久し振りです、石英
今回も短いですが。どうぞお楽しみに・・・。
目を開くと、其処は自然豊かな農村だった。
「此処が、石英の故郷?」
「ああ、そうだよ・・・」
其処は、山奥にある田舎の村だった。周辺一帯には田園風景が広がり、家屋は木造。その光景にルビは感嘆の息を吐いていた。自然の匂いが色濃く残る村だった。
黒曜とスイショウは周囲を見回してはしゃいでいる。第一印象は中々良かった。
自然豊かで中々良い村だと思われる。しかし・・・
「おいっ、貴様何時の間に帰って来やがった!!!」
突然響く怒鳴り声。石英はうんざりとした顔で、振り返った。其処には体格の良い男が居た。その男は石英を見て酷く憎々しい表情をしている。
「何だ、またお前か?全く僕を見る度に懲りもせず」
「黙れ、化物!!!お前なんか野山でくたばっちまえ!!!」
「・・・っ、おいおっさん・・・。その言い草は無いじゃないか?」
その物言いに流石にイラっときた黒曜が目を据わらせて言った。その剣幕に、男は一瞬たじろぐ。
「な、なんだ?お前。子供が大人の言う事に口出しを———」
「黙れよ!!!」
ついに黒曜がキレた。周囲一帯に響き渡る怒号。何だ何だと、人が集まってくる。
「これ以上、父さんの悪口を言うな・・・」
「あ?お前、化物の子供か?・・・・・・ちっ、まさか化物が家族なんてな。笑わせる」
そう吐き捨てて、男はどかどかと去って行った。他の野次馬達も、皆石英を睨みながら立ち去る。
石英はツマラナイ物を見るような目で、それを見ていた。ルビ、黒曜、スイショウの三人は怒りの形相で村人達の去って行った方を見ていた。
・・・前途多難な事だ。
・・・・・・・・・
「何だか、嫌な村だね・・・」
「・・・・・・・・・・・・まあ、すまん」
先程の事があり、ルビはぷりぷりと怒りながら歩いていた。石英を化物と呼び、あまつさえ野山でくたばれとまで言ってきた男に腹を立てたのだ。そして、それは黒曜とスイショウも同じだ。
子供二人は先程からぶつぶつと文句を言っている。そんな家族に、石英は思わず苦笑した。
「お前達・・・ありがとうな」
「父さん、こんな村に居て辛くなかったの?」
「・・・・・・・・・・・・ああ、まあ辛かったけどな」
石英は苦笑を返す。確かに当時は辛かった。しかし、より厳密に言うなら辛さを感じる暇さえ石英には無かったの間違いだが。
しかし、それを言っても意味は無いだろう。そう石英は結論付ける。
「・・・・・・・・・・・・」
そんな石英をルビは悲しそうに見詰める。そっとルビは石英に寄り添った。
石英もそんなルビを抱き寄せる。
「ああ、見えて来たぞ・・・。あれが両親の墓・・・だ・・・?」
石英は言い掛けて、言葉を止める。其処には、この村に居る筈のない人が居たからだ。
その女性は、石英に気付くとぱあっと表情を輝かせた。
「お久し振りです、石英」
「ああ、うん。何で居るんだ?アリア?」
そう、シスターのアリアだった。何故、シスターのアリアがこんな場所に居るのか?
石英は思わず呟く。しかし、驚愕はそれだけでは無かった。
「石英っ!!!」
アリアは石英の胸元に飛び付いた。その光景に、ルビ、黒曜、スイショウの三人は衝撃を受ける。
しかし、それは石英とて同じだ。石英は目を白黒させる。
「えっと、アリア?」
「貴方に会いたかった。石英・・・」
そう言って、アリアはその瞳に涙を浮かべる。もはや訳の解らない石英達だった。
シスター再登場。・・・波乱の予感。




