私はスイショウ
黄金の林檎を食べたルビは今、健やかな寝息を立てて眠っていた。
どうやら林檎の効果はかなりの物のようで、熱もすっかり引いたらしい。もう大丈夫だろう。
パンデミックはこうして回避された。
・・・石英と黒曜、サファイヤは安堵の息を漏らした。しかし———
直後、ルビの身体が高温を発し始めた。周囲に陽炎が出来る程の高熱、かなり異常だ。
「っ、な!!?」
「これは!!!」
石英と黒曜は愕然と目を見開く。
———馬鹿な、黄金の林檎を食べて病は完治した筈。それが何故。
そう誰もが思った直後、ルビの中から這い出るようにそれは姿を現した。
「・・・・・・・・・・・・・・・」
それは、白髪に赤い瞳の少女だった。透き通るような白い肌をした、幼い少女だ。
大体、見た目は黒曜と同じくらいか。
「死神・・・か・・・」
「「っ!?」」
死神。石英の呟いた言葉に、黒曜とサファイヤは目を見開く。
「君が、死神だね?」
「・・・・・・うん」
直後、黒曜とサファイヤから殺気が溢れ出た。
当然だ。この死神が多くの人を殺し、宿主であるルビさえも殺そうとした元凶なのだから。
その反応は当然の結果だ。死神はそれを受け入れる。所詮、それが自分の運命なのだと。
・・・しかし。
「だ、そうだがルビはどうする?この死神をどうしたい?」
「・・・・・・その子は、私達の子供だよ?」
「「!!?」」
石英の言葉に、返答する声。
見ると、ルビはまだおぼろげながら目を覚ましていた。
しかし、問題は其処では無い。それも問題だが、それは今は問題じゃ無い。
思わず、サファイヤは声を荒げて反論した。
「ち、ちょっと!?もしかしてその死神を自分の子供として育てるつもり!?」
「うん、だってその子は私達の子だからね・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
今度こそサファイヤは閉口した。どうやら、ルビにとってはもうその死神は我が子らしい。
黒曜とサファイヤが黙り込む中、死神が口を開く。
「・・・本当に良いの?私は貴女を殺そうとしたのに。殺されても文句は言えないよ」
「ふふっ、だって貴女は私の心配をしているでしょう?今でも。そんな子を殺せないよ」
「それは、だから!!」
「貴女は私達の子だよ。誰がなんと言おうと、私の可愛い子」
「・・・・・・・・・・・・っ」
ついに、死神は黙り込む。その顔は悲痛だ。何だかんだで彼女にも罪の意識はあるのかも知れない。
石英は深く溜息を吐く。
「なら、その子の名前を決めよう。何時までも死神じゃあ無粋だろ?」
「あ、それ良いね。どんな名前が良いかな?」
そう言って、石英とルビは名前を考え始める。
その光景に黒曜とサファイヤは呆れた溜息を吐いた。どうやら二人も納得したらしい。
何だかんだで黒曜もサファイヤも、この二人を無条件に信じているのだ。
その顔は苦笑を浮かべている。
「・・・・・・スイショウ。お前の名前はこれからスイショウだ」
そう、石英は言う。スイショウ、その名前が死神の心に染み渡る。
「スイショウ、私はスイショウ・・・」
「ああ、君の名はスイショウだ」
そう言って、石英は笑った。その笑みは死神、スイショウの心に深く染み渡った。
この時、初めてスイショウは薄っすらとだが笑った。




