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神殺しの星辰《ほし》(旧題:不幸な少年と病の少女)  作者: ネツアッハ=ソフ
王国内乱
110/114

さあて、往くか

 けたたましい音が、王都に鳴り響いた。警鐘(けいしょう)の音だ。その音に、石英とルビは覚醒する。


          ・・・・・・・・・


 次の日の早朝、石英とルビの朝は警鐘の音から始まった。不機嫌そうに目を()ますと、扉を勢いよく叩く音が聞こえる。どうやら、かなり切羽詰まっているらしい・・・


 石英は至極不機嫌な顔で扉を開けると、其処には騎士(きし)の一人が慌てた様子で立っていた。かなり年若い容貌(かお)の騎士だ。恐らく、黒曜とそう大して歳も変わらないだろう。


「・・・何だ?」


「か、かなりの大軍が王都のすぐ前まで迫っていますっ!し、至急救援(きゅうえん)をっ‼」


「・・・・・・ああ、理解した。すぐ行く」


 そっと溜息を吐くと、石英は身支度をすぐに済ませた。ルビが心配そうな瞳で見ている。


 そんなルビに、そっと笑みを向ける。大丈夫だという意思表示だ。その笑みに、彼女は静かに微笑みを浮かべて返した。どうやら、意図は(つた)わったらしい。


「さあて、()くか」


 そう言うと、石英の姿が一瞬で消えた。空間転移の術で移動したのだ。静かにそれを見送ると、ルビは顔を両手で(おお)い泣いた・・・


 やはり、例えどんな理由があろうとも石英が戦場に立つのは彼女にとって(かな)しい事なのだろう。ルビは静かに部屋で泣いていた。彼女のその姿を知る者は一人も居ない。


          ・・・・・・・・・


 一方、王都の門前・・・金獅子(きんじし)の大門。


 王都の門前に転移した石英。その目の前には、やはりと言おうかかなりの大軍勢が居た。コガネの用意した軍勢である。その数、軽く五万近くは居るだろうか?


 その軍勢を相手に石英はぽきりと指を()らした。その姿を確認したか、敵軍の一人が何かを叫ぶ。


 石英の背後に、一人の騎士が駆け寄った。老練(ろうれん)の騎士だ。恐らく、かなりの実力者だろう。歳を感じさせない眼光鋭い姿で傍に立つ。


「すぐに軍を準備いたします故、もう少しだけ敵の進行(しんこう)を食い止めて頂きたく・・・」


「いや、その必要はもう()い」


「何と?」


 石英の言葉に、老騎士は訝しげな表情をする。しかし、事実その必要性は何処にも無い。


 その瞬間、敵軍は一気に吹き飛んだ。比喩(ひゆ)では無い。五万にも及ぶだろう敵の大軍勢が、一瞬で盛大に吹き飛んだのである。その姿はまるで、突風の前の(ちり)のようだ。


 敵の軍勢は、恐らく一人一人が訓練を積まれた兵士なのだろう。それが、容易く吹き飛んだ。


 その姿に、老騎士は呆然と目を見開く・・・


 かつて、魔王サファイヤがラピスの軍勢を相手にやった事と同じだ。要は、過程を省略して勝利の結果を出したのである。因果(いんが)のショートカットだ。


「・・・・・・な、あっ」


「残るは、敵将(てきしょう)只一人だな・・・」


 その一言に老騎士も気付く。まだ、敵将が残っている事を・・・


 目の前に、石英を忌々(いまいま)しげに見る一人の騎士の姿が居た。敵将のコガネだ。

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