第189話 大変な事が起こる気がするぞ!!
しかし、とんでもない事になってしまったぞ。
俺はただ普通にミスコンを楽しみたかっただけなのに……
ポンッ
ん? 子龍先輩?
「頑張って、一矢君」
「はぁあ? 何を頑張るんですか!?」
「ハハハ、僕もよく分からないけどさ、誰が優勝してもややこしいことになりそうだなぁと思ってさ……まぁ、僕は楽しくミスコンを見学させてもらうけど」
チッ、子龍先輩は気楽で良いよなぁ……
っていうか、学園一モテる子龍先輩ではなく何で普通の……うん、普通だ、俺は!!
普通の俺と付き合ってみんな嬉しいのか?
逆に釣り合わなくて恥ずかしくならないのだろうか?
「一矢君?」
「ん? ああ、紅伊奈どうした?」
「一矢君は忘れているかもしれないけど、私と付き合うかどうかを決めるのは学園祭が終わるまで待ってくれって言ったのだけど……」
実は覚えていたんだけど、なんとか誤魔化していけないかと思っていたのに……
「え? そ、そんな事を言ったような、言わなかったような……」
「フフ、別に忘れていてもいいわ」
「え?」
「私がミスコンで優勝すれば文句なしに一矢君と晴れて付き合う事が出来るんだから……という事で私はコスプレ喫茶のお仕事は終わりにして明日のミスコンの為の準備をしてくるから……」
「え? でもさ」
「別にいいじゃない? あと三十分くらいで今日の学園祭は終わりだし、コスプレ喫茶の後片付けは明日でいいんだし……ということで皆さん、私は抜けさせていただきますので」
「ちょっと、紅伊奈、待ちなさいよ!! 何、あんただけ勝手な事を言っているのよ!! わ、私だって早くミスコンの準備を……」
「あら、舞奈。ということは舞奈も一矢君と付き合いたいって事でいいのね?」
「そ、それは……そのぉ……」
「フフフ……ほんと舞奈は素直じゃないよね?」
「う、うるさい!!」
おいおい、同じ部活仲間同士で言い争いは止めてほしいなぁ……
今の舞奈の反応は少し気になるけども。
「美代、あなたも明日のミスコンの準備をしないといけませんね?」
「え、お母さん、私は別に何も準備をすることはありませんよ。今、着ている『金髪ギャル風』の衣装で参加するつもりですし……」
「まぁ、その衣装でも十分に可愛いとは思いますけど……」
俺も美代先輩の『金髪ギャル』結構、気にいっているんだけど、美代先輩のお母さんからすれば物足りないのかな?
「実はですね、おうちに昔、私が着たことのある素敵な衣装があるんです。多分、美代の方が似合うと思うのですが、どうでしょう、明日のミスコンに着て見ませんか?」
「えっ? そうなんですか?」
しかし、この母娘の会話は異様だよな?
母娘なのに敬語で会話をするなんて……
うちでは考えられない事だぞ。あの親父が敬語で……プッ、想像しただけで吹き出してしまう。
「夢和お姉ちゃん、ズルい!! あの衣装を美代ちゃんが着たら絶対に美代ちゃんが優勝してしまうわ!! こうなったら舞奈!? あなたも、そんな『戦隊かぶれ』の衣装で参加するんじゃなくて、もっと素敵な衣装にした方がいいわ!!」
「い、嫌よ!! 私は昔からタマランピンクが大好きで、やっと夢が叶ったんだし、参加するなら絶対にこの衣装じゃないと嫌よ!!」
「はぁ……ほんと、舞奈は強情な子ね? 常はマイナス思考な性格のクセして肝心なところでは強情になるんだから。誰に似たのかしらねぇ……」
「ひ、一矢もタマランピンクのファンだもんね……?」
「えっ? ああ、そうだな。俺も小さい頃からタマランピンクのファンだったし、舞奈はとても似合っていると思うぞ」
いやマジで舞奈は良く似合っているし、本当なら一緒に写真を撮りたいくらいだよ。
恥ずかしいから絶対に頼めねぇけどな。
「うーん、まっいっか。一矢君が舞奈の衣装を気に入ってくれているなら問題は無いわねぇ……それじゃぁ、後は会場の人達の心をわしづかみ出来る様なポーズを考えないといけないわね!? 舞奈? あなたもさっきの芸者風の子と同じようにここから引き揚げなさい!! 家でポーズの特訓をするわよ!!」
「えーっ!? 何で私が紅伊奈みたいに皆さんに迷惑をかけなくちゃいけないのよ!? 私は最後までここにいるわ!!」
基本的に真面目な舞奈はそうだろうな?
