命の値段
「ちゃんと事故として処理されたみたいね。」
「貴族のほうはどうだった?」
「表ざたにしたくないみたいで、病死で処理されていたわ。」
「しっかりと調べれば、奴を刺した針の後も見つかったはずなんだけどな。」
私はそう呟く。私の場合はほかの二人と違って、事故で死んだようには見えない。
そういう始末の仕方を好んでいる。
「また、仕事があったら呼んでほしい。」
そう彼女に伝えると、古びた武器屋を後にするのだった。
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「・・・先生?フィル先生?どうかなさったんですか?」
「ああ、いや。何でもないんだ。ちょっと患者のことを考えていて。」
「先生は本当に患者さん想いですよね。私たちもそれで助かっています。」
薬を取りに来たエルフの少女が、私にそう言う。彼女は
私は調剤した薬品を、袋に入れて彼女に渡すと、彼女は代金の銅貨を支払う。
この店の、薬の価格は市民にとって手に届きやすい価格にしている。
同業者から憎まれることがあるが、だが、私が薬を低価格で処方し始めてから、この街での死者は圧倒的に少なくなった。
私は彼女が店を出るのを見送ってから、店の椅子に腰かける。
俺が昨日、貴族を殺した代金は金貨二枚。
そして、こうやって薬を処方して助けた命の価格は銅貨二枚。
こうしてみると一体命の価格はいくらなんだろうと疑問に思ってしまう。
「命に値段をつけること自体、間違っているんだよな。」
私はそう自虐的に言う。
「せっかくの色男が台無しだな。」
いつの間に入ってきたのだろう、店の入り口にはギルドの職員服を着た男が立っている。
ジェフだ。彼は見た通り、商人ギルドで働いている。表向きには。
彼の裏の顔は私と同じ仕事人だ。
そして彼が来たということは・・・
「昨日の今日で悪いんだがな、仕事が入った入ったそうだぜ。」
今夜も誰かを仕置きするということだ。