里帰りしよう
ある日、朝食の席で石英は唐突に言った。
「・・・里帰りしよう。里帰りがしたい」
「・・・はい?」
「へ?」
「・・・・・・・・・・・・」
その言葉にルビと黒曜、スイショウは呆然とした顔をした。まあ、それも当然の反応だろう。
唐突に言われても場が混乱するだけだ。実際、全員呆然としてとても理解出来ていない。それを理解した石英は苦笑し、事情の説明をする。
「ああ、まあすまん。要は僕は両親の墓参りに行きたいんだよ・・・。お墓参りに」
「お墓参り?石英のご両親の?」
ルビの問いに、石英は微笑みを浮かべて頷く。その微笑みは遠い昔を懐かしむ物だった。
「うん、そろそろ僕は両親の墓参りに行っても良いんじゃないかっておもってね。思えば、この世界に来てから僕は両親のお墓に行っていないんだよ」
「・・・石英の両親のお墓。それ、私も行って良いかな?」
その言葉に、石英は僅かに目を見開いた。ルビは真っ直ぐに石英の瞳を見詰めている。
その瞳には、一切の迷いが無い。
「ルビ?」
「石英の両親のお墓なら、私も行っておくべきだと思うの・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
・・・石英はルビの瞳を真っ直ぐに見る。ルビのその瞳はある種の覚悟があった。その場のノリでは決して無いらしい。そう理解した。
「それなら、俺も行きたい!!!」
「・・・わ、私も」
「お前達・・・・・・」
黒曜とスイショウまで墓参りに行きたいと言い出し、石英は呆然と三人を見詰めた。
「良いのか?お前達、僕の墓参りだぞ?そんなに面白い物でもないし・・・」
「良いの、石英の両親のお墓なら私も行っておくべきだし・・・」
そのルビの言葉に、黒曜とスイショウも頷いた。どうやら本気らしい。
「・・・・・・解った。そうしよう」
石英は苦笑し、頷いた。
・・・・・・・・・
そうして、石英達はサファイヤの城に向かった。里帰りする前に、サファイヤには言っておくべきだとそう考えたからだ。
「・・・と、言う訳で僕達は僕の里帰りに行く事にしたから」
「うん、良いんじゃないかな?・・・私も本当は行きたい所だけど、仕事で忙しいから」
そう言って、サファイヤは苦笑する。それを聞いて、石英も苦笑した。
・・・まあ、仕事なら仕方が無い。特に、王としての仕事は簡単に放りだす訳にもいかないだろう。
「うん、それなら仕方ないね。それに・・・そう大勢で行ってもなあ」
「そうだね・・・。じゃあ、気を付けて」
「ああ」
石英は優しく微笑みながら頷いた。そうして、石英の里帰りが決まった。
新章開幕しました。




