第127話 待ち過ぎだろっ!(挿絵有り)
さぁて、菜弥美部長はもう来てるかな?
ん? 来てる来てる。
しかし、菜弥美部長の私服って合宿の時もそうだったけど凄くオシャレよだなぁ……
ほんと、本人さえその気になればマジで『学園のアイドル』になれるんだけどな。
「菜弥美部長、お待たせしました!! ん? アレ? 菜弥美部長、どうかされましたか!?」
「えっ? 私の事!? あっ、一矢君ゴメンなさい……。私まだ『部長』って呼ばれる事に慣れていなくて……」
「ハハハ……。実は俺もなんです。何か言っててこっぱずかしいというか……」
「フフフ。お互いに慣れなくちゃいけないわね? それより一矢君、注文は何にする?」
「あっ、そうですね。俺はアイスコーヒーでいいですよ」
「それじゃあ、私はホットコーヒーにしようかな。すみませーん!! 注文よろしいですか?」
「菜弥美部長はこの喫茶店に何時位に来られてたんですか? 結構待たれたんじゃないですか?」
「えっ? いや、私はさっき来たところだから大丈夫よ。でも一矢君は大変よね? 私で五人目でしょ?」
「そ…そうですね……。大変と言えば大変ですが……。まぁ皆さん、それぞれ個性があって面白いといえば面白いですし……。でも菜弥美部長とは『喫茶店デート』で良かったですよ。やっと落ち着けるといった感じですから……」
「フフフ、そうでしょうね。一矢君の顔、疲れ切った顔してるものね。私にはそんな気を遣わなくてもいいからリラックスしてちょうだいね」
「あ…有難うございます。ほんと菜弥美部長はとても優しくて気遣いが出来る人だから俺、凄く助かりますよ。菜弥美部長が部長になってくれて本当に良かったです」
「(ポッ)そ…そんなに私の事を褒めないでくれるかな? とっても恥ずかしいじゃないの……」
いや、本当に菜弥美部長と一緒に居る時が落ち着くんだよなぁ……
「お客様、ご注文は何にいたしましょうか?」
「あっ、この人はアイスコーヒーで私はホットコーヒーを頂けますか?」
「はい、かしこまりました。でもお客様? 大変申し上げにくいのですが、お客様は次でコーヒー五杯目になりますけども大丈夫ですか?」
え―――っ!? ごっ…五杯目だと―――っ!?
「だっ…大丈夫です!! 気にしないで持って来てください!!」
「すっ…スミマセン!! 直ぐにお持ち致します!!」
菜弥美部長……。『アナタも他の部員と同じでかなり前からここに来てたんじゃないですかっ!!』と突っ込みたいところだけど、菜弥美部長のあの真っ赤になった顔を見てしまったら絶対に突っ込めないよな……
よしっ、話題を変えよう!!
「ところで菜弥美部長? もうすぐ『体育祭』がありますけど、うちの学園の『体育祭』って他の学校には無い競技とかはあるんですか?」
「えっ? ええ、そうねぇ……。うちの学園の『名物競技』といえばアレかな。『文化部対抗借り物競争』とか『文化部対抗綱引き』とか『文化部対抗マラソン』とか『文化部対抗リレー』等かな……」
「ぶっ…文化部対抗だらけですね!? 何なんですかソレ!?」
「まぁ、うちの学園は『文化部』に力を入れてるからねぇ……。前の選挙演説で聖香ちゃんも言ってたけど、昔からうちの学園の名前を有名にしてくれているのも『文化部』の力が大きいし……」
「でっ…でもですよ? 『文化部対抗』でやっても絶対に『運動バカ集団』の『アクティ部』が絶対に勝つに決まってるじゃないですか!?」
「プッ……『運動バカ集団』って……。まぁ当たってるだけに凄く面白いけど……。でもそれは大丈夫よ。『アクティ部』は一応『文化部』扱いだけど他の『運動部』の人達よりも『身体能力』が高い人達の集まりだから、彼等はその競技には『アクティ部』としては出れないのよ」
「えっ? どういう事ですか? それじゃ、『アクティ部』の人達は全然楽しくないですよね?」
「違う違う、違うのよ。『アクティ部』は元から自分達の部が勝ったりする事には全然興味が無い部なのよ。『アクティ部』は簡単に言うと『助っ人集団』……。だから今まで一つのスポーツにこだわらずに色々な『運動部』の『助っ人』として活躍してそこの部が勝ってくれたらそれで良い、それが『喜び』の部活なのよ」
「あっ!! って事はアレですね!? 今度の『文化部対抗』の競技は……」
「そう!! 彼等は他の『文化部』の『助っ人』として入ってくれるのよ。それで彼等が入った部が勝てば彼等の喜び、楽しさになるって事なの……」
なるほどな。そういう事か……
って事は、場合によってはウチの『ネガティ部』にも『アクティ部』から『助っ人』が来る可能性が有るんだよなぁ……
もしかしたら、俺のファンって言っている羽和当たりが『助っ人』に名乗りを上げそうだな!?
