エボリス家の貴族の場合②
俺はロッソ。この街で衛兵をしている。
衛兵といっても、俺がしているのは貴族様の接待だ。
衛兵の仕事を真面目にやっても、金にはならない。ところが貴族様が何かをした時に、後始末をするだけで小銭が貰える。
だから、俺は警備の仕事なんかそっちのけで、貴族のご機嫌とりをする。
今回もミスリルの剣を見つけたという馬鹿な冒険者が、餌食になったのを、事故として処理しただけで、銀貨を5枚ももらってしまった。
そしてその稼いだ金で酒を飲んだ。たらふく飲んだ。
後は寮に帰って寝るだけだ。
ふと、前から小柄な奴が歩いてくるのが見える。
薄汚れた服に、ヒゲモジャの顔。
なんだドワーフか。貴族じゃないなら挨拶をしなくてもいいだろう。
俺はふらふらと千鳥足でドワーフの爺さんの横を通り過ぎた。
そして・・・
ーワシはその隙を見逃さなかった。ー
そいつの後頭部に飛びつくと、押し倒す。
酔っ払いの体制を崩すなんで造作のないことだ。ワシは左手で男の頭を抑えると、腰から愛用のオリハルコン製の槌を取り出し右手で構えた。
「な・・・なにしやがる。この野郎!」
倒されたロッソはそう言って足掻こうとするが、頭を抑えられていて動けない。そこに・・・。
「グチャッ!」
槌を振り下ろす。頭蓋骨が割れ、血が吹き出す。
ロッソは断末魔をあげることもできずに2、3度身体を痙攣させ、そして動かなくなる。
後は後頭部が地面に来るように転がしておけば良い。酒に酔った男が、転んで頭を打って死んだ。
この世界じゃそう処理される。
まして、衛兵がちゃんと機能していないなら尚更だ。
ワシは槌についた血を振り拭うと、なにもなかったかのように来た道を戻っていった。