第47話 普通にカレーライスを作らせろっ!(挿絵有り)
あのルイルイが合宿所の所長代理!?
絶対まともな合宿になるはずがない!
「なっ、何でこんなところにルイルイが居るんだよっ!?」
「何でだって? それは私がこの『謎めいた合宿所』の所長代理だからに決まっているじゃないか!」
「しょっ、所長代理だって~っ!? もしかしてルイルイの本業ってのは、ここの所長代理の事なのか!?」
「ハッハッハッハ~! バカな事を言うなヒトヤン! 所長代理もバイトに決まっているじゃないかっ!」
「イヤまたバイトかよっ!! ルイルイの本業は一体何なんだよっ!?」
「それは、秘密だっ!!」
「秘密にする事なのかよ!?」
「まぁ、いずれ分かるさ。いずれにしても今回、所長が体調を崩したんで学園長から所長代理の依頼が来てな。まぁなんて言うか、私は学園長とは良い仲だからな。流石に断るわけにはいかんだろう?」
「どんな仲なんだよっ!?」
「おっ、聞きたいのか~?ヒトヤン?」
「べっ、別に聞きたかぁねぇよ!」
しっかし、うちの学園長は一体何を考えているんだ?何であんな口の悪い奴を学園長は信頼しているのか?ポジティ部部長時代に何か功績でもあるのか?う~ん…、謎が深まるばかりだぜ…
「ま、舞奈…。あの人誰? 知り合いなの?」
「えっ? ええ…あの人はうちの部の顧問よ。口がとても悪い人なの…」
「ほ~っ! あの人が『ネガティ部』の顧問で『元ポジティ部部長』の『久地川瑠衣』だな!初めて生で見たけどやっぱり美人だな~…」
「多田野君、あの人知ってるの?」
「まぁ、写真でしか見た事無かったけどね。僕が入っている部は『アーカイ部』だから学園の様々な情報や記録管理をしているんだよ。勿論全ての部活の記録もね。それで前に『ポジティブ部』の歴史を調べていた時に歴代の部長さんの写真があって、その中にあの人の写真もあったんだよ。凄く可愛かったからよく覚えてるんだ! 今は可愛いと言うよりも凄い美人だね~」
「そっ、そうなの? 私あまり『ネガティ部』とか『ポジティ部』とか噂でしか知らないから…」
「まぁ、和久塁さんもこれから嫌でも知る様になるさ」
「さぁクズども! 早く各自の部屋に行って体操着に着替えてこい! そして十分以内に合宿所の横にある集会所に集合しろっ! さぁ早く行けっ! 死ぬ気で行けっ!」
「オイ! ルイルイ! あんた口悪過ぎるだろっ! 皆の事『クズ』呼ばわりするのは失礼じゃないかっ! しまいに訴えられるぞっ!」
「フンッ、私からすれば世の中の奴等全員がクズだ! まぁヒトヤン、君だけは『クズ』だとは思ってないぞっ! 君は『クズ』では無くて『普通のクズ』だ! 喜べよヒトヤン!! ハァ〜ッハッハッハッハ!!」
「誰が喜ぶかっ! って、『クズ』にまで『普通』をつけるんじゃねぇよっ! 違いが全然分からんわっ!」
「ひ、一矢~…もうルイルイの相手は良いから早く合宿所に行きましょうよ。何故か皆、ルイルイの言う事を素直に聞いて一目散に各自の部屋に向かって走って行ったわよ!」
全員いきなりルイルイの言いなりかよっ!?エライ素直だなっ!!まぁしかし、あのルイルイの圧力というか勢いには逆らえないか…。
しかし、今回の『謎めいた合宿』…。一体どんな事が待ち構えているんだ?どう考えたってルイルイが所長代理って…嫌な予感しかしないよな!
二年二組 三時限目
「もう一矢君達、合宿所に着いたかしら? 舞奈ちゃんも一緒だから今日の部活は寂しいわね~…あっそっか。今日は久しぶりに二人が入部する前の状態に戻るのよね…それって慣れてるし…。いや、もう無理だわっ! 私は今の六人での部活動に慣れてしまったし、たまに入る一矢君の突っ込みが無いと生きていけなくなってるわ! このままずっと四人の状態だったら寂し過ぎて私の悩み事が永遠に増えていく! 二人に感謝しか無いわね…。この思いを今夜、一矢君にメールしても大丈夫かな…? そう言えば合宿って、スマホを持って行って良かったかしら?」
トントン
菜弥美の後ろの席の人が背中を軽く叩く…
「えっ!?」
「大石さん、大丈夫?」
「あっ、あぁ〜前妻木さん。どっ、どうしたの?」
「『どうしたの?』じゃないわよ。さっきからアナタがブツブツ独り言を言っているのが聞こえてきて、気になって授業に集中出来ないのよ」
「えっ? 聞こえてたの? ゴメンなさい…」
「まぁ別に良いんだけど…あの布津野君って子、とても面白い子よね。私もとても気になるわ。今度、お茶でも誘ってみようかしら」
「まっ、前妻木さん! あなた…なっ、何を言ってるのよ――――――っ!?」
「こらっ! 大石!静かにしろっ! っていうか、お前が大きな声を出すなんて珍しいな。大丈夫なのか? 保健室に行くか?」
「い、いえ大丈夫です。すみません。お騒がせしました……」
「大石さん、ホント、めっちゃ美人だよなぁ~……。大きな声も可愛らしいし…」
「俺、いつも彼女の事しか見てないから授業全然聞いてないよ…」
「フンッ。何よ、あの子。目立とうとしてるだけじゃ無いの?」
「そうよね。前妻木さんもあんな子、放っておけば良いのに…」
「よしっ、お前等! よく十分以内に集合出来たなっ! 褒めてやるぞっ!!」
チッ、何を偉そうに言ってやがる。バイトのくせして…
「今からお前達は班ごとに昼食を作る訳だが、まさか定番のカレーライスを『普通』に作るとでも思っていないだろうな!?」
ほら、やっぱりな!ってか何か『普通』を強調してなかったか!?
「カレーのルーと米はここに用意している! しかし具材は何一つここには無い! 四人の内、一人はここに残り米を炊け! そして他の三人は今からこの名染伊太合宿所の敷地内を走り回りカレーに入れる具材を探してこいっ! 制限時間は三十分だ!何も具材を見つけられなかった班は勿論、ご飯にルーをかけるだけの『普通以下』のカレーライスだっ! 良いなっ! それでは早速始めるぞ!レディゴーッ!!」
『普通以下』って何かカチンとくるなっ!
ワ――――――――――――――――――――――――――――ッ!!!!(一斉に全員走り出す)
いっ、一体何なんだこの合宿は!?何を目的にしてるんだよ――――――――――っ!!??
お読みいただき有難うございます。
タイトルをリニューアルして初めての投稿となります。
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