それはそれで面倒な事が起こりそうな気がするけども……
「それにしても菜弥美部長、ようやく『まともな会話』が出来て、なんだか俺ホッとしましたよ。さすが菜弥美部長ですね?」
「(ポッ)もう一矢君たらぁぁ〜。さっきから私の事を褒め過ぎよ!! いくら私を褒めても何も出て来ないんだからね!? で…でも有難う。一矢君にそう言って貰えてとても私も嬉しいわ。ほんと、部長を引き受けて良かった……。それに私も一矢君とお話していたら毎回『悩み事』が減っていく様な気がするから凄く助かっているのよ……」
『悩み事』……。そうだ!! 俺は一度、菜弥美部長に聞きたい事が有ったんだ。
「ところで、その『悩み事』なんですけど、菜弥美部長の『悩み事』が多い性格はご両親のいずれかに似たんですか?」
「えっ? うーん……どうなんだろう……? うちのパパもママもそんな悩み事をする様なタイプには見えないんだけどなぁ……。でもどちらかと言えばパパの方が神経質なところがあるかもね。『悩み事が多い』のと『神経質』なのが一緒なのかどうかは分からないけど……」
「そ…そうなんですね」
「でも、うちのパパはどちらかと言えば一矢君に似ているところがあるの!!」
「えっ? そうなんですか!?」
俺と菜弥美部長のお父さんが似ているだと!?
ウチも母さんと菜弥美部長の雰囲気が似てるんだけどなぁ……
未だにそれは言い損ねているけども……
「で、どういうところが似ているんですか?」
「フフフ……。実はねぇ、うちのパパも一矢君と同じで『突っ込みマスター』なのよ」
「え―――っ!? マッ…マジっすか!?」
「そうなの。いつも色んな事に突っ込んでるわ。実はうちのパパも『名染伊太学園』の卒業生で当時は『学園一の突っ込みマスター』って呼ばれていたってよく自慢げに言っているわ」
「へぇ、そうなんですか!? それは凄いですね? で、菜弥美部長のお父さんは何か部活はされていたんですか?」
「多分……」
「へ?」
「多分、何かの部には入ってたみたいなんだけど、絶対に教えてくれないのよ」
「な…何で教えてくれないんでしょうね?」
「分からないわ……。でも私が『名染伊太学園』に入学する時に一つだけパパが言っていた事があるの……」
「ほう、何て言われたんですか?」
「それがね……。『ポジティ部だけには絶対に入部するな』って言ってたのよ。言ってる意味が全然分からないでしょ? でもまぁ、私の性格で『ポジティ部』なんかに入部するはずも無いから……。それで私は真逆の『ネガティ部』に入部する事にしたんだけどさ……」
「へぇ、そうなんですね? なんか俺、菜弥美部長のお父さんに会ってみたくなりましたよ。もしかしたら俺の親父の事も知ってるかもしれませんし……」
「そうよね。もしかしたら知り合いかもしれないわね? あっ、そうだ。それじゃあ、今度一矢君がバイトの無い日にうちに遊びに来ない? うちのパパは自宅でお仕事をしているから絶対に会えるわよ」
「そうなんですか!? それじゃあ、今度菜弥美部長の家に行かせてもらいますね!!」
よしっ!!
「えっ? 菜弥美部長? 今の『よしっ』は何ですか?」
「べっ…別に何でも無いわよ。気にしなくていいから……(ポッ)……」
まぁいっか……。それよりも菜弥美部長のお父さんと話が出来るなんて……、少し緊張してきたな……
「そっ…それにしてもさっきから俺達のコーヒーが全然来ないですね!? 俺、ちょっと文句行ってきますよ!!」
「えっ? ちょっと待って一矢君!!」
「ちょっと店員さん!? さっきから注文したコーヒーが全然来ないですけど、何をしてるんですか!?」
「お客様、申し訳ありません……。アナタの分のコーヒーだけでも持って行きたいとは思っているのですが……なかなか難しい状況というか、お客様が私どもの所に来ていただくのをお待ちしていたとうのが本当のところで……」
「はぁ!? 言ってる意味が全然分からないんですけど!!」
「じ…実はですね。先程、私はお連れ様に『五杯目』と申しましたが……。あのお連れ様は朝からお見えでして本当はコレで『十杯目』になるんですよ。ですからさすがに私達もお連れ様のお身体の事が心配になりまして……。それで先程から私達共でコーヒーを出すべきか出さないべきかを悩んでいた次第なんです……。というかお客様!! お連れ様を待たせ過ぎじゃないですか!?」
えっ、え――――――っ!!?? 俺が店員に怒られてる!?
ってか、菜弥美部長は朝からこの『喫茶店』に来てたのかよっ!?
菜弥美部長、アナタの様な『悩み多き人』が周りをメチャクチャ悩ましてどうするんだ―――っ!!??
でも、そこが可愛らしいけども……
……って、思ってる場合じゃねぇよな!!!!
お読みいただきありがとうございました。
今回の『菜弥美部長回』も色々な事が分かりましたね。
体育祭、アクティ部、パパの性格等......
そして菜弥美部長は一矢を家に来てもらう事に成功!!
次はいよいよ最後の一人、美代前部長回です。
どうぞお楽しみに(^_-)-☆




