第181話 女の闘いかよっ!?
「トラトラ師匠!!」
「おーっ!! ルイルイじゃないか!!」
テルマ先輩の母親がルイルイの師匠だと!?
一体、何の師匠なんだ!?
ガバッっ!!
えっ!? あのルイルイがテルマ先輩の母親に抱き着いて甘えている様な雰囲気をかもし出しているぞっ!?
しっ、信じられぇ!!
でも親父達はその光景を微笑ましそうな顔をしながら見ているし……
一体、この二人はどんな関係なんだ?
「ルイルイ、最近まで私の代わりによく頑張ってくれたみたいだな。さすがは私の一番弟子だ!! でも今はこの学園の教師一本で頑張っているらしいが本当なのか?」
「うん、そうよ。私は師匠みたいな『完璧な占い師』は無理だし、ここの教師なら私のやりたい放題だからとても楽しいのよ」
なっ、何だとーっ!?
テルマ先輩の母親がルイルイの占いの師匠だとーっ!?
「ママ、ちょっと待ってよ!? ママがルイルイの師匠って……それも占いの師匠だなんて……ママが占い師をしていたなんて私、初めて聞いたわよ!!」
「ハッハッハッハ!! 当たり前だ、テルマ!! 今日、初めてバラしたんだからな!!」
「ハッハッハッハ!! だから前に言っただろテルマ? お前の母親のことも知っているとな!! 私は幼稚園生の頃にトラトラ師匠に憧れていたんだ。そしてアイドルを引退した後、職に困っていた私は師匠に弟子入りしたんだよ」
「そんなの信じられない!! いえ、信じたくないわ!!」
「ハッハッハッハ!! 現実を受け止めろテルマ!! 私はトラトラ師匠の全てを受け継いだ女なんだよ!!」
「ルイルイ!! だからアンタはそテルマ先輩のお母さんの口調もマネて口が悪いんだな!?」
「口が悪いというのは失礼な話だが、さすがはダーリン、話が早い。まぁ、そうだな。最初は師匠の話し方をマネていただけだったが、中学生くらいにはもうこの口調は自分のものになってはいたけどな。私に口で勝てるのは師匠くらいなものだ。ハッハッハッハ!!」
「じっ、自慢にならねぇよ!!」
「しかし、ヒトヤンの息子は私達を褒めるのがうまいな!?」
「全然、褒めてないですよ!! ってか、そういうところも二人、ソックリだな!!」
「一矢君……」
「な、何でしょうか、ケシケシ先生?」
「この二人を相手にするのは止めた方がいいぞ。相手にしても疲れるだけだぞ」
「そ、そうですね。ケシケシ先生の言う通りかもしれませんね……この二人はある意味最強ですし……」
「おい、ケシケシ!! アンタは相変わらず『二流』っぽい風貌だな!?」
「うるせーっ、ルイルイ!! 俺もお前の大先輩なんだぞっ!! もう少し大先輩を敬えよ!!」
「ハッハッハッハ!! こいつ、ルイルイにまで『二流』って言われているぞ」
「笑うんじゃねぇよ、激人!!」
「私が尊敬しているのは師匠だけで、愛しているのはヒトヤン様だけなんだよ」
うわーっ、ルイルイのやつ、師匠を尊敬しているのは構わないけど、母さんの前で親父を愛しているだなんて、よくそんなことを言えるよな!?
それに今、ルイルイが愛しているのは俺じゃなかったのか!? ってか、そんなことを思ってしまったら俺が親父に嫉妬しているみたいじゃねぇか。
よし!! 今、思ったことは忘れよう……
「ルイルイ、久しぶりに会ったけど相変わらず大胆発言をしてくれるわねぇ……?」
はっ!! 母さん、もしかしてルイルイにキレるのか!?
「あら、これはこれは『泥棒桃猫』さんじゃないですか~? お久しぶりですね~?」
ど、泥棒桃猫だと? いつも紅伊奈に言っている『泥棒黒猫』と同じ意味なのか?
桃猫っていうのは母さんの髪色が桃色だからかってことか? でも泥棒って……
「うわぁああ、その『泥棒桃猫』っていう呼び方、久しぶりに聞いたわ~っ!! とっても懐かしいわね~」
「フン、えらい余裕の表情だねぇ……昔はソレを言うたびに怒っていたのにねぇ……やっぱ女もアラフォーになると心が広くなるみたいだねぇ……?」
「フフフフ、私は今までルイルイに突っ込みは毎日していたけど、怒ったことなんて一度も無いわよ。あっ、そっか。あなたはまだあの時は『おチビちゃん』だったから私の高等な突っ込みを理解できなかったのね? それは悪い事をしたわ。当時は怖い思いをさせてゴメンなさいね~?」
「チッ、ほんとアンタは昔から性格が変わってねぇな。でもまぁいいよ。アンタと言い合っても面倒くさいし、今日は楽しいお祭りだしな。そういうことにしておいてやるよ……」
な、何なんだ、この二人の会話は!?
