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第4話 魔術師学校入学

─4日経過─

 

 ついに今日から僕らは魔術師学校に入学することとなる。

 支度をして門に出る。

 門へと続く道の側にはたくさんの花が植えられている。

 

 ここだけ見ればすごく綺麗な景色なのだが、残念なことに家の周辺は住宅に雑居ビル。

 綺麗なお花たちが残念である。

 

 まあ、立地的に端ではあるが、都市部の範囲にあるので仕方がない。

 にしてもメイティア王国のケイネスの景観は日本の影響を受けすぎだ。

 あ、前にも言ったか?

 

 でも、ここ東京ですとか言われても納得してしまうだろう。

 まあ、個人的にはおかげでこちらの世界にも親しみやすいのだが。


 

 門の前には1台の車が用意されていた。

 あれだ、皇族の方とかが乗るような車。

 とりあえず僕、兄、美奈の3人は後ろに乗り込む。

 運転手は召し使い、助手席にルートアが座る。

 ちなみに今日は不思議とルートアの威圧感が感じられなかった。

 あの威圧的というのはラバスといるときだけ発するのか?

 

 ふと疑問に思うのだが、魔術世界だというのに、空飛ぶほうきとか絨毯とかないのだろうか。

 実を言うと、僕らはこの世界に来てからまだ魔法らしい魔法を見ていない。

 

 見られるものなら是非見てみたいと思い、疑問をぶつけてみるが、そのようなものはないらしい。

 だから魔術世界でこれだけ車が発展するんだな。


 色々と雑談しながら車に揺られること30分、ケイネスの郊外にやってくる。

 車から降りると、そこには巨大な建物が建っていた。

 そう、これが魔術師育成の専門学校、

 

 『ケイネス魔術師学校』


 である。

 

 門を潜ると、左手には赤色の煉瓦でできた7階建ての建物。

 恐らく、教室があるのだろうか。

 左側は運動場で、今ちょうど10数名の生徒らしき人がいる。

 でも、魔術師学校だというのに運動場は要るのだろうか、いや、要るからあるんだろうな。


 魔術師育成の専門学校ではあるが、まるで大学のようだ。

 とりあえず僕らは職員室へ向かう。


 職員室に入ると教師全員が立ちあがり、僕らに深く頭を下げた。

 その後別室に通され、校長のジェレッド・ローディナが来た。

 

 「これはこれはルートア様。ようこそおいでくださいました。」

 「今日は先日話した3人を連れてきた。」

 「この子達ですか。ずいぶんと立派な顔立ちしていらっしゃる。」


 僕は立派な顔を作るどころか、現在ちょっと緊張している。


 ルートアがジェレッドに対して紹介を始めた。

 

「左から、大江陸人、大江修司、大江美奈、あの大江ロイナの子供です。」

「あのロイナさんの!彼女は本当に凄腕の魔術師でした。

 結婚と同時に引退してしまいましたがねぇ...君たちは何か母から聞いてたりしますか?」


 いきなりこっちに話題を振られても困るなぁ。

 しかし、本当に母は凄かったんだな。

 でも、なんでそういうことを母は教えてくれなかったんだろうか。


「いえ、一切聞いておりません。」

「そうでしたか、まあ彼女はあまり自慢をしたがらない方でしたからね。

 例え子供達といえど自慢しないのは彼女らしいです。」

 

 何でそんなに母のことを知っているのかと思っていたら、母はこの魔術師学校の卒業生らしい。


「では、本題に入りましょう。本来うちの学校は常時募集をかけてはいません。

 が、今回アルモ家のお願いということにより、特別入学の許可が下りました。

 さらに、君たちには通常課程とは異なる特別課程を受けていただきます。

 ある程度実力がつきましたら、通常課程の枠に編入します。

 また、君たちに専属の教師をつけさせていただきます。」

 

 パンパン──

 

 ジェレッドが手を叩く。


 「失礼します」

 

 1人の男性が入ってくる。

 見た目は40代ほど。

 種族は人間で、逞しい体つきしている。


 「本日から3人の担当をさせていただきます、エドワードです。よろしくお願いします。」


 そう言って、彼はジェレッドの横に座った。


「彼もまた優秀な魔術師です。もちろん、教師としても優秀です。

 彼に任せておけば間違いないでしょう。」

 

 校長は自信ありげに語る。

 すると、エドワードが語りだす。


「君たちがあのロイナさんの子供達だね。」

「はい」

「実は僕も彼女と共に冒険をしたことがあるけど、本当に素晴らしい実力の持ち主だったよ。」


 次から次へと出てくる母の新情報。

 本当に僕らは母のことを何も知らない。

 一体何者なんだろうか。


 校長が再び喋りだす。


 「それでは、これからこの学校に通うにあたって、通学か寮どちらにいたしますか?」



 寮か、そういえばあったな。


 「寮?そんなものあるのか?」


 ルートアが質問する。


「はい、つい2年前に建てられたばかりの寮です。

 現在生徒の半数近くはこちらの寮で生活をしています。」

「そうか、まあ決めるのは君たちだ。好きな方を選んでくれて構わないよ。」


 個人的にはアルモ家から通う気で満々だった。

 が、正直悩むところ。 

 もし寮に入ればエルダとはなかなか会えなくなる。

 魔語の勉強だってまだ途中だ。

 

