第5話 ジロジロ見ないでよっ!(FA有り)
や、やばいなぁ......
俺の突っ込みのせいで、部室の雰囲気がおかしくなってるぞ......
先輩達はさっきからうつむいて一言も話さないし......
俺の突っ込みがキツ過ぎたのかな......?
それとも「茶」の部分は絶対触れてはいけない領域だったとか…?
マッ...マズイなぁ......
サラッと聞き流すべきだったか......?
「あ...あの~先輩達、さっきの俺の突っ込みは全然気にしなくて良いですから......。思わず突っ込んでしまっただけなんで...。ねっ? 気を取り直して部活再開しましょうよ......?」
な...何で仮入部の俺がこんなに先輩達に気を使わないといけないんだ!?
ホント疲れる人達だぜ......
でもこう言っちゃアレなんだけど、落ち込んでる二人の表情もたまらないくらい素敵で美人なんだけどな。
「そ...そうですね......。一矢君のまさかの突っ込みに少し驚きましたけど、そんなに気にする事ではないですよね? なっ...菜弥美ちゃん...、ネ...「ネガティ~部」の部活動再開しましょうか......?」
「そ...そうですね......。再開しましょう!! ネ...「ネガティ~部」をっ!!」
二人ともめちゃくちゃ気にしてるじゃないか!!
「ネガティ~部」って......
逆に違和感ありまくりだし!!
「せ...先輩達、別にわざわざ「ネガティ~部」って無理やり言わなくても良いですよ。今まで通り「ネガティ部」って言ってもらっても俺全然構いませんから......」
っていうか、俺に言われたからってこの歴史のある(?)部の名前を仮入部野郎ごときの俺の突っ込みで変えないでくれよ。
それに「ネガティ部」っていう名前自体がすでにおかしいんだからなっ!!
「えっ? 良いんですか? 私達、今まで通り「ネガティ部」って言って良いんですか…!?」
「あっ...当たり前じゃないですか!! お...俺は元々何でも突っ込む癖があるんで......。あまり俺の言う事は気にしないで下さい。ホントお願いします......」
「ほ...本当に良いんだね? 私はさっきから「ネガティ~部」っていう呼び名にどう慣れようかという気持ちと、でも出来れば元の「ネガティ部」の方が呼びやすいから、どうやって一矢君に説得しようかという気持ちが入り乱れて二つも悩み事が追加されてしまって......」
「いやいや菜弥美先輩マジで悩み事の追加はしないでください!! 今まで通りで良いですから!! ねっ、ねっ!?」
「一矢君がそう言ってくれてホッとしたよ。これで私の悩み事はまた一桁に戻れたし。一矢君、ありがとう......」
ひ...一桁っ......!?
結局九つも悩み事は抱えたままなんですね?
もしかしたら、この人は常に悩み事が十前後無いと逆にダメだったりして......
まぁ、そんな事は無いか。
悩み事は無いに越した事は無いもんな。
あと、お礼言われるのも何かおかしいし恥ずかしいぜ......
「あの~先輩達......」
「一矢君! そこは下の名前で呼んでもらえないでしょうか!?」
「はっ...はいすみません!! 美代部長に菜弥美先輩っ!!」
あぁめんどくせ~......
そこだけは絶対に譲らないんだもんなぁ......
「で、一矢君。何だい? 他に何か聞きたい事があるんじゃないの?」
「そ...そうなんです。たしか俺がこの部の五人目だと聞いてるんで他に二名の部員がいらっしゃるんですよね? あとの二名の方はどんな方達なんでしょうか?」
しかし部室に来てからまだ数十分しか経ってないのかよ?
この二人の相手だけでも疲れ切っているのに残りの二人はどんな人なのか?
少しはマシなのか?
それともこの二人よりも更にネガティブなのかとても気になるわ~......
「あっ、そうですね。テルマちゃんはもうすぐ部室に来ると思いますよ」
「テ...テルマ? 珍しい名前ですね......??」
「そうだろおぉ...? テルマは私と同じ二年生でハーフなんだ。色白で金髪なんだが身長は低くて......。同性の私から見てもとても可愛らしい女の子だよ......」
いや~あなた達お二人もどう考えても可愛いというかめっちゃ美人だし......
そんな美人の菜弥美先輩が可愛いって言うんだから、さぞかし可愛いんだろうなぁ......
なっ...なんか会うのが楽しみになってきたぞっ!!
ん?
でも待てよ!!
こんな美人の二人がネガティブな性格なんだ。
そのテルマっていう人も性格はネガティブじゃないのか!?
ブツブツブツブツ……
ん?
なんか部室の外から何やらブツブツ言っている人の声がする。
だんだん部室に近づいてきてるぞ。
も...もしかして......??
「あっ、テルマちゃん来たみたいですね......」
ガラガラーッ…
部室の戸が開き、そこに立っているのは、さっき菜弥美先輩が言ってた通りの色白で、キレイな金髪で、そして小柄で、めっちゃ可愛らしいハーフの女の子。
「テルマちゃんいらっしゃい。お待ちしておりましたよ......」
「おーっすテルマ~」
お...俺はあまりの可愛さに、挨拶も忘れて口を開けながらテルマ先輩を見ていた。
するとテルマ先輩は俺に気付き、何故か俺の方に近づいて来る…?
オイオイ、何近付いて来てるんですか!?
俺に何か言いたげな可愛らしい表情して......
いっ...一体この部は何なんだ!?
ここは美人しか入部出来ないのか!?
俺の事を睨む様にジッと見つめていたテルマ先輩は、俺に声を掛けようとゆっくりと口を開く......
ゴクッ......
俺は緊張して唾を飲み込んだ。
「ちょ...ちょっとアンタ!! 何さっきから私のことジロジロ見てるのよ!? 気持ち悪いわね!! あまり私の事ジロジロ見ないでよ!!」
「???・・・・???」
そして俺は口に出すのを我慢して、いつもの様に心の中で思いっきり叫ぶ......
「いっ...いきなり洗礼か――――――――――――いっ!!??」