怖すぎてチビリそうになっちまったぞ!!
「親父、あの二人を止めなくていいのか!?」
「はぁああ? 止めるって何なん? せっかく久しぶりに会った二人が仲良く会話をしてるのに止める必要なんか無いやん」
「どっ、どこが仲良く会話してるんだよ!? 今にも殴り合いの喧嘩が始まりそうな勢いだぞ!!」
「俺にはじゃれ合っている様にしか見えへんでぇ」
親父の奴はバカなのか鈍感なのかどっちだ!?
まぁ、鈍感ってのは俺も人のことは言えないらしいけども……
「ヒトヤンジュニア、心配する必要は無いぞ!!」
「えっ、そうなんですかテルマ先輩のお母さん?」
「そのテルマ先輩のお母さんっていう呼び方は止めてくれ。私のことはトラトラと呼んでくれていいからなっ!!」
「そんな、急に言われてもトラトラなんて呼べないですよ。それで本当にあの二人を止めなくて大丈夫なんですか?」
「ああ、大丈夫だ。ああ見えてルイルイはツメツメのことを私の次に尊敬しているんだよ」
「えっ、そうなんですか!? どう見ても俺にはそんな感じに見えないんですが……」
「大きな声では言えないが、昔からお前の親父は女子に大人気だったんだ。だからたくさんの女子に告白されてきたが、全てフッてきたんだよ。勿論、しょっちゅう学園に遊びに来ていたルイルイは間近でソレを見ていたんだ。誰もがヒトヤンは彼女なんて要らないタイプだと思っていたんだ。それがツメツメが『ポジティ部』に入部した途端に一変した」
「えっ? どういうことですか?」
「ヒトヤンはケシケシなんかよりもキレのあるツメツメの『突っ込み』に惚れてしまったんだよ。まぁ、ドンドン惚れていったっていうのが正解かもしれないがな。そしていつの間にか二人は付き合いだし、そして結婚したんだ。お前は勘違いしているかもしれないが、ルイルイはヒトヤンのことを愛してるというのは『人間として』愛してるということで恋愛感情では無いということだ。だからあいつの言葉は色々なことを誤魔化している言葉なんだ。要は照れ隠しだな。だからルイルイはお前の母親のことを、誰も堕とせなかったヒトヤンを堕とした女として凄く尊敬してるんだよ」
な、何か俺は今、色々な事を知ってしまった気がするが、情報量が多過ぎて頭が混乱してきたぞ……いずれにしてもルイルイは母さんを尊敬していて、親父の事は愛してると言いながら実は恋愛感情は無いということで……親父はやはり母さんの『突っ込み』に惚れてしまったということなのか……?
ん? それじゃぁ、ルイルイが俺の事をダーリン愛してるってのも恋愛感情ではなく『人間として好き』なだけで、ソレを見抜かれない様に茶化す感じで言っているってことなのか?
はぁ……なーんだ、そういうことか……
別に俺のことが本当に好きな訳では無かったんだな……
はぁ……ってか、何で俺はそんなに落ち込む必要があるんだよ!?
いかんいかん!! 今の感情は忘れよう……
「マ、ママ……」
「何だ、テルマ?」
「ママもルイルイと同じで常に何かを誤魔化す為にそんな口調だったの? もし、そうだったら、これからは無理しないで普通の話し方をしてちょうだい……」
「ハッハッハッハ!! バカな事を言うな、テルマ!! 私は何も誤魔化す必要の無い完璧な『金髪美人主婦』だぞっ!! 心配するな、私は一生このままだ!!」
「ママ、ハウス!! もう家に帰ってちょうだい!!」
「母親を犬みたいな扱いをするな!! でも今のはなかなか良かったぞ!!」
よっ、良かったのかよっ!?
お読みいただきありがとうございました。
トラトラ先輩ことテルマの母親からルイルイの秘密を教えてもらった一矢は少しだけ複雑な心境に。
そしてテルマは母親の性格はそのまんまだと知りショックを受ける。
一矢の親達の同窓会?みたいなものはひとまず終了です。
次回は少しだけ学園祭らしいお話に戻れるかも?(笑)
どうぞ次回もお楽しみに(^_-)-☆