 しかし、寮にすれば学校が近い!走って2~3分程度だろう。

 ギリギリまでお布団でぬくぬくできるのも正直捨てがたい。

 

「兄ちゃんはどうするん?」

「俺は寮だな。どんなやつがダチになるか楽しみだなぁ。」


 兄はニタッと笑った。

 悪魔の笑いだ。

 恐ろしや。


「美奈はどうする?」

「私は別に嫌じゃないけど、エルダ君に会えないのもな...」

 

 これは、エルダに会えるとか会えないとかじゃなくて、寮暮らしにするとエルダのマンガが読めなくなるからだろう。

 可哀想なエルダ。


 「せっかくなんだから寮暮らしをしてみてはどうだ?」


 ルートアが提案する。


「冒険者はチームプレー。人脈が大事だ。

 特別生なんだから、寮くらいでしか友達を作れないだろう?もし合わなかったらその時また考えればいいさ。」

 「確かにそうですね。」


 僕はルートアの意見に乗っかり、寮暮らしを決めた。

 その後入学手続き等を済ませ、晴れて魔術師学校の生徒となった。





─ケイネス魔術師学校─


 世界3大魔術師育成専門学校の1つ。

 4年制の学校で、1年次で全魔術をまんべんなく習得、2年次より専攻魔術を選択する。

 途中で専攻魔術の変更は可能だが、大学とは違い留年制度がないため、あまり変えすぎると中途半端で卒業を迎えてしまう。

 

 僕らはまず1年半かけて1年次の課程プラスαを行う。

 その後第3学年に編入し、更なる実力アップを目指す。

 とりあえず最低3年半は動けないことになる。

 でも、3年半で実力を身に付けなければならない。

 そう思うと大変だ。


 

 僕らは赤煉瓦が特徴的な第1教室棟へとやって来た。

 その中にある小さな教室。せいぜい12、3人程度が入る程の大きさの教室。

 そこに僕ら3人とエドワードが入る。


「それでは早速授業を始めていこう。

 その前に日課表を配る。君たちはアルモ家からの依頼もあって、少しでも高いレベルでこの学校を卒業してもらいたい。

 だから、この1年半はビシビシ鍛えていくつもりだからよろしくね。」


 日課表が配られたので目を通すが、確かにこれは大変だ。

 月曜日~土曜日、朝9:00~18:00までみっちり授業が入っている。

 その中に、ちらほら学問の授業が入っている。

 

「先生、学問の授業とは何でしょうか?」

「素晴らしい質問だ」

 

 素晴らしい質問?って何だ?みんな決め台詞みたいに言うけどさ、別に普通の質問じゃん...

 ということは置いておいて...


「冒険者は常に死と隣り合わせです。

 この世界は君達の技術世界と違い、魔物が住んでいるし、人が未だに踏みいっていない場所もかなりあります。

 そんな世界を生き抜くためには、力だけでは不十分。

 時には知識に頼らなければならないときもあります。

 だから、そういった必要な知識等を詰め込む時間になります。」


 なるほど..........いや、これ以上言葉思い浮かばないっす。

 あと、こういう授業は兄は寝ます。

 ってとこくらいかな。


 「まあ、今日は早速学問から始めていこう。」

 「先生、ところで魔術って一体何すか?」

  

 何と、今までつまらなさそうに話を聞いていた兄が質問しているではないか!

 絶対耳の中筒抜けだと思ってたら違った。

 兄は寝ますとか言ってごめんよ。

 と思いながら美奈の方に顔を向ける。

 何ということでしょう!この短時間でウトウトに入ったー!

 

 「おい、美奈起きろ」


 小声で起こす。


「はは、まあ眠くなるのは仕方がない。学問だからね。でも1つ覚えておくといい。

 その1回の居眠りが命を落とすことに繋がるかもしれないってね。」


 エドワードは笑顔でそういった。

 一切表情を変えずに...

 笑顔怖い...

 美奈もその笑顔を見たのだろう。

 すぐに背筋を伸ばした。


「おっと、まだ陸人君の質問に答えてなかったね。あ、歴史とかはいいよね?別に必要のない知識だから。」

 

 兄は激しく頷いた。


─魔術とは─


 この世界には大きく分けて2つの魔術が存在する。

 1つは攻撃魔術、もう1つは守護魔術。

 さらに攻撃魔術は、


 火、水、氷、雷、風、土


 の6種類、守備魔術は、


 回復、守備


 の2種類に分けられる。

 もう1つ別で『無属性魔法』というのが存在する。

 これについては、実践の時に詳しく教えてくれるそうだが、色々な役割を果たす高度なものらしい。

 

