第124話 食べ過ぎ飲み過ぎだろ!(挿絵有り)
今回は舞奈回でございます。
【ショッピングモール一階・フードコート】
「舞奈、ゴメン!! 遅くなっちまって……えっ!?」
ダラ――――――――――――――――――ン…………
ウワッ!! 何だ、舞奈のヤツ!?
テーブルの上で両手を伸ばしてへたり込んでいるぞ!!
「どっ…どうしたんだ、舞奈!? 大丈夫か!?」
「び、びどや~(ひっ、一矢~)……。ぼ、ぼぞがっだじゃない(遅かったじゃない)……。ばだじ、おなががずいで、ぼうだべぇぇ(私、お腹が空いて、もうダメぇぇ)……」
「お前、何も食べてなかったのか!? っていうか何時からココに居たんだよ!?」
「ばだじは、じゅうじごろがらごごにびるば(私は十時頃からココに居るわ)……」
「早過ぎるだろ!? 十時なんて俺、まだ普通にバイトしていたぞ!!」
「だっでぇぇ、ばやぐべがざべでじばっだがら(だって、早く目が覚めってしまったから)……」
「そんなに早く来たんなら何か食べてれば良かったのに……。ってか、いつまでも聞き取りにくいのは俺も読者も疲れるから、とりあえず俺が何か食い物を買って来るから、少しだけ待っててくれ!! 分かったな舞奈!?」
「ぐ…ぐん……(う…うん……)」
【十五分後】
「あぁぁ、生き返ったわぁぁ!! 一矢があと少し遅れていたら、私、『餓死』するところだったわ!!」
「それは大袈裟過ぎるだろ!? っていうか、何で俺が来るまで何も食べずに我慢してたんだよ? 舞奈らしくないじゃねぇか?」
「ひ…一矢はどう思った? 一矢が来るまで何も食べずに待っていた私をどう思った?」
ん? この人、何を言ってるの?
「えっ? ま…まぁ、てっきり舞奈は一食分くらいは既に食べ終わっていると思っていたから正直驚いたってのが一番の感想だな……」
「他には?」
「えっ? 他って……、うーん……」
「一矢が来るまで何も食べずにずっと我慢して待っていた私を、偉いとは思わなかったの?」
こっ…こいつ、自分で偉いって言ってやがるぞ!!
「あっ…あぁ、そうだな……。いつもの舞奈からしてみれば偉いと言えば偉いよな。よく俺が来るまで頑張って我慢してくれていたと思うぞ……はぁぁ……」
「じゃあ、偉いと思うなら私の頭を撫でて……(ポッ)……」
「へっ? なっ…なっ…『撫でて』って、お前……」
「撫でてくれないの? 私は偉くなかったの? 今日はデートなんだし、こういう時くらいは私の頭を撫でてくれても良いんじゃない……?」
今日は一体、何なんだ!?
紅伊奈もそうだったけど、舞奈も何故か積極的というか、何というか……
でも紅伊奈は俺の事が好きだと言ってくれているから、ああいった積極的な態度も納得出来るけどさ……。さっきも別れ際にキス……いや、今はキスの事は忘れよう!!
ただ、舞奈は紅伊奈とは違って別に俺の事は何とも思っていないんじゃないのか!?
それなのに、恋人同士みたいに頭を撫でろとは……
う〜ん……あっ、そっか!!
今日の俺はみんなの『練習台』だったよな。
だから『練習台』の俺としては舞奈が望む通りの『恋人役』を演じないといけないんだよな!?
そっか、そっか……。これで納得できたぞ。
俺は先で舞奈が付き合う事になる『仮想彼氏』を演じれば良いんだ!!
「よしっ、舞奈!! 頭貸してみ……」
「えっ? い…いいの? 本当に撫でてくれるの?」
「何を言ってるんだ!? 舞奈が俺に頭を撫でろって言ったんじゃないか!!」
「そ…そうだけど……。本当に撫でるって書いてなかったし……」
「へっ? 何の事だ?」
「うっ…ううん……。別に何でも無いわ……」
「変な奴だなぁ……。早く頭出しなよ……」
「う…うん……、分かった……。は…はい……」
ナデナデ……ナデナデ……ナデナデ……
俺は初めて女子の頭を撫でたような気がするなぁ……
いや、小さい時に妹の頭を撫でた事はあったような……
でもアレは妹相手だからな。
他人の女子の頭を撫でるなんて、生まれて初めての経験だわ。
今日は俺も初めて経験する事が多い一日になりそうだなぁ……
しかし舞奈の髪の毛って、凄くサラサラで触ってて気持ちが良いよな。……って、俺は何を考えているんだ!! 舞奈にバレたら『この普通に変態野郎!!』って叫びながらパンチが飛んでくるところだぜ!!
でも俺も『普通に変態』って、自然に『普通』を入れてしまう自分がなんか悲しいぜ…………
「あ―――っ!! もうダメ!! 私、我慢できないわ!!」
「何だよ、舞奈!? 突然、大きな声を出すなよ!! ビックリするじゃねぇか!! 何が我慢できないんだよ!?」
舞奈の奴、凄い赤い顔をして今にも泣きそうな顔をしてるけど大丈夫なのか!?
「お腹が減って我慢できないのよ!! 今度は私が買ってくるから一矢はここで待っててちょうだい!!」
えーっ!? さっきハンバーガーを三個とポテトを食べたばかりじゃねぇか!!