まぁ、舞奈のそういうところは好きだけどな。
「テルマもそのフランス人形風衣装でミスコンに参加するつもり?」
「ええ、そうよ。これ以上に派手な衣装はなかなか無いと思うし……」
「でも、そんな衣装で参加すれば会場の人達にジロジロ見られるけど大丈夫なの?」
「大丈夫とは言い切れないけど……でも菜弥美が思っているより私も少しは視線に耐えれる様になったと思うわ。今日だってたくさんのお客さんを相手にする事が出来たくらいだし……まぁ、こんな風に変われたのも……」
「うん、一矢君のお陰だね? 私もそうよ。あれだけ悩み事が多かった私だけど……今でも悩み事はあるけど、ほとんど一矢君が一緒に悩んでくれるから、私としてはとても気持ちが楽になっているし……逆に今はどんな悩み事でもドンと来いって思える様になったわ」
「 「一矢君に感謝だね?」 」
な、なんか二人にそんな事を言われたら、めちゃくちゃ恥ずかしくて穴があったら入りたい気分だよ。
「おい、一矢? あそこの壁に小さい穴開いてるで~入って来いや~」
「親父は俺の心の中が読めるのか!?」
「ハッハッハッハ!! そやな、親子やしな」
「親子でも普通は読めねぇよ!!」
「しかし、ほんと一矢の近くにいる女の子達はどの子も良い子よねぇ? 全員、私の娘にしたい気持ちだわぁ」
「か、母さんまで何を意味の分からない事を言っているんだよ!?」
うちにこんな美少女が五人もいたら、落ち着いた生活なんてできないぜ!!
「フフフ……今のは半分冗談だけどね。でも一矢の彼女に誰がなるのか凄く楽しみだわ。誰がなっても八花とも気が合いそうだしね」
すっかり忘れていたぞ。俺にはアメリカに留学している妹の八花がいたんだった。
超天才の八花だけど、『ネガティ部』の人達も勉強が出来るから気が合うかもなって俺はミスコン優勝者と付き合う気でいるのか!?
いくら期間限定とはいえ、本当に良いのだろうか?
ガラッ…ガラガラッ
「おっ、何だよ!? ヒトヤンと八芽ちゃんは『コスプレ喫茶』に戻っていたのかよ!?」
「おお、ケシケシ達かいな? コメコメの息子の演劇を観終わって直ぐにここへ来たんやけどな、めちゃくちゃおもろい事が起こりそうやねん。どうや、お前等も明日仕事休んで二日目の学園祭に来いひんか?」
おもろい事って何だよ!?
息子をネタにする気じゃねぇだろうな!?
「ほぉ、ヒトヤンが面白いっていうんだから面白いに決まっているな!! よし、北海道に帰るのは明日の夜にしよう!!」
いや、帰ってくれてもいいんだけど……
「おっ、さすがゲキゲキやな!?」
「で、その面白い事って何だい!? 詳しく教えてくれないか!?」
「まぁ、そんなに慌てんなや、根津にぃ? 今からここで茶でも飲みながらゆっくり説明するやん。トラトラ先輩もまだ時間ありますよねぇ?」
「ああ、全然あるぞ!! 私はいつでも暇だからな!!」
はぁ……親父達、お願いだからもう帰ってくれないか!?