 これら8種の魔法は技の範囲や威力により、攻撃魔術は、基礎級から神級まで、守備魔術は、基本級から神級までに分けられる。


 そして、これらの魔術を扱うのがご存知魔術師である。

 魔術師にも当然階級がある。

 それぞれ、攻撃魔術の扱いに対する攻撃階級、守備魔術の扱いに対する守備階級、そしてそれらを総計した総合階級の3つである。


 8種魔法にはそれぞれ技の階級により、それぞれポイントが定められている。

 攻撃階級は、攻撃魔術の魔法6種のポイントの総計、守備階級は、守備魔術の魔法2種のポイントの総計、総合階級は、攻撃と守備の階級ポイントの総計で決められる。

 つまり、保有ポイントが高ければ高いほど凄腕の魔術師ということになる。



 大まかにまとめると、こういうことを学んだ。

 途中、エドワードの雑談とかが結構入ったので、ものすごく長い学問の時間となった。


─午後─

 昼食を終え、いよいよ実践練習となる。

 大江兄弟一行は、魔術師学校の広い土地の半分近くを占める実践練習場へと向かう。

 

 実践練習場の建物はでかい。とにかくでかい。

 それがいくつもある。

 流石、世界3大魔術師育成学校である。


 僕らはそんな巨大建物の一角で、ついに魔術師デビューを果たす。


 「これから、魔術師の土台の中の土台である攻撃魔術の基礎級を行う。」

 「はい!」

 

 3人とも気合い十分だ。


 「早速始めたいところだが、陸人君、魔術を扱うにあたって大切なことはなんだと思う?」

 「ん?...スカートめくり」


 その瞬間、美奈が兄に一発お見舞いした。

 

 「...ゴホッ、では美奈さんはどう思います?」

 「私?...恩を売りまくって、その恩を後で徴収。」


 今度は僕が一発お見舞いした。


 「では、修司君、どう思います?」


 この時、兄と美奈はこちらを見続けている。

 まるでボケろと言わんばかりの眼差しで。

 

 「そうですね、やっぱり技術とかそれを扱うのに見会うだけの体格とか?」

 「なるほど」


 すると、エドワードが明るくなり、兄と美奈はお尻をつねってきた。

 (え?そこまでしてボケなきゃいけないとこだったの?)

 なんて思うが、ボケなくて正解だったと思う。

 ここでボケたら、またエドワードが恐怖の笑顔をこちらに向けてくるかもしれないしな。


 エドワードは話を続ける。

 

「魔術師が魔術を扱うに当たって大切なのが、技術、集中力、体力です。

 当然技術がなければ、高度な技を使うことはできません。

 また、魔術はとても繊細な扱いを必要とします。

 自分が狙った場所にしっかりと打ち込む、そのためには集中力が欠かせません。

 そして体力は、実戦時に非常に大切な要素です。体力が勝利を分けることもあります。

 特に長期戦では。そして体力にはもう1つ...」


 するとエドワードは手を差し出すようにして僕らに向けた。

 そして次の瞬間、彼の手の上に小さな火の玉が出現した。


「魔術と言うのは、エネルギーを変換させて現象を発生させます。

 今私が手の上に火を出現させることが出来ているのは、魔力と呼ばれるエネルギーを使用しているからです。

 そして、その魔力を使用するのに体力が必要です。  

 つまり、体力がある人ほど、より多く、より高度な術を扱うことができるのです。」

 「えっ、じゃあ俺のこの体だけで魔術を使うことが出来るのか?」


 兄が珍しく興奮している。

 美奈は冷静を貫く。


 「ええ、ですが今のあなたたちには無理です。これにも技術を要します。」

 「じゃあ俺たちはどう魔術を扱えってんだ?」

 「そこで、あなたたちにこれを授けましょう。」


 エドワードはあるものを取り出した。


「杖です。魔術師お馴染みの杖。

 これを使えば大丈夫です。もちろん技術は要りますが。

 ちなみに、杖には魔力が蓄えられていますが、それはスマホのバッテリーのように、使えばなくなります。ですが...」

 「じゃあそれは使い捨てってことになるんですか?」


 あ、僕の質問で言葉を遮っちゃった。


「...ですが、これはやはりスマホのバッテリーのように、暫くすれば魔力は回復します。

 しかも充電不要でエコ。ですので、魔術師の多くは杖を重宝しています。

 しかし、冒険は常に死と隣り合わせ。杖が使用不可の時に魔術を使わなければいけないときも出てくるでしょう。」

 「つまり、杖なしでも魔術を扱えるようにならないといけないということですか。」

「勿論です。大丈夫、これは技術世界の人間には出来ないことですが、君たちの体には魔術世界の血が流れていますからね。

 扱えるようになります。あと、からだ作りをすれば。」

 「頑張ります!」


 と言ったのは僕ではなく、美奈だった。

 ずっと黙ってたのに突然どうしたんだと思ったら、彼女の目はキラキラしていた。

 これはマンガの影響をもろ受けてますね。

 彼女は完全に主人公気分でいるのだろう。


 ちなみに、ルートアが言っていた、『素質』というものが少し分かった気がした。


 「熱意がある返事だ。期待してますよ!」


 そう言って、エドワードは僕らに杖を授けた。

 大江兄弟一行は杖を手に入れた。

作者の呟き


最近ローソンのしみチョコビスにハマってます

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