第116話 大逆転勝利だぞ!
さぁ、いよいよ聖香の選挙演説が始まります。
仙道の演説が余りにもインパクトが強かったが、果たして聖香は対抗できるのか!?
ザワザワザワザワ ザワザワザワザワ ザワザワザワザワ
マ…マズイな……。会場がざわついてるぞ……。
まさか、仙道先輩があんな『爆弾』を落とすなんて……
余りにも卑怯過ぎるぜ。
「負けたら『イニシアティ部解散』を宣言して尚且つ『委員会制度復活』という、皆が絶対に嫌がる事を言って不安を煽るなんて……。あの仙道って人、やっぱ最低ね!!」
舞奈が怒る気持ちもよく分かるけど、やはりあの人は色んな意味でウマい人だ。
『四大茶部解散の公約』だけでも『目玉』なのに、更に上の生徒全員が関わってしまう『目玉』を最後の最後に投げ付けたんだからな……
これで聖香は更に『不利』になってしまった訳だが……
でもアレだな。聖香の表情は意外と穏やかなんだよなぁ……
逆に追い込まれて開き直れたのかな……?
ザワザワザワザワ ザワザワザワザワ
「えぇぇ~、それでは続きまして一年の『和久塁 聖香』さんの『選挙演説』を聞かせていただきます。皆さん、そろそろ私語は止めてしっかり聞いてあげてくださいね~」
「いよいよだわ!! 聖香、頑張って!!」
「み…皆さん、おはようございます。私は『生徒会長立候補者』の一人、一年の『和久塁 聖香』と申します。演説なんて初めての事で凄く緊張しています。お聞き苦しいところもあると思いますが、最後まで宜しくお願い致します……」
おぉぉ。聖香の奴、出だしはなかなか良いぞ。
この調子で頑張ってくれよぉぉ……
「まず最初に私が『生徒会長』に立候補させて頂いた理由からお話させて頂きます」
まさか聖香、俺に勧められたからって事を言うんじゃないだろうな!?
「私は『ある人』に立候補を勧められました。その時は、まさか私なんかがと思いましたが、『その人』が私を推す理由を聞いていると、自分では分からなかった私の『良い所』『生徒会長に向いている所』を教えて頂きました。その言葉で私は今まで感じた事の無い『自信』と『やる気』……そして引き続き楽しい学園生活がこれからも維持出来る様に頑張りたいという思いが沸いて来ました……」
ほぉぉ、とりあえず俺の事は言わなかったから良かったぜ……
もし俺の名前なんて言ったら『反ネガティ部派』からブーイングの嵐になりかねないからなっ!!
「私にその思いを沸かさせてくれたのは『ネガティ部 部員』の人です!!」
ぶぅぅぅっっ!! いっ…言っちゃったよ!!
「 「 「 チツ、何だよ!! やっぱり『ネガティ部』や『四大茶部』の回し者かよ!!」 」 」
「まず、『ネガティ部』についてお話させて頂きます。皆さんご存じの通り、『ネガティ部』の人達は『コミュニケーション能力』に欠けた人達の集まりです。しかしその反面、私達よりもはるかに『相手を気遣い』『相手の為に頑張り』そして『相手の喜びを一緒に喜べる』人達の集まりです。私はこの数ヶ月、彼等と一緒に行動をする事が多く、近くで見ていてそう感じました」
「子龍だけはどれも当てはまらないけどね……」
「テッ…テルマ、何て事を言うんだよ!? 僕は今、聖香ちゃんはまさに僕の事を言ってくれたと思って『感動の涙』を流そうとしていたところなのにさ……」
「他の『四大茶部』の方達も基本は同じだと思います。だってそうでしょう? 特に運動部の皆さん!! 今までどれだけの『運動部』が『アクティ部』の人達に助けられてきたのですか? 『クリエイティ部』の皆さんのお陰でこの学園の『知名度』が上がり、私達はこの学園に入学したんじゃないですか? 『ポジティ部』の人達は『地域のボランティア活動』を率先されています。恐らく昔の『ポジティ部』にお世話になった方々が大人になられて、現在その子供さんをこの学園に入学させたっていう家庭も多い事でしょう……」
「 「 「 言われてみれば、そうだよなぁ……。俺の親もこの学園をメチャクチャ薦めてきたもんなぁ……」
何だか、エンジンがかかって来たぞ、聖香の奴……
「皆さん!! この流れは二十数年前からずっと続いているんですよ!! そしてその流れを創ったのが、『元ポジティ部 部長』兼『初代ネガティ部 副部長』そして『四大茶部発足者』の『丘司那 一志』さんなのです!!」
ここで親父の名前を出すのかぁぁ……
「私はこの二週間、『図書室』に通い『名染伊太学園』の歴史を調べました。沢山ある資料を全て読ませて頂きましたが、その全ての資料の『貸出者名簿』には『現生徒会長』の海藤さんの名前もありました。海藤さんはご存じだったんです。二十数年前に、この学園には『最大の危機』があった事を…………」
ザワザワザワザワ ザワザワザワザワ ザワザワザワザワ
「 「 「 最大の危機って何だろう……??」 」 」
せ…聖香、む…昔、この学園に一体何があったというんだ!?
