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プロローグ
「やっぱり、先生の作ってくださるポーションが一番効きますね。」
兎耳をした獣人の女性が、私に向けてそう語りかける。
私はにこやかに「ありがとうございます。」と返すと、お釣りの銀貨を手渡す。
私こと、フィル・ウィチントンはこの街「ルミエール王国」で薬師をしている。
幸いなことにエルフとして生をうけた私は、順調に教育を受け、ルミエール国立魔法学院を優秀な成績で卒業した。
本来は宮廷魔道士になる道もあったのだが、今はこうして街の片隅に「銀の葵亭」を構えている。
売り上げもあり、生活に困っているということもない。街の人からも信頼されている。
だけど、そんな私には人に言えない秘密があった。
夕暮れの鐘がなる。
私は店の看板を中にしまう。
そして、店の奥の引き出しにしまってある鞄からいくつかのポーション瓶を取り出し、懐に入れる。
「さて、そろそろ行くとしますか。」
私はそういうと、全身を包むような灰色のローブを身に纏い、静かに裏口から出ていくのだった。