第90話 最強コンビ誕生だなっ!(挿絵有り)
「ウェ―――――――――ンッ!! ビェ――――――――――ンッ!!」
なっ…なんちゅう泣き方だっ!!
「は…花持部長…。な…何でそんなに泣いているんですかっ!?」
「布津野君…。何で私の事を『メイド長』って言わないのよっ!?」
「は~っ!? そう呼ばれるのメチャクチャ嫌がってたじゃねぇかっ!!」
「別に…。い…嫌がって無いわよっ!! でも今はそんな事どうでもいいのっ!!」
なっ…何なんだ、この人はっ!?
「じゃあ、花持メイド長…。何で泣いているんですか? …はぁ…、めんどくせぇ……」
「メッ…メイド長じゃないからっ!!」
「やっぱりなっ!!」
で、一体この人は何で泣いているんだろうか……?
「さ…先程、『舞奈お嬢様』から色々とお話を伺った中で……」
「いっ…いや、チョット待ってください。花持部長!! い…今、『舞奈お嬢様』って言いませんでしたかっ!?」
「えぇ、言ったわよ。それがどうかしたのかしら?」
「どっ…どうかするでしょ!! 急に舞奈の事を『舞奈お嬢様』だなんて、違和感ありまくりじゃないですかっ!!」
「ホント…、アナタは何も分かつていない一般庶民ね。私達の世界では下の者にはとことん上目線で接するけど、自分よりも立場が上の人には『媚びを売る』…。当然の事なのよ!!」
よくもまぁ、そんな言いにくい事をハッキリと言うよなっ!!っていうか一般庶民で悪かったなっ!!
「で、舞奈から何を聞いたんですか?」
「そう、そうそう…。そうだったわね。先程、舞奈お嬢様から越智子美代とは従姉妹同士で、本来なら越智子美代の母親が『寿志光グループ総帥』になってもおかしくなかったと聞いたから、それを本人に確認しようと思っていたらアナタ達が会話をしているところに遭遇してしまって……。で、越智子美代の話を聞いていたら涙が勝手に出てきて…。そしていつの間にか我慢できなくなって号泣してしまったの……」
花持部長、意外と優しいところがあるんだな……
「花持さん…。私の話で涙を流してくれるなんて…、本当に申し訳ありません…。で…でも嬉しいです……。有難うございます……」
「なっ…! 何でアナタに詫びられたりお礼を言われたりしなくちゃいけないのよっ!? アタシは別にアンタの境遇を知ってしまった事で、今までアンタを嫌っていた事がとても恥ずかしくなって、今更だけどお友達になりたいなんて思ってなんかいないからねっ!!」
超ツンデレだなっ!!っていうか、思いっきり答えを言ってるじゃねぇかっ!!
「要するに花持部長は、美代部長と友達になりたいんですよね?」
「だっ…誰もそんな事…!?」
ギュッ!
「な…何よ…越智子美代?? 何で急に私の手を握るのよっ!?」
「花持さん…。私とお友達になっていただけるのですか!? 嬉しいです!! わ…私、今まで同い年のお友達が全然いなくてとても寂しい気持ちでしたが、花持さんがお友達になって下さるのでしたら、学園生活最後の一年…最高の一年になると思います……」
「さ..最高の一年って……。そ、それに誰も友達になるなんて……」
「花持メイド長!! 俺からもお礼を言わせて下さい!! 美代部長の友達になってくれて有難うございます!!」
「ふっ…布津野君まで……。ってか私はメイド長じゃないからっ!! う~ん…わ…分かったわよ…。分かりました。越智子美代の友達になるわよ。友達になれば良いんでしょっ!?」
「有難うございます……。花持さん、『ふつつか』で『ブス』で『のろま』な私ですが、どうぞ宜しくお願い致します……」
「おっ…越智子美代!! 私の前では『ブス』とか『のろま』とかは絶対に言わないでくれるかしら!? 私には嫌味にしか聞こえないからっ!!」
「わ…分かりました……。申し訳ありません……。以後気を付けます……」
「おい、ブオブオ。そこで何をしているんだ?」
「えっ? あっ! 久地川先生……」