「これは『学園の汚点』となるお話ですので、本当はこの場で言いたくはないのですが……。皆さんの『四大茶部』に対する誤解を解きたいので、あえて言わせて頂きます。当時の『生徒会』もほとんどが『イニシアティ部』から選出された方達でした。そしてその当時の『生徒会長』が中心となり『各部』の『部費』を不正に吸い上げ、その吸い上げた『部費』を彼等は『私利私欲』の為に使っていたそうです。その事を学園内に『告発』したのが、唯一『イニシアティ部』でなかった『会計監査』の方でした。勿論、学園内各部は大揉めです……」
「バッ…バカな事をいうな!! ぼっ…僕のパパがそんな事をするはずが無いじゃないか!!」
えっ!? 仙道先輩の『知り合いの元生徒会長』って親父さんの事だったのか!?
「残念ながら事実です。その事は『理事長』も『学園長』もご存じです。そして当時、この『汚点』を帳消しにしてくれたのが、『丘司那 一志』さんを中心とした『四つの部』……すなわち、現在の『四大茶部』です!! 彼等はこの『汚点』がマスコミに知られる前に、学園の名前に傷がつかない様に、『各部』をあげて『アルバイト』に励み、数ヶ月で『生徒会』が使い込んだ『部費』のほとんどを『各部』に返金されたそうです……」
「お…親父のやつ、相変わらず凄いなぁ……」
「当たり前だ、ダーリン……。『ヒトヤン様』は偉大なお方なんだよ……」
「いっ…居たのかよ、ルイルイ!?」
「何度も言わせるな、ダーリン。私は常にダーリンの傍にいるって言っているだろう……」
「だからその『常に』はやめろ!!」
「怒り心頭だった『各部』の人達も丘司那さん達の行動に逆に感動してしまい、お金を半分返金したそうです。『残りの半分は俺達もバイトをして補うから』と言って……」
「おとうさ…いや、理事長……。僕は当時の事を思い出して涙が出てきましたよ……」
「そうだな、太一郎……。あの頃の『ヒトヤン君達』は凄かったなぁ……。本当に凄かった……」
「僕と『当時の生徒会長だった仙道』と一緒に、ヒトヤンに無理やり連れられて時給が高いからって事で『工事現場』で働かせられたんですよ……。ホント、辛かったなぁ……、きつかったなぁ……。思い出しただけでも涙が出てきます……」
「そっ…そっちの涙か!?」
「その後、『やはり生徒会は詳しい人間がやるべきだ』と、丘司那さん達の寛大な計らいで『イニシアティ部』及び『生徒会』はそのまま存続する事になりました。しかし他の部がそれを受け入れる為には丘司那さん達『四つの部』が『生徒会の監視役』として常に『生徒会』の近い所で活動して欲しいという申し入れが有り、ここから『四大茶部』がスタートした訳です。丘司那さんが『無理矢理創った会』では無いという事です。丘司那さんがやった事と言えば、この『会』の名付け親って事くらいらしいですよ......」
「エリト君……。あの子、本当によく調べてますわね……?」
「フフフ……。ああ、そうだな……。もしかしたら、『告発』をした『元会計監査』がキリタンの母親だって事も知っているかもしれないな……」
「そういう事で『四大茶部』は『生徒会の監視役』として、長年存在してきた訳です。ただ、この二年間は海藤会長が余りにも凄すぎて『四大茶部』が監視されてるみたいになってましたけどね……」
「 「 「 ウワッ、ハッハハッハ!! ハッハッハッハ!!」 」 」
せ…聖香の奴、遂に会場から『笑い』まで取りやがったぞ!!
