第94話 はっ、離れてくれ―――っ!
ピッ、ピピ――――――――――――――――――――――ッッ!!
「準決勝第一試合は十一対ゼロで『ミヨミヨ、モチモチペア』の勝利だっ!! あぁ、つまらん試合だったわ……」
あちゃ―っ!!子龍先輩の顔がボコボコに腫れあがっているぞっ!!
「オイ、仁見…。大丈夫か?」
「ぜっ…全然大丈夫じゃないよっ!! 美代部長の本気のアタックって、あんなにも凄かったとは…。僕は顔を防ぐ事もできなかったよ…。それにほとんどのアタックが僕のところに来たんだけど、あれはワザとなんだろうか……」
「さぁな…。俺にもよく分からんが、俺は違う部の人間だから少しは気を遣ってくれたかもしれないな……。でも俺も顔以外は結構ボールが当たったから、結構身体中痛いのは痛いんだぜ……」
あの『超人見知り』の子龍先輩が俺達以外の人と会話をしているなんて…。これってなんか凄い事だよな。花持部長が考えた今回のペアって、実はなかなかヒットじゃないのか……?
「でも…一点も取れなかったのは、何か悔しいね……」
「そうだな…。俺も悔しいよ……。大の男二人が見た目華奢な女子二人に完敗するなんてな…。前の『ドッチボール対決』で負けた時よりも悔しい気がするよ……」
「あぁ!! 僕のあの『スーパープレイ』でうちが勝ったやつだね?」
「『スーパープレイ』? それはよく覚えていないが、あの時の負けよりも今回の方が悔しいなぁ……」
「えっ? お…覚えて無いの? そっかぁ…。何だか悲しいなぁ……」
しかし、これで子龍先輩と上空先輩が仲良くなってくれたら、子龍先輩の俺に対する『変な感情』も消えてくれるかもしれないなっ!!
よしっ!!これは大いに期待できるぞっ!!上空先輩、是非とも頑張ってくれっ!!
「し…子龍先輩、大丈夫ですか? 顔がボコボコですね?」
「ひっ…一矢君!! き…君が美代部長に『本気のアタック』を促したからじゃないか!!」
「そっ…そうでしたね…。すみませんでした…。まさか美代部長の『本気のアタック』があそこまで凄いとは思わなかったもんで……。それに、子龍先輩と上空先輩の『長身コンビ』なら良い試合が出来ると思ったんですよ……」
「まぁ…そうだよね…。普通はそう思うよね…。でも結果は惨敗だったから…。一矢君の期待に応えられなくて悪かったね……」
「いっ…いや別に、気にしないでくださいよっ!! 俺はただ、前の『ドッチボール対決』の時みたいに上空先輩のパワーと子龍先輩のジャンプ力があれば、結構良い試合ができると思っただけですから……」
「えっ!? 一矢君は僕のジャンプ力を買ってくれてたのかいっ!?」
なっ…何だ?子龍先輩のこの食いつき様は……??
「え…えぇ…。買ってましたよ。あの時、俺がパスをしたボールが高めにいってしまったのを子龍先輩が凄いジャンプでキャッチして、そこから前妻木先輩に素早くパスをしてくれたお陰で勝てたところもありましたからね……」
「 「 「 ひっ…一矢く~~~~んっ!! 」 」 」
ガバッ!!
なっ…なっ…何だっ!!??
「しっ…子龍先輩!! 急に抱きつかないでくださいよっ!! それも涙を流しながらなんてっ!! 一体、どうしたんですか!? それより、気持ち悪いから離れてくださいよっ!!」
「いっ…嫌だっ!! 君を離したくないっ!!」
ウゲェ―――――――――――ッッ!!
今、メチャクチャ気持ち悪いセリフを吐きやがったぞっ!!
「うっ…上空先輩、微笑ましい光景を見ている様な顔をしている場合じゃ無いですよっ!! おっ…お願いです!! た…助けてくださいよっ!!」
「別に良いじゃないか…。仁見が涙を流しながら布津野君に抱き着いている理由は分からないが、これぞ『男の友情』みたいな感じで見ていて微笑ましいよ……」
「いっ…いや、はたから見れば『男の友情』に見えるかもしれませんが、抱きつかれている俺からすれば『恐怖』でしか無いんですよっ!!」
っていうか、俺は何か間違った事を言ったのか?『超人見知り』の子龍先輩がこんなに感情的になって俺に抱き着く様な事を俺は……
バシンッ!!!!
「い…痛いッ!!!!」
あっ!?な…菜弥美先輩!!!!
「しっ…子龍!! 一矢君から離れなさいよっ!! 一矢君、凄く嫌がってるじゃないのっ!! それに今から準決勝第二試合が始まるんだから、ここに居られたら邪魔なのよっ!!」
「な…菜弥美…。だからって僕の頭をぶつ必要はないだろ? そ…それでなくても美代部長のアタックの痛みがあるのに……」
「しっ…子龍が悪いのよっ!! アンタが一矢君に抱き着いているからっ!! 私でも一矢君に抱き着いた事なんて一度もないのに……」
いやっ、菜弥美先輩!!そんな事が一度でもあったら、俺は死んでしまいます!!
