七 夢、雨の日のつづき
男の子の夢のなかで、女の子はとてもよくしゃべっていた。
ふたりはやっぱり、海の家にいたけど、夜と雨に包まれて、海の底にある、知らない国にいるみたいだった。
ひんやりした空気と、あったかい空気が、まじりあっている。
ふたりがしゃべっているのも、知らない国の言葉で、よくわかりもしないまま、なにか大事なことをわかりあっているみたいだった。
男の子はそれがとてもうれしくて、楽しかった。
雨の音は、どこか遠くで鳴っているように聴こえる。
海は、夜の暗さにとけこんで、よく見えない。
まっ黒な砂浜のまん中で、にぶく、だけど確かに、オレンジや黄色、うすい緑色やらに光るものがあった。
あれは、あなたが見ていたのは、夏の骨だよ……
夏の、骨……?
海の向こうに、夏が生まれる場所があるの。
夏は死んで、また生まれ変わってここへやってくる……
夏が生まれる場所。
きみは、そこへ……?
泳ごう。
今から、行くの?
ううん。ただ、泳ぐの。
泳ぎたいの……
まっ黒な砂浜のまん中では、にぶく、だけど確かに、オレンジや黄や、うすい緑色に光る骨たち。
雨の海辺に、楽しそうな男の子と女の子の声がひびいていた。




