害虫駆除といえばやはりこれだな」


 その形を形容するとしたら、でかくて分厚い ハエタタキ である。


 当然こんな使い方をすると普通の木刀を作るよりも魔力は食うのだが、その辺は草ってもSSSランクで活動できる冒険者である。


 むしろいつも盾を使うときに使用するバフ系の技やら魔法の方が魔力を食う程度といったところか。


 動きが小さく、攻撃も最低限だから地味で目立たないので目立たないのだが、やはり規格外なのである。


 まぁそんな事はどうでもいいことなので、早速後ろ側から叩き潰し始める。


 殺気だっている蜂の後ろに振り下ろす。


「1発、2発、3発……18、19、20!」


 そうして網に掛かって完全に引っ付いている奴等以外を粉砕する。


 その頃には殺気も消え、怯えしか感じない具合になっていたが。


 そこからはナイフを使って1匹ずつ始末していく。


「200匹の集団だから、50匹分も取れれば十分かな?」


 そう独り言を呟きながら止めをさしたら蜂の毒袋と毒針を採取する。


 このモンスターの素材だが、割と高値で取引されているのである。


 その他にも自家消費が割りと多いものなのでここで補充できるのはありがたいのである。


 どう使うかというのはそのうち機会があればということで。


 採集を終えた俺は屍骸はそのままに先に進む。


 勿論行きがけの駄賃に巣も採集の対象にする。


 残っていたのは女王蜂とお供の50センチ位の蜂が数匹。


 それらは手持ちの盾で撲殺してから素材にして先に進む。


 このサイズになると捨てるところが無い程度には重宝されるのでありがたいものである。


 因みに単体でAクラスの討伐ランクになっている。


 丸々袋に入れて先に進む。


 討伐中にちょっと咆哮がずれても頭の子狐が修正してくれるのでお礼に蜂蜜をあげたら更に懐かれた、


 やはり子供は甘いものを食べているところが一番可愛いなと目を細めながら足を進めるのであった。

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