第30話 何か良いぞっ!
前日の『テンテン襲来』で疲れが取れない一矢だが...
はぁ―――っ……
昨日の疲れが全然取れないぜぇ......
しかし『テンテン部長』は恐ろしい程テンションの高い人だったよなぁ......
あんな人にしょっちゅうウチの部に顔なんか出されたら、いずれ全員心が病んで死人が出るかもしれないぞっ!
前に菜弥美先輩が言っていた『ネガティ部の天敵』の意味が良く分かったよ......
『ポジティ部』には、あんなのがゴロゴロ居るのかっ!?
考えただけで恐ろし過ぎるぜっ!!
あの後、皆で『お茶』を飲みながら『対策会議』をやったけど......
結局数分でいつもと同じく励ましたり、悩み聞いたり、頭をナデナデしたいのを我慢したり、顔の角度を突っ込んだり、なんか不機嫌な奴のご機嫌を伺ったり…
『アンタらテンテン部長の事、言ってる程気にして無いんじゃないのかっ!? っていうか、俺なんかよりも根性すわってるんじゃねぇのかっ!?』
...って、突っ込みたくなるぜ…
あっ!?
もうこんな時間じゃないかっ!!
や…ヤバい!遅刻するぞっ!!
はぁ~…なんとか遅刻は免れそうだ。
んっ?
前を歩いているのは確か…
「あ…あの~…。おはようございます!『ムキムキ』…? 副部長さん!」
ギロッ!!
へっ!!?
わぁ…、メガネのレンズの奥からめっちゃ怖い目で睨まれたよ~…。
「す…スミマセン! 俺、先輩の名前知らないんで、思わず昨日ルイルイが呼んでいた名前をツイ、言ってしまいました…」
「…あっ…昨日、『ネガティ部』の部室にいた君かぁ…一瞬誰だか分からなかったわ。あれから部室に戻ったウチの部長が言っていた…え―っと~…名前は、『普通の』…」
「いえ、『ふつの』です! 『ふつのひとや』です! どうぞ宜しくお願いします!!」
「あっ! あぁ~…そうそう『ふつの』君だ!こちらこそよろしく。私は二年の『前妻木奈子』って言います」
!!??
「ま…ま…『まえむき…なこ』…。『まえむきな…こ』…『前向きな子』!!」
バンザ――――――イッッ!!!!
「さ…さすが『ポジティ部』副部長ですね! 名前までポジティブです!!」
「フフッ…よく言われるよ」
「そ…そうなんですか? 嫌じゃないですか?」
「えっ? う~ん…、別に嫌じゃ無いわね。どちらかと言えば『ムキムキ』って呼ばれる方が嫌かもねっ(にこっ)」
「あぁ~そうですよねっ! 分かります! 『ムキムキ』は無いっスよねぇ~? どうせ、うちの『外道顧問』が名付け親でしょ!?」
「分かってくれるんだ~布津野君…。それに名付け親も正解よ」
「そりゃあ分かりますよ~。俺も名前やあだ名では苦労してますからねっ! 俺なんか『ヒトヤン』じゃ無かったら『フツフツ』か『ヒトヒト』になるトコだったんですからっ!」
「プッ…『フツフツ』に『ヒトヒト』って……。ルイルイ先輩、センス無いわねぇ~…。私だったら、そうねぇ…『ツノツノ』!!…『ツノツノ』ってどうかな?」
「え~っ!! 絶対嫌ですよーっ!!」
「そうよねぇ~…クスッ……」
ア――――――ッハッハッハッハ…
んっ?
ちょっと待てよ......
この感覚は何だ?
この学園に入学して初めての感覚だぞっ!
凄く俺にピッタリな感覚…そうだ!
『普通』の感覚…って、俺は『普通』じゃ無いけどな!!
そんな事はどうでも良いや。
俺は『ムキムキ』先輩との会話が普通に楽しめているんだ。
絶対そうだ!
俺の周りには『普通』じゃ無い人間ばかりだからな。
だからこんな他愛もない会話が俺には疲れなくて、とても居心地が良い様に感じるんだろう。
…でも待てよ。
『ムキムキ』先輩は『ポジティ部』の副部長だぞっ!
そんな人が『普通』のはずがねぇ!何かあるのかっ!?
もしかして俺を油断させる為の演技かっ!?
う~~~ん......
そんな風には見えないよなぁ......
「布津野君って、とても面白いわね。さすが噂の『何か凄い普通の子』だけの事はあるわ。うちの部長が欲しがった気持ちが少しだけ分かる気がする…」
「やっ…止めて下さいよっ! 俺、絶対に『ポジティ部』には入部しませんからっ!!」
「わ…分かってるわよ~心配しないで。私が出来るだけ部長を『ネガティ部』の部室に行かせない様にするから」
「ほっ…本当ですかっ!? た…助かります!宜しくお願いします!!」
「オッケー! …で、布津野君。今何時かな?」
「えっ? 今ですか? ……!?」
「ええ――――――っ!? もうこんな時間!!?」
ちっ…ち…遅刻だーっ!!
絶対コレは遅刻だって―――――――――ッッ!!!!
お読み頂き有難うございました。
今回でついに節目の三十話となりました。
これから五十話、百話とネタがある限り(笑)書き続けますのでどうぞ宜しくお願い致します。
それといつかまた『キャラクター人気投票』みたいなのもやりたいですねぇ~(≧▽≦)




