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神殺しの星辰《ほし》(旧題:不幸な少年と病の少女)  作者: ネツアッハ=ソフ
神殺しと神殺し
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貴方の事が大好きでした

 両親の墓で予想外の再会をした石英。その胸元で泣きじゃくる少女、アリア。当然石英は混乱する。


 ・・・ルビ達も混乱している。静かな筈の墓地で、アリアの泣きじゃくる声だけが響き渡る。


 「え、えっと?アリア・・・だよな?」


 「はい・・・。ずっと会いたかったです・・・石英」


 石英の顔を見て、微笑むアリア。その表情は心底から(うれ)しそうだ。若干、背後でルビが泣きそうな顔をしている気がするが。とりあえず、それを無視して石英はアリアに問う。


 「うん、それは良いから。何でアリアが此処(ここ)に?」


 「はい、それは・・・・・・」


 アリアは話し始める。石英と別れてからその後の話を———


 ・・・・・・・・・


 石英と別れてから以降、アリアの生活は一気に荒れた物になった。家に引きこもり、毎日泣きじゃくるだけの日々を送っていた。只、それだけの日々。


 生活のリズムは(くず)れ、体調も一気に崩れ去った。もう、心も身体もボロボロだった。


 何故、あの時自分は石英を拒絶したのか?何故、あの時石英を恐怖したのか?


 思えば、石英は自分の為に自らの手を血に染めたというのに。それなのに・・・


 アリアは部屋に引きこもり、そればかり考える。そんな彼女を、周囲の人はとても心配した。


 アリアは敬虔(けいけん)なシスターだった。そんな彼女を、あの外道神父は無理矢理手籠めにしようとしたのを皆は既に理解していた。そして、あの時彼女を神父から助けたのが一人の殺人鬼だった事も。


 だから、皆がアリアを心配していた。きっと、アリアはその殺人鬼の事を本気で愛していたのだろう事を理解していたから。そして、アリアのその想いはきっともう届く事は無い事を知っていたから。


 ・・・そんな毎日を何年も何年も過ごしていた。そんなある時———


 ———アリアは奇跡(きせき)を目にした。


 アリアは何時ものように部屋で泣いていた・・・。そんな時、アリアは目にした。


 黄金に輝く光を。そして、その光に宿った心を・・・。


 とても、深い深い(あい)だった。暖かな愛を、その光に感じた。


 ・・・それは、確かに石英の心の輝きだった。それは、石英が無の世界でウロボロスと戦っている時に放出した魔力光であった。あの時、石英の魔力は世界の境界を越えて全世界で観測されたのだ。


 その輝きを見たアリアは再び活力を取り戻した。あの時、アリアが石英を励ましたように今度はアリアが石英に励まされたのだ。その事に気付いたアリアはとても嬉しい気分になった。


 久し振りに家を出たアリアを見て、周囲の人は大層驚いていた。しかし、同時にとても喜んだ。


 そして、アリアは町を引っ越す事を決意した。突然の引っ越し宣言に周囲はとても驚いていたが。


 ・・・その引っ越し先は、かつて石英から聞いていた彼の故郷(こきょう)の村だった。


 ・・・・・・・・・


 一通り話を終えると、アリアは石英に言った。


 「あの、石英・・・。私から貴方に言いたかった事があるのですが・・・」


 「・・・・・・何だ?」


 アリアはもじもじと、頬を染めて石英を上目遣いに見た。その表情にルビ達は僅かに不安を感じる。


 石英は彼女の言いたい事を正しく理解していた。しかし、あえて黙って話を聞く事にした。


 アリアは少しだけ深呼吸して、何かを決意した顔をすると言った。


 「石英・・・私は、私は貴方の事が大好きでした。いえ、今でも貴方の事を愛しています」


 そう言って、返事を待つように石英の顔を真っ直ぐに見た。石英はその瞳を真っ直ぐ見返し、言う。


 「・・・そうか、ありがとう。けど、僕は君の事を其処まで好きでも無いな」


 「・・・・・・・・・・・・そう、ですか」


 それは、アリアにとって明確な失恋だった。アリアは恋に(やぶ)れたのだ。


 それは、アリア自身が理解していた事だった。アリア自身、良く解っていた事だった。


 そんなアリアに、石英は優しい笑みを浮かべてけどと言う。


 「けど、アリアのその想いは素直に嬉しいよ。あの時も、アリアが居たから僕は少しだけ救われた」


 「・・・・・・・・・・・・」


 アリアは目を見開いて、石英を見た。石英は優しい笑みを浮かべ、アリアを見ている。


 その笑みに、アリアの涙腺はいとも容易く決壊(けっかい)した。


 「すみません・・・。少しだけ、胸を借りても良いですか?」


 「ああ」


 石英はアリアを優しく抱き締め、頭を撫でた。その優しい掌の温もりに、アリアは嗚咽(おえつ)を漏らした。


 しばらく、墓場にアリアのすすり泣く声が響いた。それを、ルビ達は困惑した顔で見ていた。

最近、文章が短すぎる気がするのは気のせいでしょうか?

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