一体、舞奈はどれだけ食ったら満足するんだ!?
「じゃあ私、買いに行って来るからね……」
あぁぁ、行っちゃったよ……
それにしても舞奈の奴、顔が凄く赤かったけど大丈夫かな?
まさか、俺に頭を撫でられて恥ずかしかったって事は無いよな?
いや、それは無いな。だってあの舞奈だしな……
それにしても、舞奈の食欲は相変わらず凄いよな。
『やけ食い』の紅伊奈と勝負したら一体、どっちが勝つんだろうか……?
いやいや、恐らくそんな事を口に出したら俺は二人から顔面パンチを喰らってしまうかもそれないぞ。
『ネガティ部』の『ボコキャラ』は子龍先輩だけにしておかないとな……
あっ、そう言えば舞奈の次は子龍先輩と『ボーリング』だったよな?
子龍先輩と一緒にボーリングってのは微妙だけど、まぁ、食後に軽く運動ってのは悪くないよな。
って、もしかしてルイルイの奴、そこらへんも計算して今回のスケジュールを組んだのか!?
イヤイヤイヤッ!!
まさかルイルイがそこまで考えてスケジュールを組むはずは無いぜ!!
最後に自分とのデートを盛り込む様な女なんだからな!!
「一矢、お待たせぇぇ!!」
「おうっ!! ってか、舞奈お前、どんだけ食うんだよ!? ハンバーガー四個にポテト二つに、今度は唐揚げと焼きそばまで……」
「一矢の分も買って来たに決まってるじゃない!!」
「それでも多過ぎるだろ!? 俺はもう焼きそばくらいしか食えねぇぞ!!」
「あっ、大丈夫。後は私が食べるから……」
ヒエ――――――ッッ!! なっ…何この子!?
「でもアレだな。これだけ食べ物を沢山買ってきたのに飲物が一つしか無いよな? 買い過ぎて持てなかったんだろ? 俺が飲物買って来るよ!!」
「待って、一矢!!」
「えっ? 何だよ、舞奈?」
「飲み物は、一つで良いのよ……」
「なっ…何でだよ? これじゃ足らないだろ?」
「このジュースをよく見てちょうだい……」
「ん?……あっ…あ――――――!!??」
スッ…ストローが二本刺さっているぞ!!
も…もしかしてコレは……
「ひ…一矢、私が何をしたいか分かったでしょ?(ポッ……)」
「わ…分かったけどさ、本当にコレを二人で飲むのか? 舞奈は良いのか? 恥ずかしくないのか……?」
「恥ずかしいに決まってるじゃない!! で…でも、せっかくのデートだし……。私も一度はこんな事やってみたいなぁ〜って思ってたし……。ひ…一矢とだったら良いかなって……」
何だか、舞奈がいつもよりも可愛く見えてきたぞ。
やっぱ学園内とは雰囲気が違うからだろうな……
って、俺がキュンキュンしてる場合じゃないぞ!!
俺はこの『ミッション』をクリアしないといけないんだ。
「よし、それじゃあ、舞奈飲もうか?」
「うっ…うん……」
うわぁぁああ、顔が近い!!
舞奈の唇が、もうそこまで来てるじゃないか!?
ズッ…ズズズズッ…ズズズズズズッッ…………
……ん? アレ? ストローを吸っても全然ジュースが俺の口の中に入ってこないぞ!?
「プハ――――――ッッ!!」
「まっ…舞奈、お前一気に飲むんじゃねぇよ!! 俺、全然飲めてねぇぞ!!」
「ゴ…ゴメン、一矢……。緊張の余り、耐えられなくて一気に飲んでしまったわ……」
舞奈、お前はどんな『吸引力』の持ち主だ!?
「と…とりあえず、もう一つジュースを買ってくるよ……」
【十三時五十分】
「 「 グハ――――――――――――――――――ッッ!!」 」
俺達は五本目のジュースでようやく『ミッション』クリアとなった。
「もう私、お腹がチャポンチャポンで動けないわ……」
そりゃそうだろ。一人で四本分をほとんど飲んでしまったんだからな!!
「舞奈、大丈夫か? 俺は今から子龍先輩が待っている『ボーリング場』に行かないとだめなんだけど……。ちゃんと帰れるか? 子龍先輩との『デート(?)』は延期にしようか?」
「何を言ってるのよ、一矢。私は大丈夫よ……。ちゃんと子龍先輩の相手もしてあげてちょうだい……。子龍先輩も今日をずっと楽しみにしてたんだから……」
「わ…分かったよ舞奈。今日はありがとな。それじゃ俺は行くから、舞奈も気を付けて帰るんだぞ……」
「あぁぁ行っちゃった……。今日は覚悟を決めて一矢に言おうと思ってたのに……。結局言えなかったなぁぁ……。今度、いつデートできるかなぁぁ……」
【十四時 ボーリング場前】
ん? 何だ、あの女性ばかりの人だかりは?
あ―――っ!! 子龍先輩が女性達に囲まれてるじゃねぇか!!??
お読みいただきありがとうございました。
一矢に対していつもツンデレ気味の舞奈も今日だけは結構頑張りましたよね?
でも何か一矢に言いたい事を言えなかったようですが......
さぁ、次は子龍先輩とデート?です。
そして、子龍先輩と一緒で平和に終わるとは思えないですね(笑)
という事で次回もお楽しみに(^_-)-☆




