かつて、僕は死神と呼ばれていた
「・・・・・・ありがとうございます、石英。少しだけすっきりしました」
そう言って、アリアは石英の胸元からそっと離れる。その顔は本当にすっきりしたらしく、実に晴れやかな表情で笑っている。どうやら、アリアなりに割り切ったらしい。
その表情を見て、石英は優しげに微笑みながら頷いた。
「そうか、それは良かった・・・」
「あ、そうです。これから私の家に来ませんか?石英の話を聞きたいですし」
そう言って、アリアは石英とルビ、黒曜にスイショウを順に見て笑い掛けた。その笑顔に、毒気を抜かれたのかルビ達は曖昧に頷いた。石英はその無邪気な笑顔に思わず苦笑する。
・・・・・・・・・
そして石英達はアリアに連れられ、アリアの住む家に着いた。しかし・・・
「此処、は・・・・・・」
石英はその家を見て、思わず目を見開いた。それと言うのも、その家は石英がかつて幼少の頃を過ごした思い出のある家だからだ。石英は思わず目を見開いたまま絶句したのだ。
その姿にルビと黒曜、スイショウは皆きょとんっとした。三人はこの家が何なのか解らない。
対するアリアはくすくすと笑い、石英達を見ていた。しかし、直後・・・
石英達に二人の男が声を掛けてきた・・・。
「其処の君?君がアリア君で間違いないかな?」
其処には、大柄な男が二人ほど居た。一人は日系のアメリカ人と思われる容貌の男、一人は髪を青く染めた日本人の男だ。どちらもそこそこ鍛えているのか、佇まいに隙が無い。
アリアは僅かに小首を傾げ、頷いた。
「はい、私がアリアですが?」
「失礼、俺は警視庁捜査一課のペリドットという。こいつはホタルだ」
「よろしくお願いします、ホタルと申します」
アメリカ人風の男はペリドット、青髪の日本人はホタルというようだ。どうやら二人は警察らしい。
しかし、警察がアリアに何の用なのか?石英はこっそり警戒度を上げた。
「あの、警察の方が一体何の用でしょうか?」
「率直に言いますと、貴方が殺人鬼”断頭の死神”と何かしらの関わりがあると見て接触したのです」
アリアの問いにホタルが答えた。断頭の死神、その単語にルビ達が緊張したように表情を硬くする。
その緊張を、ペリドットは見逃さなかった。彼の瞳がすっと鋭くなる。
「其処の君達、何か知っているのか?出来れば教えて欲しいのだが?」
「いえ、その・・・・・・」
硬直するルビ達。石英はこっそり溜息を吐き、ルビ達の前に立った。
警察二人が怪訝そうに石英を見る。しかし、関係無いとばかりに石英は言った。
「その断頭の死神に、一体何の用ですかね?」
「何だ?君に一体何の関係がある?」
怪訝そうに眉間に皺を寄せるペリドット。石英は瞳を鋭く細め、答える。
「関係はあるさ。僕自身の事だ」
「・・・・・・何だって?」
二人の警察は、更に怪訝そうに眉をしかめた。ルビやアリア達は心配そうに石英を見た。
石英は細めた瞳で二人の警察を睨み、答えた。
「かつて、僕は死神と呼ばれていた・・・殺人鬼だ」
直後、空気が一気に凍り付いた。




