第56話 久しぶりの占いだなっ!(挿絵有り)
嵐の一夜が明けた朝......
チュンチュン…チュンチュン…
ん?もう朝かよ~。っていうか、昨日はせっかく振替の休みだったのに逆に疲れたぜ…
まさか親父まで加わってみんなで夕飯とは……まぁ、母さんも喜んでいたから別に良いんだけど……。
「母さん、おはよう」
「あら、おはよう一矢。今朝は随分と早起きね」
「えっ? ほんとだ!畜生!あと三十分も寝れたじゃないかっ! ボーっとしてたから時計を見て無かったよ」
「フフ、まぁ良いじゃない。『早起きは三文の徳』って言うでしょ。もしかしたら何か良い事あるかもしれないわよ」
「ま、まぁ…そうだと良いんだけどね。ところで親父はまだ寝てるのかい?」
「あぁ、あの人なら朝一番の新幹線で京都に出張に行ったわよ」
「え―――っ!? また親父、出張かよっ!? しかし何という会社なんだ! 昨日、出張から帰ってきたばかりの人間をまた次の日から出張に行かせるなんて! それを素直に聞いている親父もどうかしてるぜっ!!」
「一矢、そんな事言わないの。あの人は嫌々仕事をする人じゃ無いし、きっと出張仕事も楽しみながら行ってると思うのよ。それにあのテンションでしょ? 毎日家におられてもお母さん、突っ込み疲れをおこしてしまうわ。適度に出張で家を空けてくれる方が助かるわ」
「ハハハ、言われてみればそうだね。母さんが俺の知らない所で親父に突っ込みを入れていたなんて、こないだのテスト勉強の日まで全然知らなかったけどさ」
「そうね。今までは一矢に母さんが突っ込みを入れるところを見られるのが恥ずかしいっていう気持ちがあったからあなたの前ではずっと我慢してたんだけど、あの子達と出会った瞬間に何故か我慢できなくなっちゃって……あの子達はホント、突っ込み甲斐のある子達だわ」
「ま、まぁ…それは俺も否定は出来ないよな。ホント、突っ込みを入れないと成立しない人達ばかりだから…。それに俺の『突っ込みマスター』は母さん譲りって事が分かって少しホッとしたし……」
「あら、そうなの?そう思ってもらえて母さんも嬉しいわ。逆に恨まれたらどうしようかと少し心配したっちゃし……」
「ハハ…、別に恨む理由なんてないよ…」
恨むとすれば、なんで俺の名前を『一矢』にしたんだ!?って事ぐらいだぜっ!
「さてと、テレビでもつけようかな」
ポチっとな…
『続いて、蟹座のあなた……』
ゲッ!!またこの『占い』かよっ!!この占いには俺は二度も振り回されているからなっ!
べ、別にお前の占いを信じている訳では無いからなっ!!
『蟹座のあなたは男女関係無く、今日中に思い人にプロポーズをしないと…』
ん?プロポーズをしないと何だ?……
『プロポーズをしないと死ぬでしょう!』
って、また『死』の宣告かよっ!?こんな占いを早朝からテレビで流しても良いのかっ!?蟹座の人が可哀想過ぎるぜっ!!
『続いて獅子座のあなた……』
ん?今度は獅子座か……
『獅子座のあなたは男女関係なく、強烈な悩み事が出来てしまいます……』
ふ、ふ―ん…悩み事ねぇ…。で、この強烈な悩み事の対処方法はあるんだろうなっ?
『諦めてください……』
たっ、対処方法ねぇのかよっ!!
何なんだ、この占いは!?獅子座の人は今日一日メチャクチャ憂鬱じゃねぇか!
『乙女座のあなた……』
乙女座か~。俺、蠍座で良かったわ。この俺が乙女座っていうのは全然似合わないもんな。
『乙女座のあなたは男女関係なく、思い人が他の人に奪われ傷心の一日になるでしょう……』
わぁ~、乙女座の人もメチャクチャ可哀想だな。もし俺の近くに傷心している女子がいたら俺がしっかりと慰めてあげるぜっ!そしてあわよくば……!!イカン、イカンッ!俺としたことが!そんなのはモテた事の無い俺のキャラじゃねぇな!!
『続いて天秤座のあなた……』
うわっ!もうすぐ俺の蠍座じゃねぇか!って…べ、別に占いなんて信用してないから全然大丈夫だけどなっ!!
『天秤座のあなたは男女関係なく、『少しだけ気になる人』が目の前で他の異性に告白され、そのショックがキッカケとなり、逆に『常に気になる存在』へと変化していくでしょう……』
えっ、えらい細かい内容だなっ!?これはドラマか何かの話しかよっ!!
『続いて蠍座のあなた……』
きっ、来たぁ―――っ!!ついに来たぁ―――っ!!
い、いや別に期待している訳では無いぞっ!!
『蠍座の男性の方……』
えっ?何で蠍座だけ男女別なんだ!?
『蠍座の男性の方は、本日、思いもよらない人からプロポーズをされるでしょう!』
はい、消えた!!ヘヘェ~んだ!高一の俺がプロポーズなんかされる訳無いじゃねぇか!!それに普通は男性からプロポーズするもんだろ!?女性からプロポーズされるなんて男としては情けない話だぜっ!
『……もし、プロポーズを断れば……』
ハイハイ…もし断ればどうなるってんだよ?
『断れば死ぬでしょう!』
ハイハイッ!!そうくると思ってたぜっ!だっ、誰が死ぬもんか!っていうかまだ十五歳の俺がプロポーズなんかされる訳ねぇだろっ!
『そして蠍座の女性の方……』
おっ!舞奈だな?フフーン、俺全然余裕~
『蠍座の女性の方は衝撃的な場面に遭遇し、いてもたっても居られなくなり泣きながら家に帰るでしょう……』
ハッ…ハッハッハッハ~…。内容はともかく、舞奈の性格なら泣きながら家に帰るってのはあり得るよな。でもあいつが泣いて帰ると、きっとその夜に長文のラインが俺に送られてくるだろうから、それはそれで面倒だな。何事も無い事を願うぜっ!
『そして最後に射手座のあなた……』
おっ!ついに美代部長の番だっ!ってか俺いつの間にかこの『占い』を楽しんでいないか!?チッ、何か悔しいぜっ!
『射手座のあなたは『衝撃アリアリ』の場面に出くわし、『アワアワ』と言いながら気を失うでしょう。救急車の準備をしていてください……』
まず、『衝撃アリアリ』って何だよっ!?それに『アワアワ』って……
そういえば昨日の美代部長は親父の話を聞いて『アワアワ』って言ってたよな!?
これは非常にマズイぞっ!で、でも救急車の準備なんか出来る訳ねぇだろっ!!
いずれにしてもさすが、美代部長の星座だ。何か当たる様な気がしてきたぞ。これは今日一日、美代部長の事を気にかけておかないとだな!
「ひっ、一矢!いつまでテレビに向かって突っ込みを入れてるのよっ!もうこんな時間よ!早く起きた意味が無いわよ!!」
「えっ!?わ―――っ!ヤバいっ!」
チッ、畜生―――っ!こんな占いをつい見入ってしまったぜっ!
クソ―――っメチャクチャ悔しい――――――――――――っ!!!!
お読み頂きありがとうございます。
久しぶりの占い回です(笑)でもこの占い、意外と重要なんですよ。
っていうか何かの伏線アリアリとしか思えませんよね?(笑)