た…大した奴だぜ……
「キャッハッハッハッハ!! あの子は『一流』だわっ!! キャッハッハッハッハ!! っていうか、お前等!! そろそろアタシを掴んでいる手を離しやがれっ!!」
「そ…そんなバカな事があるもんか……。これは何かの間違いだ……」
アチャー……。仙道先輩、かなり落ち込んでいるぞ……
大丈夫なんだろうか……?
「あと、先程仙道先輩が仰られていました『負けたらイニシアティ部解散』の件ですが、皆さんご安心ください!! もし『イニシアティ部』が解散しても、今までの『活動』は全て『エグゼクティ部』が引き受けてくれます!! なので『委員会制度』の復活はありません!!」
「 「 「 あっ…あの子凄いぞ!! うぉぉぉぉおおおおおおお!!!! 良いぞ、聖香ちゃ―――ん!!!!」 」 」
「はっ…花持!? お…お前、あの子とそんな約束をしたのかよっ!?」
「なっ…何よ、贅太!? 何か文句でも有るの!?」
「バッ…バカな事を言うな!! 最高だぜ、部長!!」
「フンッ、知ってるわ……」
「私はまだ一年生なので何も出来ません。でもそんな私は偉大な『四大茶部』の人達と現在、とても仲良くさせて頂いております。それが私の『強味』であり、『宝』です。そしてこんな私を『生徒会長』に推してくれたのが何を隠そう、『名染伊太学園の救世主 丘司那 一志さん』の息子さんである『ネガティ部 次期副部長』の『布津野 一矢君』です!! その『救世主の息子』の彼が私に言いました。『俺がずっとお前の傍で応援するから安心しろ』と……。私には『救世主』が付いています!! だから私は何も恐れる事は無いのです!! 私は皆さんと一緒に、楽しく過ごせる学園を創りたいんです!! どうかこんな私に清き一票を宜しくお願い致します!!!!」
せっ…聖香!! おっ…俺、そんな臭いセリフをお前に言ったか!?
っていうか、舞奈と紅伊奈が俺を思いっきり睨んでいるんですけど…………
「 「 「うぉぉぉおおおおおおお!!!! 聖香様に絶対、投票するぞ――――――っ!!!!」 」 」
なっ…何はともあれ……聖香……お前は凄い奴だぜ......
これは間違いなく大逆転勝利だな――――――っ!!!!
っていうか、コレ俺が考えた『ネガティ部』の作戦は必要無かったんじゃないのか!!??
お読みいただきありがとうございました。
聖香ちゃん、頑張ってくれました!
彼女の演説のお陰で色々な謎も解明できましたね(笑)
もっと詳しく知りたい方はスピンオフ小説も『ポジティ部!(略)』も並行して読んでくださればアナタはきっと『ネガティ部マスター』になれるでしょう!!
えっ? 別になりたくないですか?
次回は選挙後のそれぞれのお話になります。
そして、新章は『再び四大茶部総会編(仮)』と進みますよ~(≧▽≦)
次回もどうぞお楽しみに~(*^▽^*)
あっ!! そういえば評価ポイントの☆を推し忘れている方は是非、この機会に思い出して頂き(笑)ポチツとお願い致しますm(__)m