「な…菜弥美先輩、有難うございます!! たっ…助かりました……」
「い…いや、お礼なんて良いよ…。それよりも最後に言った私の言葉は忘れてちょうだいね……」(ポッ……)
「えっ? 最後の言葉ですか?」
「あっ! い…良いのよっ!! き…気にしないで!! だ…だから忘れてちょうだい!! 良いわね!?」
「は…はい…、分りました……」
菜弥美先輩、なんだか顔がメチャクチャ赤いけど、大丈夫かな?
「大石さん…。アナタ、さっきはとても大胆な発言をしたわね……?」
「まっ…前妻木さん、聞こえてたの!?」
「そりゃ聞こえるわよ。あんなに大きな声で言ったんだから…。それに見て。他の『ネガティ部』の女子達もアナタの事を複雑な顔で見ているわよ。あと何故か聖香ちゃんや花持部長さんまでアナタを見ているというよりも……アレは睨んでいるわね…。プッ……」
「うわぁ〜…、どうしよう…。後で皆に何か言われるかもしれないわ……」
「それは大丈夫じゃないかしら?アナタに何か言えるくらいの人がいるなら、とっくの昔に布津野君には『彼女』が出来ていると思うし……」
「え―――ッ!!?? かっ…『彼女』ですって!?」
「えぇ、『彼女』よ…。布津野君はあぁ見えて『そっち系の話』は凄く鈍感みたいだから、今のところ大丈夫みたいだけど…。でも分からないわよ。いずれ布津野君に対して積極的な子が現れるかもしれないし、そうなればいくら鈍感な布津野君でも色々と考えるんじゃないかしら……。ほんと布津野君って皆から好かれるものね…。とても優しくて思いやりのある子だから当然でしょうけど……」
「・・・・・・」
「どうしたの、大石さん? 急に黙り込んじゃって……」
「えっ? あぁ…うん……。なんか自分の気持ちがよく分からくなってしまって……」
「別に今はそれで良いんじゃない? まぁ、いずれ分かるわよ。でもウカウカしていたら、ライバルがドンドン増えるかもしれないわよ。私だって微妙なんだからねっ……」
「えっ!? 前妻木さん、今何て言ったの??」
「フフ…、何でも無いわよっ。それよりも今は準決勝を頑張りましょうよ。私、テンテン部長だけに負けたくないし…。さぁ、頑張ろう!『菜弥美』!!」
「えっ? 今、私の事…『菜弥美』って呼んでくれたの…?」
「あら、呼んじゃダメだった?」
「ううん…。全然ダメじゃないけど…。友達以外から下の名前で呼ばれるのは久しぶりだったから……」
「アナタ、何を言ってるの? 私達、一、二年同じクラスで部活は別だけど同じ副部長同士だし、先日の『ドッチボール対決』では同じチームで頑張ったし、そして今はペアを組んでいるのよ…。もうとっくに友達じゃないのっ!! ア…アナタが嫌なら別に友達じゃ無くても良いんだけど……」
「いっ…嫌じゃないわっ!! 逆にとっても嬉しいわ!! 別に今まで友達が居なくて悩んでいた訳じゃないけど……、何故か私の『悩み事』が五つ分くらい、一気に解消した気分になったわ!! 本当にあ…有難う…。な…な…『奈子』…、準決勝頑張りましょう!!」
何だかアレだな。菜弥美先輩も前妻木先輩とよく会話しているよなぁ……。とても良い傾向だよな。今回の『夏合宿』って元々は美代部長の思い出作りがメインだったけど、これは他の部員達もそれぞれに何か良い変化がありそうだぞ......
このままネガティブな性格が治れば良いんだけどな…。ってまぁ、人の性格なんてそう簡単に変われるものでも無いんだろうけど……
「ミヨミヨ~っ!! 僕の試合をしっかり見ていてくれよ~っ!! そして僕達がムキムキ達に『ストレート勝ち』したら僕と付き合ってくれないか~いっ!!??」
「い…嫌です!!」
「え―――ッ!!?? ミヨミヨ~っ!! 返答が早すぎるよ~っ!!」
チッ…。きっとあのテンテン部長は生まれた時からテンションが高かったんだろうなっ!?母親も助産師さんも、さぞ大変だったろうなっ!!
あの人こそ少しはネガティブなところを身に付けて欲しいもんだぜっ!!
よしっ!こうなったら……
「あのっ、菜弥美先輩に前妻木先輩!! どうかお願いです!! あのテンション高い奴をぶっ潰してやってくださ―――――――――――いっ!!」
「ハーッハッハッハ!! ヒッ...ヒトヤン君もヒドイ事を言うねぇ~っ!?」
「 「 「 「 オッケー!! 任せてーっ!!!! 」 」 」 」
お読み頂き有難うございます。
あともう少しで100話です。
頑張って執筆しますのでこれからも宜しくお願い致します。
ただ最近、ブクマも評価も全然増えず凹み気味です。
どうかここらへんでまだブクマされてない方、評価をされて無い方
是非とも私に『エネルギー』を与えてくださ―――――――――――いっ!!
宜しくお願い致しますm(__)m




