勘違い告白詐欺
放課後、女の子に呼び出された。
「ど、ど、どうしたの?」
季節は春、場所は校舎裏。
今まさにこの現場にいる人間は言わずもがな、この勢いに意見するはずもなく、ただその場に立ち尽くす。
桃色の花びらが舞うのは日向だけではなく、固いコンクリートで日光が遮られ、陰るこの場所にも同じように飛び交う。
「………あ、あのねっ!」
その透き通る声に威圧されながら、少し引き下がるが、しかし包み込まれるのもまた事実。
鼓動が鳴るのはこの世の理だと知るのもそう時間はかからなかった。
「ん、ん?!!??」
もっといい返しがあるのだろうと、言いながら思っていたが、それどころではない。
動揺せずして何をする。と、心のなかで相槌を打てば、自然と自分を許すこともできた。
「えっと、その、なんていうか」
彼女は何を言うのか、そんなことはわかっている。
だがそれをこの状況で口走り彼女を傷つけられる程、自分の肝が据わってないことを誰よりも理解していた。
「私の………」
瞬間。風が吹き荒れ、その透き通った短髪の後ろ髪が綺麗になびく。
それだけでなくその制服も花びらも手入れがされていなかったその地面の草さえも、この世界にいる全てが目の前にいる人間を一層引き立たせている。
暗がりから漏れた射光が彼女の顔を照らしているのか、輝いているように見えたのは錯覚なんていう科学的なことで証明されていいものではなかった。
周囲のものが動いているのを確認する暇もなく、自分の目は彼女を見続けていた。
その吸い込まれるような瞳には中毒性があり一種の麻薬のような感覚であった。
だがしかし、酔狂に捕らえていることはただの一度もなかった。
真剣に、故に真剣に、更に真剣に飽きず彼女を見続けられたのもその眼の優しさが原因であろう。
喉が渇き唾を飲む。
緊張を越え、耐えられない感覚を体が襲う。
彼女の口元が揺らぐ。
身を構え、衝撃に備える。
その衝撃に耐え凌ぐ事が自分ならできるであろうか。
その答えの模範解答を自分は知っているのであろうか。
気付くのは遅いが彼女に対する思いを自分はまだ知らない。
知らないが故に、その言葉を聞こう。
「保証人になってほしいの!」
……………………。
はい?
この俺の長く痛々しいエピローグなんだったんだよ。