よう、後輩
「お前が、殺人鬼”断頭の死神”だというのか?」
「ああ、その通りだ。僕がその”死神”で間違いない」
瞬間、ペリドットとホタルの二人が臨戦態勢に入る。拳銃を構え、石英に向ける。その頬には一筋の冷や汗が流れ落ちている。場は一瞬で緊張状態に入る。
ルビと黒曜、スイショウは慌てて石英を庇うように前に立った。その光景に、警官二人は動揺したように目を見開いて三人を見る。しかし、ルビ達は石英を庇ったまま動こうとしない。
アリアはおろおろと、どうしたら良いのか解らないようだ。
「君達、そこを退いてくれないか?その男が何者か理解しているのか?」
「理解しています。この人が、石英が殺人鬼だった事は・・・。本人から聞きました」
ペリドットの言葉に、ルビが毅然と答える。ペリドットは怪訝そうに眉をしかめる。彼女の行動の意味が理解出来ないのだろう。その瞳には僅かに動揺の色が浮かんでいる。
「なら、どうして?」
「この人を愛しているから」
「っ!!?」
動揺。ペリドットの目が大きく見開かれる。その目は大きな動揺が浮かんでいる。
しかし、それでも納得出来ない。納得出来る筈が無い。
「っ、ふざけるな!!!この男の為に、一体何人の人達が犠牲になったと思っているんだ!!!」
ホタルが声を荒げて恫喝する。しかし、それでもルビは引かない。真っ直ぐ彼を見据え、言った。
「それでも、私は石英を愛しているんです。それに———」
ルビは言った。
「きっと、石英は償っていける筈です。何より、石英自身が償っていく気があるのですから」
「っ、しかし。それでも・・・。そんな言葉で」
まあ、納得出来ないだろう。そう判断した石英はルビの肩に手を置き、前に出た。
ルビが、黒曜とスイショウがぎょっとした顔で石英を見た。
「貴方達の言い分は理解出来る。僕の犯した罪はどうあっても償えるものでは無いのだろう。でも」
「・・・・・・・・・・・・っ」
ペリドットとホタルの二人は黙って石英を睨み付ける。しかし、石英は動じずに言った。
「こうして、それでも僕の傍に寄り添ってくれる人が居る。僕の事を信じてくれる人が居る。だからどうか僕に償わせて欲しい。それだけが、僕に出来る唯一の事だから」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ちっ」
苦渋の表情を浮かべていた。
長い沈黙の後、ペリドットは舌打ちと共にホタルを連れて立ち去ろうとした。その直後。
「ああ、それと一つ」
石英はわざと、大き目な声で言った。
「よう、後輩。どうした?そんなに殺気だって?」
瞬間、物陰から血のように赤い髪と瞳の青年が出て来た。その瞳は、非常に濃い殺気に満ちていた。
殺人鬼二人、出会う。