「そんなところでコソコソ怪しい奴だな……」
「いっ…いえ……。ちょっと取材をですね……」
「ほぉ~?取材かぁ……。それは面白そうだな。で、何か面白いネタでも見つけたのか?」
「え…えぇ…まぁ……。ちょっと感動的な話なんで、僕のイメージとは合いませんけど……」
「そうだな。感動的な話だったな」
「えっ? 何で知ってるんですか??」
「フフフ…。私はダーリンに付けている盗聴器から話を全て聞いていたのさ」
「とっ…盗聴器って…。久地川先生…、アナタは根っからの悪ですね!?」
「ハハハハ…。そんなに褒めるな」
「ほっ…褒めてませんけど……」
「まぁ、私はダーリンの事を全て知っておく義務があるからなっ!! 盗聴器なんて可愛いものさ」
「・・・・・・」
「ん? どうした、ブオブオ?」
「一つ、聞いてもいいですか……?」
「なんだ? 言ってみろ」
「久地川先生は、本当にフツオの事が好きなんですか?」
「ん? ハッハッハッハ!! 何を聞くのかと思ったらそんな事か。当たり前じゃないかっ!! 好きに決まっているだろ……。今はな……」
「今は……??」
「布津野君、越智子美代!! 明日は全員で『ビーチバレー大会』を行うから覚悟しておきなさいよっ!!」
「えぇ―――――――――っ!? ビーチバレーをやるんですかっ!?」
「そうよ。二人一組のチームを作ってトーナメント方式でやるわっ!!」
「ほんと、花持部長は対決が好きですね~」
「好きとか嫌いとかは関係ないのよ。皆と仲良くなるにはスポーツが一番って事よ」
「なるほど…。そういう事ですか……」
「それでチームは独断と偏見で私が決めるから!! そして越智子美代とペアを組むのは私だからっ!! 分かったわね、越智子美代!?」
「えっ? わ…私とペアになってくださるのですか……?」
「そ…そうよ! 嫌なら別にいいけど……」
「いっ…嫌だなんて…。とても嬉しいです!! 本当に嬉しいです!! 花持さん有難うございます……」
「チョット待ってくれないかしら。アンタの部は下の名前で呼び合っているんでしょ? だったら私達もお互いに下の名前で呼び合うようにしない?」
「えっ? 下のお名前をお呼びして構わないのですか?」
「え…えぇ…。構わないわよ。私の事は蘭那って呼んでくれるかしら?」
「わ…分かりました。それでは明日宜しくお願い致します…ら…蘭那さん……」
「よ…宜しくね…み…美代……」
お―――ッ!!何なんだ。この感動的な場面は!!まさかの展開になってきたぞっ!!美代部長に初めて同い年の友達ができる場面に居合わせれるなんて、俺はメチャクチャ幸せ者じゃねぇかっ!!
それに明日の『ビーチバレー大会』で他の皆も美代部長みたいに友達ができるかもしれないぞっ!!今回の『夏合宿』は、俺の予想を遥かに超えた事が起こりそうだっ!!
「花持部長!!」
「何? 一矢君?」
「あれ? 俺の事も今から下の名前呼びですか?」
「そっ…そうよ…。嫌なの??」
「べ…別に嫌じゃないですけど……」
「それじゃぁ、私の事も下の名前で呼んでくれるかしら?」
「えっ? あっ、はい…分かりました。それじゃぁ、改めて今後とも宜しくです。蘭那部長……」
「こっ…こちらこそ宜しく…一矢君……」
「それにしても明日が楽しみになってきましたよっ!!」
「そうね。私と美代の最強コンビが優勝するところを皆に見せつけてやるわっ!!」
「いや、俺が楽しみにしてるのは、明日蘭那部長の水着姿も見れるんだなって事ですよ」
「ヒッ、ヒエ――――――――――――――――――――――――ッッ!!!!」
「ひ…一矢君……。少しだけ最低ですね……」
「美代部長…えっ? えぇぇ――――――――――――――――――――――――っ!!??」
お読み頂きありがとうございます。
次回は『ビーチバレー大会』となります。
果たして何組の友達が成立するのでしょうか?(笑)
お楽しみに~




